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再び華が咲く日まで  作者: 井ノ上雪恵
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願望

 

 ……『良いかい?この国では馴れ合いなんてモノは不要だ。全て自己責任。仕事で失敗してしまった時は……自分でどうにかするんだ。誰も助けには来ない。どうすることもできなかった時は……死になさい。良いね?フローズ』



 〜       〜       〜



「どうなさいますか!?殿下!!」


 兵士の慌てた声が耳に入り、ハッと我に帰る。

 半分涙目の兵士に指示を迫られて、殿下はチラリとこちらを見つめた。何となく馬鹿にしたくて、深い意味もなくニヤッと笑んで見せる。


「……どうやら君のお迎えが来たみたいだね……詳しい状況を!フラワーガーディアン達は?」

「ハッ!只今応戦しておりますが、フロスターを二体も召喚され押され気味です。我々兵士も参戦していますが、デゼールの軍隊の数が多く、負傷者が増大中でして……」


 ニコリと私に笑い返した殿下は、キリリと“王太子”の表情かおをして兵士と向き合う。

 その様子をベッドに腰掛けながら他人事のように聞いていた。

 フロスターを一気に二体など、無茶もいいところだ。今日から一か月はフロスター召喚装置が使い物にならないだろう。

 装置を作った時に説明や注意事項は教えてある。それを踏まえて使っているなら、そうまでしてフィオーレから私を奪いたいということだろう。


 ……一体何のために……?


 デゼール側の行動の意図が読めなくて、内心首を傾げる。


「……彼女をデゼールに引き渡すわけにはいかない。私も戦場に行こう!」

「は!?何言ってんですか!?ロゼ様を前線に立たせるわけには……」

「安心しろ。私に何かあった時は、既にハクに何かあった後だ。責任は自分で取る!」

「んな滅茶苦茶な……」

「君、状況説明ありがとう。私も戦場に出向くことを女王陛下に伝えてくれ」

「ハッ!かしこまりました!」

「看守はデゼールの人間が彼女を連れ戻しに来ないか、しっかり見張ること!……行くぞ、ハク!」

「ハッ!」


 私が考え事をしている間に、殿下は周りに指示を出すと、とっとと地下牢から出て行ってしまった。残されたのは、看守一人と私だけ。

 昨日と似た状況だが、違うところは流石に非常事態の為、看守も真面目に見張りをしているという点だろう。

 まあ、デゼールの人間がここまで来れる筈はないし、その気になればこんな檻一瞬で破れるので、見張りなど何の意味もないが……。


 ……にしても、何でわざわざ……。


 頭の中では先程から同じ疑問が浮かんでいる。


『何の為にデゼールは私を取り戻そうとしているのか』


 一度だけ、デゼールの人間がフィオーレの捕虜となり、私がフィオーレの城の地下牢に潜入したことはある。その時は、勿論捕虜を助ける為に行ったのではなく、フィオーレにデゼールの情報を渡した裏切り者を暗殺する為にだった。

 助けが来ることはないが、デゼールを裏切った時に刺客が送られてくることは知っている。

 だが私はフィオーレにデゼールの情報を渡してなどいないし、開発に協力してやる気も更々なかった。デゼールに暗殺される義理はない。

 そもそも、あくまで“暗”殺だ。兵士やフロスターを引き連れて来るという時点でおかしい。

 となれば……。


「……助けに来てくれた……?」


 つい声に出してしまって、すぐさまそんなわけがないと否定する。

 失敗すれば自殺しろと教え込む国で、そんなお優しい仲間ごっこみたいな真似、あるわけなかった。

 確かに兵器開発が出来るのは自分だけだし、フラワーガーディアンに有効な手段を持っているのも自分だけ(今はフロスターの装置がある為違うが)。便利な駒の喪失を惜しんで、助けに来てくれた可能性は零ではない。

 それでも……


 ……有り得ないよ……。


 助けなんて来ない。

 開発に至っては、フロスターを完成させた時点で私の価値は半減している。便利であるが所詮捨て駒……惜しまれることなど絶対にない。

 どちらかと言えば、デゼールにとっては生きてて貰った方が都合が悪いだろう。私が生きている限り、フロスター対策が用意される可能性があるのだから。


 ……ああ、そっか……だからか。


 ふと、答えが出た。

 フィオーレに私の技術が入ることを恐れているのだろう。

 公開処刑が取り止めになったことくらい、デゼールだって掴んでいる筈だ。フィオーレに新しい力を与えたくなくて、裏切られる前に殺してしまいたいわけだ。

 理由がわかれば腑に落ちた。

 暗殺ではないにしろ、やはり私を殺しに来たのだろう。よく考えたら、地下牢にこっそり侵入できて、確実に一対一で相手を瞬殺できる手腕があるのは私だけだった。

 なるほど、暗殺ができないから大量に兵を引き連れて騒々しくやってきたわけか。


 ……でも……でも、もし……助けに来てくれたのなら……?


 有り得ない。

 馬鹿な考えは捨てろ。

 そんな国じゃないことはフィオーレ出身の人間の中で、私が一番よく知っている。


「…………」


 思考を停止すること約一分。


 ……確かめに行くか……。


 思い立つと私はピアスの石に触れた。

 約五秒後、現れたのは特製催眠スプレーと針金二本。


 それから一分後、私はアッサリと脱獄した。






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