表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/26

3話① 『接触』

「店長、防犯カメラの映像見せて下さい」


 楓は学校終わりにアルバイトの日でもないのに勤務先、カラメリへ向かい、バックヤードでサボっている住吉に押しかけていた。


「えっ! いいけど、何で?」


「昨日、私、芽さんの代わりに出勤してたんですよね?」


「おー、ありがとねー。デートはなしになっちゃったの? あっ、あんまり聞いちゃだめか」


 あっはっはっ、と誤魔化して住吉は立ち上がった。


 普段シフト表を作成しているノートパソコンの隣に、少し埃の被ったデスクトップパソコンが置いてあった。


「このパソコンでカメラの映像は見れるようになってるけど。何、浮気調査とか?」


 住吉の冗談を適当にかわし、昨日の昼の映像を再生してもらった。


 朝からシフトに入っていたアルバイト店員や、客がカウンターに並ぶ様子が映し出される。青白く、あまり画質は良くなかったが、知っている人間くらいは誰か判別できる。


「すいません、私が出勤してくる辺りまで早送りできますか?」


 人が入れ替わり立ち替わり流れていく。朝の店員がはけ、昼の店員に入れ替わる。画面左のカウンター奥。バックヤードへ続く扉がまた開いてもう一人の店員が現れた。


「これ……」


 楓はその店員を指差す。


「お? 清澄さんだね?」


 楓は指差したまま、映像の楓の動きに合わせてなぞる。


「これ、昨日の映像なんですよね?」


「うん! ここにも9/22って出てるしね」


 たしかに画面右下のデジタル表示には昨日の日付が表示されている。


 エプロンを結びながら堂々と現れ、何やら他の店員とも喋っている。活き活きと。


 あたかも、楓のように。


「ありがとうございます。よく分かりました」


 これ私じゃないです、と主張したい所だったが、話がややこしくなる上に、笑い飛ばされるか不審がられるのは分かっていたので、楓はぐっとこらえた。


「あれ、清澄さんお疲れ」


 エプロンをつけた凛都が現れた。


「あっ、お疲れ様です」


 楓は不意に現れた凛都に動揺する。


「店長、エスプレッソマシンの調子がまた悪くて。ちょっと見てもらえますか?」


「まじか! ちょっと見てくるー」


 住吉と入れ替わりで凛都が楓に近づく。


「今日は休みじゃないの? てか何見てたの?」


「あの……」


「ん?」


「昨日、私たちって一緒にいましたよね?」


「そうだけど」


「これ……」


 映像を少し巻き戻して、凛都にもう一人の楓の姿を見せる。


「これ、昨日なの?」


 凛都の問いかけに静かに頷く楓。


「何で清澄さんが映ってるの?」


「こんなこと言ったら、変だと思われちゃうと思うんですけど、私、最近もう一人いるみたいで……」


「片方は偽物ってこと?」


「このバイトしてる私、私じゃないんです。こいつが偽物なんです!」


 凛都はうーん、と手を顎に当てて考える。


「マシン直ったよー。中で詰まってたみたい」


 住吉が戻ってきた。


「あっ。ありがとうございます。じゃ、俺戻るね」


「あ、はい、分かりました」


 凛都は去り際、一瞬立ち止まって楓の方を見た。


「案外、デートしてた方の清澄さんが偽物だったりして」


「え?」


 楓は意味深なその言葉に立ちすくんだ。


「え、何、何? どういう話?」


 空気を読まない住吉が軽薄に尋ねてきたが、もう楓はそれどころではない。


 ――私が、偽物?


 天と地がひっくり返るような衝撃だった。


 その何者かを追いかけ始めた途端、それは既にそこにいて、しかもそれが自分そのものだったとしたら。


「違う……。私じゃない」


 スクリーンに映る楓らしき物体を睨みつける。拳を強く握りしめ、気持ちは既に別の場所にあった。


 エイトーモール。


 凛都と昨日訪れたその場所。私はそこにいた。そこに私の存在した証拠がある。信じられるのは自分の足跡のみ。


 住吉をほったらかして楓はカラメリを飛び出す。自分の存在を追い求めて。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