03遺体と宝の山
そう俺が言ったらささらはつまらなそうな顔をしたが、次の瞬間には自分を押さえつけていた男を蹴り飛ばした。続けて驚く男二人も逃げる暇も与えずに一人は頬を殴り飛ばし、もう一人は体を蹴り飛ばした。それで憐れな男たち三人は気絶していた、ささらの今の身体能力からするとこれくらいはしごく当然だった。
「和樹にはか弱い女の子を助けるという紳士的精神が足りてない!!」
「本当にか弱い女の子だったら助けるだろうが、どう考えてもあいつらとの力の差は歴然だった」
「それでも女の子は助けて欲しいものなの!!」
「………………分かった、ささらがそうして欲しいのならそうする」
俺がそういうとささらは顔を真っ赤にして黙ってしまった、ささら自身で片付けられる簡単なことでも、ささらがそうして欲しいというなら俺は次は助けることにした。
「さ、さぁ、行くわよー!! ダンジョン!!」
「ささら、こいつらどうする?」
俺はささらを襲ってきた自称覚醒者の三人の男を指さした、ささらは冷たい視線をそいつらに向けて言った。
「放っておきなさいよ、強姦魔なんて去勢してやりたいくらいだわ」
「そうか、まぁそのうちに目も覚めるだろうしな」
そうしてから俺たちはダンジョンの中を改めて見回した、どこを見ても岩で洞窟のようなダンジョンだ。
「ぎゃあ?」
「ぎゃ、ぎゃ」
「ぎゃうう」
しばらくすると奥の方から緑色の子どものような奴らがでてきた、一応弓や剣で武装しているものもいたが俺たちの敵ではなかった。
「『氷竜巻』」
そいつらは十数匹いたのだが、俺が氷の嵐で全員をずたずたに切り刻んでやった。するとそいつらの体はあのふわふわした光になって俺たちに吸収された、そしてその場には持っていた武器や綺麗な宝石のようなものが落ちていた。
「装備はボロッちいのばっかりね、こんなんじゃ使えないわ」
「この宝石のようなものはなんだろうな?」
「ゲームのお約束の魔石ってやつじゃない?」
「一応集めておくか、何かの役に立つかもしれない」
しかし、俺は思った。このダンジョンはおそらくレベルの低い方のダンジョンだが、敵が多過ぎて俺とささらでなかったら危ないところだった。これはダンジョンがどのくらいの頻度でできるのか分からないが、巻き込まれた一般人は間違いなく死んでしまう可能性が高かった。俺たちは緑色の子どものような奴らを何のひねりもなく、ゲームでよく出てくるゴブリンと呼ぶことにして先に進んだ。ゴブリンばっかりで俺たちには歯ごたえのないダンジョンだった、そして俺たちは最後の部屋にはいった。
「『氷撃矢』!!」
「ふん、遅い!! 『火炎球』!!」
最後のダンジョンにいたゴブリンだけ魔法を使ってきたが、氷の矢をささらが炎の玉で迎撃しそのままゴブリンを焼き払った。あとには魔石が落ちているだけだった、とりまきもいたらしく魔石は沢山落ちていた。俺は鞄の中に『吸引』を使ってそれらを全部回収した、そうして最後のボスを倒してしばらくするとダンジョンは消え去ったのだが、三人の体を食い荒らされた男たちの遺体が残っていた。
「一応は抵抗はしたみたいだな」
「そうね、いくつか魔石も持ってるもん」
「それじゃ、俺たちの責任じゃないな」
「ダンジョンに入った時点で自己責任よ」
俺たちは小声でそんな会話をして彼らの死は自己責任だということにした、一応あった自衛隊や警察からの取り調べにも二人でこう答えた。
「偶々一緒のダンジョンに入ったが、彼らは三人で別の道を歩いていった。その後のことは知らないし、分からない」
それからダンジョン内部のことも詳しく聞かれたが、ゴブリンだけが出るダンジョンだった。ボスのゴブリンが魔法を使ってきたが俺たちは避けた、それでその隙にそのゴブリンを魔法で倒したと答えた。警察や自衛隊の人たちからは運が良かったねと言われた、ゴブリンのダンジョンは他にも街に三つほど現れて巻き込まれた一般人が大勢死んだらしかった。
「なぁ、ささら。俺は別に現代最強とかにはなりたくないが」
