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第26話 これから

「危ない危ない、少しズレていたら私まで消されるところだったぞ」


「っ!?」


 たった今、魔法少女さんの必殺技(仮)で化け物を一撃で葬り去ってくれたのは良かったんだが、不幸なことに奴は攻撃から逃れることに成功していたらしい。

 髪をかきあげながらピンピンしている。

 

 いつの間にか、魔法少女さんの攻撃で負っていた怪我が綺麗に治っていた。

 折られた爪も直ぐに治っていたし、再生能力とか持っていそうだ。


 鋭く伸びていた爪は短く戻っていた。

 伸縮自在らしい。怪我の方は魔法で治したのか、それともやはりオート治癒能力でも持っているんだろうか。


「どうやら本当に分が悪そうだ」


「少しはお話するつもりになった?」


「冗談ではない。今日のところは引かせてもらうよ」


「そう」


 呑気に話してないでもう1発さっきの技を発動してしまえば良いのに。俺なら間髪入れずにぶっぱなすが。


 もしかして、さっきの攻撃は一度しか出来ないのか?

 ピンク猫もかなりの魔力を消費していそうだし、そう何度も連発できる技でもないのかもな。


 魔法少女さんならあの技がなくても銀髪ホストには勝てそうだけど。先程の戦闘でも全体的に押していたし、倒しておかなくていいんだろうか。


 いや、あいつに再生能力があるなら、戦いは長引くだろう。

 魔法少女さんも消耗するだろうし、相手が引いてくれるならそれ以上のことはない、か。


 ピンク猫の魔力がなければ、魔法少女さんも戦えないのかも知れないしな。


「それではさようなら」


 何かを唱えると、あいつの足元で次元が裂けた。魔法を使ったのか、そうとしか形容出来ない現象だ。

 不遜な態度を崩さないまま、銀髪魔族の体が沈んでいく。


「我々の邪魔をするなら、また相見えることもあるだろう。」


 そう言い残して跡形もなく消えてしまった。けれど、これで本当に一息つくことが出来る。

 終わってみれば圧倒的だったな。

 さっきの必殺技、アストラなんだっけ。魔法少女さんの攻撃でビクともしていなかった怪物を一撃で倒せるなんて、凄まじい威力だ。


「ふぅ、まさかサイゼールがここにいるとは思わなかったね」


 サイゼール?

 ああ、あの魔族の名前か。


 なんであいつの名前を知ってるんだ?

 魔法少女さんがあいつと会ったのは、今日が初めてじゃないのか。いや、けどあいつは初めて会ったような口調だったような。


 普通に考えて、俺らから離れた時にあいつが名乗ったんだろう。


 いつの間にか魔法少女さんが目の前まで来ていた。考えてる場合じゃないな。


「今日は本当に助かりました」


 小さい体を折り曲げてお辞儀をする。あの銀髪の魔族に襲われて、俺は本当に死を覚悟した。もしも魔法少女さんが助けに来てくれていなかったら、確実に死んでいただろう。

 お礼を言うぐらいじゃ足りないぐらいだ。


「気にしないで、助けられて良かったよ」


 天使か?

 彼女がいなかったら死んでたわけだし、天使と言っても過言ではないかもしれない。頭撫でてくれたし。


「さて、と」


 うおっ。

 近づいてきていた彼女が俺のことを持ち上げて、またもや胸に抱いてくれた。


 え、いいんですか?

 じゃなくて、どうして?


「やっぱりもふもふ」


 ぎゅーっと強く抱きしめられる。ここが天国か……?

 ふんわりと香る花のような甘い匂いと、柔らかな感触に包まれている。全身の力が自然と抜けてしまう。


 出会った時から、よく抱きしめてくれると思っていたが、もふもふが好きなのか。犬とか猫を抱きしめたくなるのと同じ感じかね。


 ……羊になってよかった。


「これから、どうする?」


「これから?」


「うん、もしよかったら私たちと一緒に来ない?」


 え、魔法少女さんと一緒に?

