プロローグ
上半身を縄で縛り上げられたまま、全国民が見下ろしてくる断頭台に立つ。
このまま首を斬られれば終わり。
最期の最後までクソみたいな人生だったなと、自虐気味に笑った。
国民のブーイングもゴミを見るような目線も、全ての敵意が一身に注がれる。
……あぁ、やっと死ねる……。
ようやく振り下ろされた鎌にソッと目を閉じた。
「……待て!!」
凛とした声が響き渡る。
結局望んでいた死は、鎌の刃と共に私の首に届くことはなかった。
* * *
フィオーレ王国……一年中色とりどりな花々が咲き誇る、平和の象徴と名高き大国である。国民は皆穏和で優しく、国の誇りである花々を愛していた。
誰もが豊かで幸せな国……そんな天国みたいな国がフィオーレ王国だった。
しかし、そんな平和の象徴にも敵対している国はあった。
それがデゼール帝国。フィオーレ王国と隣接している砂漠の巨国で、遥か昔からフィオーレ王国に攻め入ろうと兵を向けていた。草花の一本も生えていないデゼールでは、国民は誰もが荒んだ心を持ち、笑顔のない日々を過ごしている。正に争いと不幸の象徴みたいな国だった。
平和の象徴vs争いと不幸の象徴。
二つの大国は隣り合いながらも決して相入れることはない――。