「できるだけダンジョンをクリアしようでしょ!!」
「うん、その方が巻き込まれた一般人が助かるならそうしようと思う、お前は?」
「私も現代最強とか呼ばれたくないけど、いいよ。和樹につきあってあげる!!」
「ありがとな」
「どういたしまして!!」
それから俺たちは平日は学校があるので夕方だけ、休日はぶらぶらと街の中を歩いてダンジョンをクリアしていった。ダンジョンを見かけた人がインターネットの掲示板などに書き込みをしてくれるのも助かった、俺たちは行ける範囲でどこにでも行ったし、なるべく目立たないように別のダンジョンでもゴブリンのダンジョンだったと報告していた。
「そして、この魔石って何なのー!?」
「クリーンエネルギーじゃないかって、ネットの掲示板では言われているな」
「もう和樹の部屋が魔石入れたダンボール箱だらけじゃん、これって売れないわけ?」
「政府から売買を禁止されているんだよ、そのうち政府自体が買うんじゃないかな」
俺たちはダンジョンを探して動きまわっているのを秘密にしていた、だからささらの部屋には持ち込めず俺の部屋に魔石が貯まっていた。そうしてダンジョンができはじめて一カ月、ようやく政府は魔石の買取を始めた。
「最初は二、三箱売ってみるか?」
「いくらくらいになるかなぁ」
「ゴブリンのダンジョンの魔石から、売って様子をみてみるとしよう」
「ダンボール一個でも結構、軽いわね」
「俺が二箱持っていくよ」
「いざっ、いかん。政府という名の戦場へ」
「いや、戦わねーからな。ささら」
「何言ってるの、和樹。商売は戦争よ!!」
そうして俺たちは今まで集めた魔石を政府に売りに行ったのだが、ダンボール三個で約一千万を俺たちは貰うことになった。商売は戦争よとか言ってたささらも口を開けて驚いていた、幸い他にも魔石を売りにきている人がいっぱいたので、俺たちはさほど目立たずにすんだ。通帳にはお互いに約五百万入っていた、これは問題だと俺は思った。
「ねぇ、和樹。段ボール三箱ってゴブリンのダンジョン何個分?」
「大体、多分だけど十個分だな」
ささらは驚いて頭が回っていない俺の答えを聞いて悲鳴を上げた、俺は慌てて近くの人に聞かれないようにささらの口を塞いだ。
「………………ゴブリンのダンジョンを十回まわっただけで、一千万も貰えるの!?」
「そうみたいだな、金銭感覚が馬鹿になりそうだ」
「和樹、和樹、何か美味しいもの食べよ!!」
「そうだな、金はあるし。なんか腹も減ったしな」
ということで俺たちはとてもお高い回らない寿司や、いつもなら入れない高級ステーキが絶品だという店に行った。
「情けは人の為ならずってこういうことね!! うまー!! 肉汁が溢れてすごーい!!」
「寿司のほうもすごく美味しかったが、やはり肉はまた別物だな」
「私、このままゴブリンスレイヤーでいいかも」
「それはどうかな?」
「えっ、ゴブリンスレイヤーに一体どんな危機が!?」
「今日持ち込んだぶんだけでもかなりの魔石があった、多分安くて手に入りやすい魔石は値崩れするだろうと思う」
俺がステーキを味わいながらそう言うと、ささらもそれもそうかとうんうん頷いていた。ささら頬にステーキソースがついてたので、そっとテーブルの紙で拭いてやった。ささらは値崩れと聞いてちょっとがっかりした顔をしたものの、大人しく口元を拭いて貰ってご機嫌になった。
「それじゃ、ゴブリンよりちょっと強いオオカミや化け物猿の魔石はしばらく封印ね」
「寝るところが狭くなるが仕方がない」
こうして俺はしばらく魔石が入っているダンボールの山と一緒に寝ることになった、ささらも苦楽を共にすると遊びに来て泊まっていくので余計に部屋が狭かった。しかしささらのご両親もよく年頃の娘を俺の家に泊めさせてくれる、普通は年頃の娘が男の家に行くとなったら警戒するものだ。
「ささらのご両親は俺のことを男として警戒しないのか、それとも信用されているのか」
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