09同盟と装備
そうして俺とささらは河田めぐみから逃げ出した、彼女はダンジョンの出口付近でファンに、己の言う自称・日本最強のファンに捕まっていた。
「ちょっと待って――…………」
「そう言われて」
「待つ馬鹿っていないの」
そうして何事もなかったかのように俺たちは帰った、ささらにも偶には自分の部屋に帰ってこいと、今井家へ帰るように促した。
「偶には母親の顔見てこいよ」
「私が帰ってもいない可能性高いもん」
「俺には見る母親の顔も無いんだぞ」
「…………和樹、それ卑怯。分かった、ママの顔見てくる」
そう言ってささらを家に送って俺も自分の家に帰った、俺の母親は俺が随分と小さい時に病気で死んだから思い出がほとんどない、父親のほうも高校に入ってすぐに事故で亡くなった。そして二人とも天涯孤独だった、天涯孤独+天涯孤独=は天涯孤独の高校生の俺が一人だ。せめて頼れる兄か、可愛い妹でもいたら良かったかもしれなかった。俺の後見人には一応、世話焼きの学校の先生がなっていて、俺もいい年だからと財産はじぶんで管理していた。
「さてと河田めぐみはなんと言ってるかな」
「『皆さん、私。河田めぐみは自称・日本最強を辞めます!! 私は見てしまったのです、真に最強という人間を。この件に関してはその子らを探しています!! ですので〇〇〇くんと〇〇〇ちゃんは本名バレしたくなかったら私にメールしてね、待ってるよん♪』」
俺は河田めぐみの最新放送をみて麦茶をだっーと口から零した、あの女あの修羅場の中で俺たちの名前をよく覚えてたもんだ。確かにあの巨人のダンジョンで和樹、ささらと俺たちは名前をバラシていた。和樹はまだいい、日本人によくある名前だ。でもささらというのはとても珍しい名前だった、名前まで可愛いささらだがこういう場合には特定されやすくて困ってしまった。俺はささらに電話することにした、ワンコールでささらは俺の電話に出た。
「ささら~、今いいか?」
「いいよ、いつだっていいよ」
「あの河田めぐみって奴が配信で、俺たちの本名をバラすって脅しかけてる」
「にゃに~!? 親切に撮影もしてあげて、命も助けてあげたのに恩知らず!!」
「仕方がないから一度メールしてみるぞ」
「無視でいいじゃん!?」
「『和樹』と『ささら』って組み合わせは目立つからなぁ」
「それなら仕方ないなー、もうしょうがないからメールしてみてー。それで帰ったらパパもママやっぱり帰って来ないから、私今から和樹の家に泊まりに行くー!!」
「メール打ち終わったら、ささら。迎えにいくから待ってろ」
「一人でも痴漢や、巨人くらい平気だよ」
「俺が心配だから行く」
「分かった、待ってるー!!」
そうして俺は河田めぐみにメールした、件名を見れば人目で俺たちだと分かるようにした。
”~和樹とささらより~、俺たち目立つのは嫌なんで名前は未公開でお願いします。以上。”
そんなメールをしてから俺はささらを迎えに行った、歩いて十分もかからない近所だが何が起こるかわからないのが今の世界だ。なにせゴブリンや巨人がダンジョンをうろついているんだからな、考えればこの世界もかなり物騒になったもんだ。そんなことを考えているうちにささらの家に着いた。ドアホンを押して声をかけてみた。
「ささらー、来たぞ」
「きゃー!! 待ってた、和樹ー!!」
ドアホンの余韻も消えないうちにささらは俺の胸にダイブしてきた、そうして顔をすりすりとこすりつけながら俺の胸に抱きついてきた。俺は玄関に置いてあるささらの荷物を持って、俺の家に帰ることにした。
「それじゃ、行こう。ささら」
「うん」
そうして家に帰るとメールの返事が来ていた、ささらは返事しなくてもいいよと怒っていた。