 このピンク猫と同じように魔法少女さんと一緒にいるってことか?

 まだ、人間に戻れるかわからない俺には願ってもない申し出だが。


「えーっと」


「それは無理ぷち」


 は?

 魔法少女さんの提案に俺が答えようとしていると何故か、ピンク猫が答える。


「どういうこと?」


 魔法少女さんも驚いて聞き返している。そりゃそうだろう。どういうことだよピンク猫。


「僕たち妖精族は契約者を探さないといけないぷち」


「あー、そっか」


 妙に納得したような魔法少女さん。

 俺はまだよくわかってないんだが。


「契約は1対1じゃないと成立しないぷち」


 ピンク猫と既に契約しているから、俺と魔法少女さんが契約することは出来ないって言いたいのか。

 いや、そんなつもりないけど。


 こいつはまだ俺が妖精族だと思ってるからな。俺が自分の契約者を探していると思ってるんだろう。


「け、けど、契約者が見つかるまで一緒にいるのはいいぷちよ?」


 照れたようにピンク猫が付け足す。猫のツンデレとか求めてないんですけど。


 仮に俺がずっと妖精のままだったら、いつ何時あいつに襲われるかわからない。場合によっては、契約者ってのも探さないといけないだろう。

 あいつらに世界を滅ぼさせるわけにはいかないからな。


 そう考えると、契約者が見つかるまで身を守ってもらえるし、かなり有難い。

 一緒に着いて行ったら妖精族のことや、魔法少女について色々と聞くことも出来るだろう。

 ただ、俺は妖精族じゃないからな。

 

 さて、どうするか。


☆


side 魔法少女


「行っちゃったね」


「多分恥ずかしがり屋なのぷち」


 不思議な妖精だった。

 羊の妖精なんて物語に出てきた覚えがないし、変な語尾もなかったんだよね。


「ふふ、そうかもね、一先ず助けられてよかったよ」


「ぷちぷち」


 ぷちちゃんも頷いている。

 もしも私がここに来るのがもう少し遅れていたら、あの羊くんはここで人知れず死んでいただろう。

 助けたことに後悔はない。


「けど、シナリオは変わっちゃったな」


 本来、私とサイゼールはまだ出会っていないはずだった。


「シナリオぷち?」


「ううん、なんでもないよ。行こうか」


「ぷち!」


 ふわふわと浮遊して私の手のひらに乗る。


「あの子1人で大丈夫なのかな」


 心配だ。

 現に、ついさっきまで殺されかけてたんだから。やっぱり無理やりにでも一緒に連れてきて保護した方が良かったんじゃないかな。


 あんなにモフモフな子がいなくなっちゃうなんて絶対に許されない。


「きっと大丈夫ぷち」


 楽観的だなぁ。


「そうだといいけど」


 今日はあの子を助けることが出来て、シナリオの強制力がないことが分かった。これは、私にとって大きな発見だ。


「それじゃわたちは少し眠るぷち」


「うん」


 そういうと、ぷちちゃんは私のネックレスの宝石に入ってしまった。


 殆ど無限の魔力を持っていると言っていい妖精族だけど、魔力を使い過ぎるとこうやってネックレスの中に入って休息モードに入るんだ。

 どうやら、こうすると魔力の回復が早まるとか。

 

 ネックレスの宝石に入れることが出来るから便利でいい。

 学校に行くときとかは、魔力を消費したわけでもなくネックレスの中に入ってもらってる。

 知らない人にプチちゃんの姿を見られるわけにはいかないからね。


「あ、魔法少女から戻らないと」


 ステッキや衣装がキラキラと消えていき、普段の学校の制服へと変わった。

 魔族の活動が本格化して忙しくなるのはこれからなんだから頑張ろう。早く私以外の魔法少女と仲間にならないとね。

 幸い、3人は同じ学校にいるんだから。

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