04嬉しいキスと貴重な情報
「えっ、だって私ずっと和樹と結婚するって親に言ってるもん。もうパパもママもそれで納得してるよ」
「はぁ!?」
「なになに和樹、責任とってくんないの!? 熱烈なプロポーズをしてくれたくせにぃ!!」
「いつの話だ?」
「幼稚園生、ささらちゃんが一番可愛いねって花までくれた!!」
俺は記憶を掘り起こそうとしたが、幼稚園生の時に言ったことなんか覚えてなかった。でもささらと結婚か、それは良い話だ。何故かってもちろんささらのことを可愛いと思っているし、その元気な姿は俺にとっては癒しだ。
「あー、和樹が責任取ってくれないー!! ひどいー!! ささらちゃん泣いちゃうー!!」
「ささら、ちゃんと責任取ってやるよ」
「っ本当!?」
「ああ、俺にとっては今もささらちゃんが一番可愛いからな」
「じゃあ和樹、ささらとSEXする?」
「それは駄目!!」
ささらはえー、どうしてと俺に真正面から抱きついて迫った、でも俺はそれは駄目だと反射的に答えていた、そしてその理由をささらにも話した。
「むー、どうして駄目なの?」
「どんなに上手く避妊しても、子どもが産まれる可能性があるからだ」
ささらは可愛いし恐ろしく魅力的なお誘いだったが、どんなに上手く避妊しても僅かな確率で妊娠してしまうのだ。俺たちはまだ高校生だったし、金の面では困っていなかったが、俺には子持ちになる覚悟ができてなかった。
「ちゅーは、いいでしょ!! ちゅーは!!」
「ああ、いいよ。ほらっ、んくっ」
「ぷはぁ、うわぁ。気持ち良い、和樹キス上手い」
「そうか? 誰ともしたことなかったし、気がつかなかったな」
「これからいっぱいキスしてね!!」
「俺の理性が持つまではな」
それから俺はささらからキスをされることになった、俺だってささらが可愛くて大好きだった。だから時には俺のほうからキスをした、そうするとささらが真っ赤な顔になってしまうのだった。そんなふうに普段は学校へ行って、休日はゲートを攻略しながら俺たちは仲良く過ごしていた。
「和樹、ニュースが変な事を言ってるよ」
「覚醒者規制法?」
そこには覚醒者というのは特別な力をもっているから、国が管理して国の命令で働かせるべきだという政治家が話していた。当然ながらダンジョン攻略の報酬である魔石も国のものだと、安全なところから見ている馬鹿丸出しのことを言っていた。
「ふざけんな、こっちは命かけてるんだぞ。無償でゲート攻略なんかするか!?」
「うっわ、この政治家。ネットでめっちゃ叩かれてる、まぁ当然だよねぇ」
俺もささらもダンジョンを本格的に攻略する時に、何か殺しにいくんだから殺されるかもしれないと密かに覚悟した。そうやって命がけでやっている仕事を、こんな風に変に規制されたらたまったものじゃなかった。
「マジで規制されたらダンジョン行くの止めよう、ただでかける命を俺は持ってない」
「私だってそうだよー!! でもダンジョン行けなくなるのも嫌だなぁ」
まぁ幸いなことに覚醒者規制法に賛成する議員は少なかった、そういった議員たちはネットの中で評価をだんだんと下げられていた。
「今日は休日、ダンジョン日和だな。さぁ、どんなダンジョンかな」
「中に入るまでは分からないっていうのが楽しみだね」
俺たちはネットであげられてたダンジョンに入ろうとした、すると入る前にずぶぬれで怪我をしてがくがく震えているいる青年から俺たちは引き止められた。
「止めろ!! このダンジョンは全階層が水没しているんだ、そして大きなワニがでるんだよぉ。生存者は逃げてきた俺だけだ、全員死んだのを見たんだ!!」
「傷口を清潔な水で洗った方がいいよ、『水』と『治癒』」
「それは貴重な情報をありがとう、『乾燥』」
俺とささらは貴重な情報をくれた青年に傷の手当を施しておいた、そしてダンジョンに入る前にささらを抱きかかえていきなり俺は魔法を使った。
「『飛翔』、ささら。ダンジョンに入るぞ、ワニの方は頼む」
「オーケー、『極大凍結』!!」
