心が痛いです
※元ネタを知らないと分からない話です。
2023年 文鎮をもらった時のお話
職場にある書類が風で飛ぶのを抑えるため、事務の方が使わなくなった文鎮を提供してくれたのです。
完全に私物ですが、いらないものなら頂いて有効活用いたしましょう。そんなに堅苦しい会社でもないし。
それは短い円柱の上に取っ手が付いており、上に重ねられるような形の文鎮でした。重ねると、まるで「だるま落とし」みたいな感じでちょっとカワイイです。
4つ重なった文鎮は、一番上だけが白、他は黄色でした。
一番上の文鎮を見ると、縁に沿ってローマ字で苗字らしき文字が書かれています。そしてその奥にカタカナで「シンジ」とありました。事務の方はかなり年配の女性です。
「あれ? この文鎮って誰のものですか?」
思わず聞いてしまいましたが、こんなところに興味を持つべきではありませんでした。事務さんによると、文鎮は「息子が中学の時に使っていたもの」とのことでした。なるほど、ローマ字を使いたいお年頃ですね。そして息子さんは「シンジ君」っていうんですね。え? 違う? だってここに……。
そこで私は発見してしまいました。少し油性マジックがかすれて読みにくくなっていますが、ローマ字で書かれた苗字の横に「●号機」と書かれてあったのを。
……
……
嫌な予感がします。
私は不思議な引力に引かれるように、かすれた文字を読み取りました。ああ、そこに書いてあったのは、そこに書いてあったのは紛れもなく「初」の文字でした。
「初号機」
私の心は1のダメージを受けました。
今更ですが文鎮の取っ手の向こう側、ちょうど取っ手に隠れるようにして細い文字が書かれています。
「SHINJI IKARI」
見なかったことにしたい。いやしかし。文鎮はあと3つあります。
私は恐る恐る一番上の文鎮を持ち上げます。
「アスカ」
ぐわっ!
私の心は3のダメージを受けました。果たして事務さんはこの名前の意味を知っているのでしょうか。いやたとえ知っていたとしても「息子が好きだったのよ~」くらいですまされてしまいそうです。むしろ息子さんは自分が残したこの文鎮が外部に流出し、私の心を削っていることを知っているのでしょうか。
というより私の私物のセキュリティは大丈夫なのでしょうか。実家のセキュリティはザルのような気がします。父よ、頼むぜ……。
さてそんなことよりも。
残り2つの文鎮に、間違いなく「レイ」は潜んでいるのでしょうが、恐ろしくて見ることができません。文鎮は私の机の上で4つ重なったまま、最初から1つの文鎮であるかのように鎮座しています。
好意で私物を提供してくれたのはとてもよく分かるのですが、いやこれ、どうしよう。
だって中学生なんだもん、と笑ってやるのが正しい姿なんでしょうね。本人不在の場所でですが。
※「シンジ」「アスカ」「レイ」というのは、あるアニメのキャラクター名です。
自分の持ち物にアニメのキャラクター名を書く。私には経験ありませんがその代わり、あらゆるところにへたくそで見ていられないオリジナルキャラクターを描いてました。
ホント頼むぜ、父よ……。