01限定のふわふわ期間
月曜日の朝というものはどうして憂鬱で気分がこんなに重いのか、そんなことを考えながら黒髪に茶色の瞳の俺という坂井和樹そんな普通の高校生はどうにか歩いていた、家を出て電車を使い学校の近くについたから電車を降りた。
「ああ、眠い。毎日を日曜日にしてくれないかな」
学校まで短い通学路を歩きつつも眠くて仕方がなかった、最後の力で自分のクラスに入り自らの机に突っ伏して眠りに落ちたことは覚えていた。
「はっ、もう夕方か。何か食べて帰ろう」
「それは良い案ね、行こう行こう!!」
そうして俺はホームルームも授業も昼食も忘れて眠り続けて目が覚めた、さすがに腹が減っているから何かファストフード店で食べようと思った。そうしたら幼馴染の今井ささらが俺のとなり机に座り、俺の思い付きに同意しながら頷いていた。ささらも日本人だがハーフで明るい茶色の髪に蒼い色の瞳を持っていた、昔はそれでよくいじめられてた。だがその頃から背が高かった俺を友達と言いだし、いじめっこ達を反対に撃退していた。俺にとっては可愛い幼馴染だ、そんなささらが今日は一段とキラキラして見えた。
「なんだささらか俺の目がおかしいな、今日はお前が煌めいて見えるよ」
「そうだとすると私の目もおかしいね、和樹の上の方が同じように見えるもん」
俺はささらにそう言われて教室の中を見たら朝とは様子が違っていた、なにか青い光だったり黄色の光だったり同じく緑や赤や白や黒い光がふわふわ浮いているのだ。それは二メートル以上高いところにふわふわと浮いていて、次々と教室を出て行くクラスメートは誰も気がついていないようだった。
「なんだこれ?」
「さぁ、分かんなーい」
俺は近くにあった緑色のふわふわを握り締めた、するとそれが体に吸い込まれて何だか気分がよくなる気がした。ささらににも採ってみるように言ってみると、ささらも小さな光を吸収してにっこりと笑った。思わずファストフード店に行くのを止めて、片っ端からそのいろんな色に光るものを回収した。残っている同じクラスの目には、俺とささらがいきなり両手をあげてふらふら歩いていると思われた。
「何、あれ?」
「春だしね」
「それより早く帰ろーよ」
「そのとおり」
そうして教室をただよっていたふわふわした光を全て回収すると、家に帰ろうと思って廊下に出た。すると廊下も同じような状態だった、俺はその光をいっぺんに回収できたらいいなと思った。
「……………『吸引』」
「あっ、ずるい!!」
そう思ったとたんに言葉が頭に浮かんで風が吹いて、俺はその辺りにあったふわふわした光を全て回収していた。その調子でいつもなら電車で帰るところを俺は歩いて光を集めながら帰った、ささらも今日は俺の家に泊まると言ってついてきた、そして途中でファストフード店にも寄って食欲を満たした。
「『さぁ、始まりの一週間限定がはじまったよ!! 運の良い人はふわふわした光を集めよう!! すっごく沢山集めると後でスタートがお得になること間違いなしだよ!!』」
ファストフード店を出て何となく空を見上げたら、そんな怪しい広告のような文字が空に浮かんでいた。俺は偶々歩いていた女性をつかまえて聞いた。
「あの、空に光っているネオンっぽいものが見えますか?」
「何にも見えないよ、ほらっ学生は遅くならないうちにさっさと帰ろうね」
俺はその声をかけた女性にバンバンと背を叩かれた、俺はうぐっ食べたばかりなのにと思いつつ吐き気を耐えた。ささらには空の文字が俺と同じくみえていた。
「今だけ限定、お得ねぇ」
「うーん、詐欺っぽいけど心をそそるね!!」
そう『限定』『お得』ってなんとも俺の心誘う言葉だ。決めた青春の一ページをいうやつだ俺は明日から一週間、あの光を集めて過ごすことにした。
