19運命を選択する時
「ささらの可愛いところは俺だけ見てればいいよ」
フリーが来たおかげで寝室で堂々とささらを抱けなくなったが、結構家のあちこちで二人で愛し合った、場所が変わることで興奮もした。さて、それはさておきフリーのことだ。
「フリーはダンジョン外にいる、たった一人のモンスターです」
「イケおじ、他にそんな例は見つかってないの?」
「今のところ、どこの国からもそんな報告は無い、研究者がそのフリーとらを研究したがっている」
「注射とか痛いことする気じゃ!?」
「組織の採取とか言って痛いことする気!?」
「そんなことはとっくの昔にダンジョン内で、他のモンスターを使い試している、どちらも組織が光となって消えてしまったそうだ」
「フリーは何者でしょうか、今のところただの可愛いマスコットですけど」
「可愛いマスコットってだけじゃないよね。やっぱり」
「分からん、君らのいう神の遊びの一環ではないだろうか。危険が無いならそのまま預かってくれ」
しばらくフリーを預かって自衛隊に他の国の様子を聞きにいったが、他ではフリーのようなモンスターは現れていないらしかった。本当に神の遊びの一環なのか、危険は無さそうなのでまぁ問題はなかった。どうもフリーは魔法を使えないようなのだ、体も子どもだからほとんど無害だった。
「フリー、魔法使えない。残念」
「大きくなったら使えるようになるかもしれない」
「そうよ!! フリー諦めない!!」
「フリーは大きくなれるかな?」
「沢山食べて運動すれば大丈夫さ」
「魔法の練習も諦めないでしようね!!」
フリーはだんだん大きくなった、沢山食べて運動もしたが魔法は使えなかった。今じゃもう十歳くらいの子どもにフリーは人化できた、そしてフリーはドラゴンの姿より人間の姿でいることを好んだ。
「この姿だと和樹とささらと一緒」
「ははっ、本当に普通の人間みたいだな」
「和樹と私の子ども、なんちゃってー!! きゃ―!?」
「そうだったら良かったのになぁ」
「それじゃ、フリーはうちの子だな。そのうち弟か妹ができる日が来るぞ」
「和樹ったら私を孕ませる宣言!?」
「二人の子ども、楽しみ」
「すっ、すぐにはできないからな。数年様子を見てくれ」
「分かった、数年で私は和樹の子ども産むんだぁ」
今月は異世界化するダンジョンはフリーのダンジョンただ一つだった、しかし山の上の洞窟の中にあるから誰の邪魔にもならなかった。一応異世界化を最低限にとどめているので、神とやらが何か計画している以外は何も問題はなかった。
「ささら、気持ち良い? もっと激しくしようか?」
「して、もっと激しくーー!!」
「それじゃ、遠慮なく」
「んーー!! んんーー!!」
「ささらが声押さえて感じてるのも可愛い」
「だってフリーがいるし」
そうやって今日はお風呂場の中でささらと愛し合っていたら、不意にこんな声がかけられた。
「僕がいると何かまずい?」
「フリー、いつからいたんだ!?」
「えっとフリー、これはね!? あのね!?」
「生殖行為でしょ、僕の妹か弟が産まれるかもしれない。頑張ってね!!」
「そっ、そうだな」
「がっ、頑張る」
そうしてフリーがこういう行為の意味を理解しているのなら、フリーが客室にいる間に俺はささらと寝室で思う存分愛し合うということができるようになった。場所を変えると興奮するのでこそこそっと寝室以外で愛し合う癖もできた、本当に下手をするとフリーに妹か弟ができそうだった。
「もしっ、ダンジョンブレイクが起きて家が無くなったら何がいるかな。和樹!!」
「そりゃ、水や食料、料理道具にといろいろいるだろう」
「おっしゃ、買い出しじゃー!!」
「えっ、えっともしの話だよな……?」
この頃、億単位で稼いでいた俺たちはお金の使い道が無かった。そんなに欲しいものがなかったからだ、それでささらはフリーや俺をつれて買い出ししてまわった。一体そんなものいつ使うんだという物まで買っていって、片っ端から俺とささらの『魔法の箱』に放り込んでいた。百貨店ができそうなくらいいろんな物を買っていた、フリーも好きなお菓子を山ほど変えて幸せそうだった。
「機織り機を買うのか!?」
「服がつくれなくなったら大変でしょ!! そう買っといたほうがいい気がする!! 私の勘!!」
「はたおりき?」
「いや、別に俺は反対しないし、フリー機織り機っていうのは布が作れる機械のことだ」
「使い方とかさっぱりだけど、なんか欲しいの!! よっしっ、購入!! 糸も買っとこう!!」
「勉強になる、人間はそうやって服を作るのか」
フリーの服はドラゴンの皮が変身したものなので、好きな服をいつでも作ることができた。だから人間の服を作る方法をフリーは知らなかった、俺は機織り機を買うなら教本もいるだろうと、実用系の本を山ほど買って『魔法の箱』に入れておいた。
「人間の衣食住を整えるって大変なんだね、和樹」
「ああ、そうだな。俺たちはどこにいくんだ、無人島か。まぁ、金は余ってるからいいけど」
「無人島でのんびりお菓子を食べてだらだら、いいかも」
そうして俺たちはお金の許すかぎりの物を買い込んだ、ささらの勘は妙に当たるからいつか必要な日がくるのだろうか、地球が丸ごと異世界化しない限り無いような気がした。まぁささらには逆らえないし、っていうか可愛いおねだりだったら逆らう気もなかった。そうして、その日はやってきた。
「『皆さ~ん、選択のお時間だよ!! そこの覚醒者の君、君は覚醒者のままでいたい? 普通の人間に戻りたい? 好きな方を選んでね!! 結果は明日の朝のお楽しみだよー!!』」
そんな文字が三度目である、真っ青な空に浮かんでいた。覚醒者は全員それを見て、それぞれの選択をすることだろう、俺はささらやフリーと相談した。
「俺は覚醒者じゃなくなったら、ささらやフリーを守れない。このままでいい」
「和樹が覚醒者のままでいいんなら、私も一緒。一緒にフリーを守ろうね!!」
「…………二人ともありがとう、僕も精一杯頑張る」
自衛隊から連絡がきてどちらを選択したか聞かれたから正直に俺たちは応えた、そうしてそれが泉玄太郎さんと話す最後の機会になった。
「泉玄太郎さん、俺は覚醒者のままささらとフリーとで戦い続けるんです」
「イケおじ、私も和樹やフリーを守って戦うんだ!!」
「人間のおじさん、和樹やささらに僕はついてく」
「そうか、君たちがそう決めたのならそれが一番良い選択なのだろう、何が起こっても頑張って人生を歩んでくれ」
そうして各自覚醒者は選択を強いられた、覚醒者のままでいるか弱い人間に戻るかだ。なかには力に溺れて自分としては間違った選択をしたものもいるだろう、でも少なくとも俺とささらの選択は後悔するようなものではなかった。そうして、俺たちはフリーを囲んで三人で眠りについた、次の日は運命の決まった朝だった。
「和樹、和樹、起きて。私たちフリーのダンジョンにいるよ」
「ん、ささらにフリー、おはよう。どうしてここにいるんだろうな?」
「フリー分かった、多分そういうことだと思う」
そうしてフリーのダンジョンを出て、外をみるといつもとまったく違った景色が広がっていた。見渡す限りが緑の原始的な風景だった、俺はささらとフリーを守ろうとまずは地球単位で『探査』をしてみた。その途端に俺に新たな情報が流れ込んできた。
「なっ、ここは!?」
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