”~河田めぐみより~、ちょっと真面目な話があるから貴方たちが返事をしてくれて助かったわ。私、覚醒者の知り合いを作っておきたいのよ。今日のように私の手におえないダンジョンに遭遇した為と、覚醒者どおしの喧嘩に巻き込まれた場合のためよ。そういう意味で同盟が組めないなぁと思うんだけど、できれば助けてくれるくらいの感覚でいいわ。考えてまた返事をお願いします。”
「なるほど、要は保身のための保険みたいなものか」
「あの人、和樹や私より弱かったけど保険になる?」
「だが、俺たちの知らない魔法を知っていたりした」
「そういう意味では確かに役に立ったね」
「ささらはどうする? 俺は河田めぐみ自身は一応信用できると思う」
「和樹が他の女を褒めるとムカつくー!! でも、確かにあの人嘘はつけなさそう」
「それじゃ、いいか」
「うん、いいよ」
”~和樹とささらより~、身バレしないことが第一条件です。それでまぁ、助けがいるようなら手を貸せそうなら貸します。以上”
そうメールしたら、すぐに返事のメールがきた。
”~河田めぐみより~、とりあえずそれで充分よ。ありがとう、万が一の時には連絡するわ”
そうしてひとまず身バレすることは避けられることになった、しかしこの件で俺は他の覚醒者たちのことを改めて考えた、誰もが河田めぐみのように友好的とは限らなかった。
「よーし、ささら。俺たちもダンジョンで特訓するか」
「ダンジョンで特訓? 丸ごと焼いていったら駄目なの?」
「覚醒者でやばいのがいたら嫌だからな、ささらが可愛いからって絡まれたこともあったし、俺たちは今はモンスターでいいから戦い方を学ぶべきだと思う」
「やる!! だって和樹を他の覚醒者の女に盗られたくないもん」
「俺を狙う覚醒者の女なんて……」
「生徒会長の笹貫沙織!! 元・日本最強の河田めぐみ!!」
改めてささらに言われると俺は確かに二人の女性から声をかけられたのだった、ささらがいたから無視したがどっちもあまり深入りしたくないタイプだと思った。そうして今日は疲れたので食事や風呂などに入ってささらと一緒に眠った。
「身体能力でダンジョン攻略となると難易度が上がるな」
「これは防具と武器がいるね」
俺とささらが狼のダンジョンをクリアしての意見がこうだった、確かに腕力があがっているから狼を素手で引き裂けなくはない、でもその間に他の狼にかじられないようにしないといけなかった。俺たちは一つ目のダンジョンでそれを学んで、覚醒者が買い物をするという政府のビルに向かった。
「和樹ー、これっ剣と防具のセットで五千万もするよ!!」
「こっちは一億超えてるなぁ、魔石を換金するか」
結局魔石を換金して俺たちはAランクの覚醒者になってしまった、覚醒者証はうかつに人には見せられないなと思った。そうして俺たちが選んだのは俺は無難にロングソードだった、ささらが選んだのは小剣で両手持ちするのだと中二病全開だった。まぁ、使い辛ければ本人が他の武器に変えるだろうと俺は思って何も言わなかった、防具は動きやすいように最低限だ。それでもお互いに二億をこえていた、この武器はダンジョンから見つかったものだというから、今度は真面目に落ちている武器と防具で使えるものを探そうと思った。
「魔石を換金したら全部で六億もあったから、まぁ金には困ってないんだが良い武器防具は欲しい」
「ささらちゃんと山分けしても三億、それに装備に二億くらい使ったから約四億円かぁ」
「必要経費だ、防具をケチってささらが怪我をしたら困る」
「そうだね、和樹が怪我をしても困るね!!」
こうして俺たちは政府のビルを出て行った、ちなみに税金とかは魔石を現金に換えた時点で引かれているそうだ、政府っていうのはこういう時はしっかりと金をとるものだった。
「それじゃ、ダンジョンに行ってみる?」
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