「もちろん、私もいくからね!!」
「学校をサボることになるぞ」
「こっちの方がなんか大事そうに思えるの」
「ささらの勘はよく当たるからなぁ」
翌日の朝は二人で五時起きで街中をふわふわの光を探し回った、その間に吸引する力も強くなって『大吸引』に変わり次には『極大吸引』にもなると街一個分の光を吸収できた。
「それじゃ、隣町だ!!」
「よっし、隣町は私が吸収するからね!!」
そこで青春十八切符を買って、隣町、その隣町と俺たちは光を集め続けた、そうやって集めていると光が六種類あると分かった、多いのが黄色、緑色、赤色、青色で、ちょっと珍しいのが白と黒の光だった。黒の光は新しい黴の胞子かと思ったくらいだ、でも何か役に立つのだろうと差別はせずに集め続けた。
「『さぁ、楽しいイベントも終了のお時間だ!! 明日から頑張ってね!! 皆の幸せを祈ってるよ!!』」
俺はそれを家から遠い場所で見た、どうやらこのイベントもおしまいだ。街を巡りながら食べる駅弁は美味しかったし、俺たちは周囲にあった十数県のふわふわした光を回収した。仕方なくイベントが終わってしまった、そんな寂しさを抱えながら俺は自宅にささらも自分の家に帰った。そして深夜に俺は家に帰りつき良く眠った、ここ一週間はふわふわを集めるのに一生懸命で碌に寝ていなかった。
「月曜日の朝辛い、ささらは元気だな」
「何も起こらないねぇ? つまらないな」
そして翌日、何か起こるのかと思ったが何も起こらずに世界は平和だった。俺はまた月曜日の憂鬱な気分で学校へ向かった。途中でささらにもあったが、でもまぁ世界には何も起こらないのが一番良いことだ。そうして俺たちが高校についたら、近くにある防災の時のサイレンが鳴り出した。
「………………嫌な予感しかしねぇ」
「えへへへっ、事件発生かな?」
それからすぐに避難場所に指定されている俺の学校に人が押し寄せてきた、なかには怪我をしている人もいてとても痛そうだった。俺とささらは皆と同じように避難してきた人達を空き教室に案内した、やってくる人々は口々に化け物を見たと言っていた。
「緑色の子どものような生き物だ、いきなり襲ってくるんだ!!」
「いいや、大きな豚のような奴だった!!」
「凄く大きな蜂に刺されたらの、痛い、痛い!!」
「とても大きな犬だったわ、私だけどうにか逃げられたのよ!!」
俺は頭の中を整理しようとした、どうも俺が集め続けたふわふわがこの異常事態に関係ないとは思えなかった。俺とささらは何も考えず無邪気にふわふわ集めをしていたが、それはまずいことだったのではないだろうかと思えてきた。
「ささら、あのふわふわした光。俺たちが独占して良かったと思うか?」
「うーん、そんなに気にせずにいようよ、私達はふわふわしたよくわからないものを集めただけだよ」
そうしている間に自衛隊の人たちも来て、怪我を負っている人は治療が施された。そうして校門からそれは入ってきた、二足歩行する大きな豚の化け物だった、自衛隊が弾丸を撃っていたが全然その化け物には効いていなかった。そんな化け物に驚く俺に、ささらがこっそりとこう言った。
「現代最強なんてなりたくないし、とりあえず和樹誰もこないように見張ってて!!」
「俺達も避難した方がいいんじゃないか? ささら?」
「まーかせてよ、こっそりやるからさ」
「何か手があるんだな、俺はそれじゃ周りを見張っておく」
巨大な豚の化け物はささらを見ると涎をたらしてこっちめがけて歩いてきた、幸いにも周辺の皆は避難して残っているのは俺とささらだけだった。そうしてささらが豚の化け物に向けてこう言った。
「『氷撃槍』!!」
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