俺たちはダンジョンにはいるまえに宙に浮いて水を避け、ささらがその水を凍らせる魔法を使った。ダンジョンは見渡す限り凍り付いてしまった、そうしたダンジョンを俺とささらは宙を飛んで進んでいった。途中でボロボロになった人間の欠片も見た、俺たちも情報が無ければこうなっていたかもしれない、改めて情報をくれた名前も知らない彼に感謝した。
「ほほぉ、さすがにダンジョンボスは違うな」
「あっはははっ、下半身凍っちゃってるけど、……要注意だね」
ダンジョンボスは動ける部分を動かしてこちらに緑色の液体を吐いてきた、どうかんがえても健康ドリンクのように体に良いことはなさそうだから避けた。
「ささら、ボスの止めを頼めるか?」
「うん、いいよ。『氷撃槍』!!」
ダンジョンボスには複数の氷の槍が突き刺さり温かい血が噴き出した、そしてしばらくしてボスは完全に動けなくなりやがて死んでしまった。
「よっし、終わりっと……でもなぁ」
「魔石拾うの大変だよねぇ、この氷じゃ」
仕方がなくダンジョンボスの魔石だけを手に入れて、俺たちは他の魔石は諦めることにした。ダンジョンの帰りはスケートみたいに氷の表面を滑って外に出た、そこにはまだ泣いている青年がいたが、ゲートはダンジョンボスを倒したのでやがて消えていった。
「よし帰ろう、今日は何か温かい物を食べよう」
「うどん、お鍋、おでん、何がいいかなぁ?」
そんなことを言いながら俺たちは帰ることにした、さっきの青年はいつの間にか消えていて、ゲートが閉まってしまったから何の痕跡もなかった。
「そして誰もいなくなった……、かな」
俺はアガサクリスティのファンじゃないので本の中身までは分からない、ただそんな状況だったからそう言ってみた時のことだった。思っていたより夜になっていた俺たちのいた場所に、強い光が当てられて周囲を自衛隊の人たちが見張っていることに気が付いた。
「お怪我はないですか!? ここに出現した非常に危険なゲートを封鎖するためにきました!!」
「あっ、そのゲートもう俺たちがクリアしました」
「情報がなければちょっと油断できないゲートだったね」
俺もささらに頷いて、それから俺たちは覚醒者証の提出を求められたので見せた。そして自衛隊のテントの一つに連れていかれて、おじさんだけど綺麗系の人に会わされた。
「どうやってあのゲートをクリアした?」
「内緒です、企業秘密なので」
「そうそう機密文書なので」
「真面目に答えなさい、他の人にもクリア方法を広めたいから聞いてるんだ」
「ちょっと他の人には言えない方法でクリアしたので」
「言っても真似できないクリア方法だから」
俺たちがそう言うとささらみたいに茶色い髪と同じ色の瞳を持つ、おじさんだけど綺麗系の人はしばらく考えこむようにうつむいた、そしてどんな無茶を言ってくるかと思えば実に当然の質問をしてきた。
「私は泉玄太郎という、自衛隊でも上のほうの者だ。とりあえず、その他の人には不可能なクリア方法を言ってみなさい」
「…………俺がささらをお姫様抱っこして空中を飛んで」
「…………ささらがワニの出るゲートの中の水を全部凍らせたの、そしてボスにも氷の槍で止めを刺したよ」
「浮遊はともかくダンジョン内の水を全て凍らせるなんて不可能だろう、……いやでも正直に答えてくれてありがとう。一応はこれは記録に残しておく、ご協力感謝する」
「じゃあ、もう帰っていいんですね」
「ありがと、イケおじ!!」
こうして俺たちは自衛隊から解放された。ささらは今日も俺の家に泊まると言って、ご飯やお風呂を済ませると俺と一緒に寝た、寝る前にキスもされたのである意味で拷問だなぁと思いながらささらを抱きしめて俺も寝た。起きると寝巻からパンツ丸出しのささらに俺は抱きつかれていた。
「………………おーい、ささらさん。かわいいパンツが丸見えですよ」
「うみゃ、和樹、まだ、まだ駄目、眠い」
俺はささらの頭を撫でて朝食の準備ができるまでは寝かせておき、それが終わったら起こして一緒に朝ご飯を食べた。そうしたら丁度、魔石に関するニュースをやっていた。
「本当にゴブリンの魔石は暴落したね、ゴブリンスレイヤーは夢で終わっちゃった」
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