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86話 神の間

「どうしたんだ?」


 アルセラが僕に向かって聞いて来る。


「今、この街を突破出来るかもしれない話を聞いたんだ」

「何? それは本当か?」

「うん。それは……」


 今、僕がクラーケンから聞いた事を皆に伝える。


「信用……していいのだろうな?」

「多分大丈夫だと思う。それに、ここでこうしていても(らち)が開かないから」

「それもそうだな。やってみるか」

「うん。行くよ。【異次元の交錯(アナザーフィールド)】」


 僕らの周囲が少しだけぶれたかと思うと、今までの空間とは明らかに違う。

 何が違うのかと言われると、明言はしにくいけれど、違っていることは確実だった。


「これは……?」


 皆も何が起きたのか分かっておらず、首をかしげている。


「とりあえず、このスキルを使えば問題はないみたい。一度進んでみて、問題があったら引き返そう」

「そうね。これ以上待っていても何も進まないもの」


 そうして、僕たちは進むことになった。



 暫く警戒しながら歩いて行くけれど、特に問題はない。

 道にいる人々の動きが止まっている事がおかしいくらいか。


「このままディオス・エフィーメラまで入っちゃうのがいいのかな?」

「多分そうだと思うわ。あそこは様々な儀式も行なわれている。その為に使われるものも幾らでもあるから」

「分かった」


 僕たちはそれから歩き続け、教会の騎士が守っている門も難なく突破する。

 彼らもじっと前を向いて立っていたけれど、時が止まっているので呼び止められることはない。


「本当に……どうしてここまで大規模なことになっているんだろう……」

「分からないわ……。でも、ここまでやるっていうことは、きっと何か大きな事をしようとしているに違いないと思う。そうでなければ納得出来ないもの」

「そうだよね……」


 それから僕たちはディオス・エフィーメラの中に入り、レイラの案内について行く。


「まずは……神の間。っていう所に行くようにしましょうか。過去に神が降臨したことがあると言われている場所。そして、枢機卿以上の位がなければ入れない場所よ」

「そんな場所に入っちゃっていいの?」

「誰も見てないんだもの。いいでしょ? それに、これだけの事が起きているなら緊急事態で問題ないわよ」


 レイラが簡単に言い、僕たちは周囲に目を奪われながら歩く。


 通路には等間隔で美術品や絵画が置かれていて、そこに描かれているのは神に関係する人々だ。

 過去の教皇であったり、聖人としてあがめられる人達という訳だ。


 美術品もこれでもかと置かれていて、所々では色とりどりのステンドグラスがはめ込まれている。


 それらを見ているだけで1日どころか何日も過ごせそうだ。


 僕はそれらの物に目を奪われていると、レイラが吐き捨てるように言って来る。


「豪華でしょ? 人々を救うべき教会が、これだけの財を溜め込み、権威を見せる象徴として使う。あたしも聖女に正式になったらここで飼い殺しかもしれないわ」

「……」

「と、ここからが神の間ね」


 レイラに案内された場所は神々しく部屋の全てが白と金色で彩られた部屋だった。

 天井ははるか高く、横幅も奥行きも桁違いに大きい。

 そんな部屋の天井や壁に、所狭しと絵が描かれている。


 僕は思わずそれらに目を奪われた。

 これが神が降臨する場所かと。

 納得出来るほど圧倒的な威圧感が存在していた。


「さ、こっちよ」


 しかし、レイラはこんな場所に用はないとばかりに先に進む。


「ここじゃないの?」

「……ここは何も知らない人に見せて信じさせるような場所よ。本来の場所はこっち」


 そう言ってスタスタと歩いていく。

 彼女が向かう先は、壁画が描かれている場所の中で、柱等に隠れるように存在していた洞窟だ。


「こっちよ。ここの奥に、それぞれ9柱の降臨される場所があるの」

「洞窟に……?」

「ええ、教皇はこことそこが繋がっているから、ここも神の間と呼んでいいんだ。とか言っていたけれど……。ほんと。自分勝手な奴らよね」

「……」


 洞窟の中は薄暗く、明かりも神の間から入ってくる物でしか見ることが出来ない。

 洞窟の中は水がどこかにあるのか、なんだかじめじめしている。

 道幅もかなり狭く、人1人が通れるくらい。


 体も鎧も大きいオリヴィアはかなり四苦八苦しながら進んでいた。


 暫く進むと、少し開けた場所に出る。

 20m四方の、かなり広い場所だ。

 壁際には松明が等間隔で灯っていて、広さをこれでもかと表していた。

 壁には9本の他の道へ続く穴が開いている。


 そんな場所の中央に1人の女性が立っていた。


「お待ちしていました。まさか貴方の様な方がおられるとは想像もしていませんでした」


 彼女は茶色の髪を3つ編みにし、1つにまとめて前に垂らしている。

 メガネの奥に見える瞳はじっと僕らを測るように見つめていた。


「貴方は……?」


 僕が出した疑問に、答えてくれたのは彼女ではなく、アルセラだった。


「メア様!?」

「あら、アルセラ。貴方はそちら側についたのですね?」

「……」


 アルセラは信じられないような目でメアと呼んだ女性を見つめている。

 そして、苦悩を顔に滲ませて、彼女に言葉をかけた。


「メア様……ここで……何をやっておられるのですか?」

「何……とは? 神の降臨までここを守っている。それ以外にあると思いますか?」

「!?」


 アルセラは彼女が何も事情を知らないことに賭けたかったらしい。

 けれど、メアはそんなのは知ったことかと言うように言う。


「さて、それでは全員でかかって来て下さってもいいですよ?」


 僕はさっさと彼女を倒そうと前に出ようとした所で、フェリスとオリヴィアに止められる。


「2人とも?」

「ここはわたくし達に任せて頂けませんか?」

「わたしも近衛騎士団長として彼女とは是非とも戦ってみたいなぁ。という訳で、ここは任せて先に行くといい」

「でも」

「サナが器に使われているかも知れないんです。いいから行ってください」

「……分かった」


 フェリスにそう言われてしまったら僕は行かざるをえない。


「あらあら、行かせると思って居まして?」

「!?」


 メアはそう言うと、彼女から強烈な圧力が叩きつけられた。


「さぁ、私を倒すまではここから行くことは叶いません。付き合って頂きますよ?」

「【投擲(スローイング)】」


 ジェレが何かをスキルを使って投げる。


「私には効きませんよ」


 メアがそう言って軽く手を振るうと、強烈な風が投げられた物に叩きつけられ、吹き飛ぶかに見えた。


「甘い」


 しかし、ジェレに投げられた物は風の影響等受けていないかのようにそのまま飛んでいき、メアの前で炸裂した。


 ピカ!


「きゃああ!?」

「今の内に行く」


 メアの前で炸裂した何かは強烈な光を放ち、メアだけでなく僕たちの目も焼く。

 ただし、メアは至近距離で食らったためか、未だに目を抑えている。


 僕たちは彼女から少し離れるようにして、先へ回り込むのと同時に、フェリスとオリヴィアがメアへと襲い掛かる。


 彼女たちが時間を稼いでくれている間に、僕たちはレイラの目指す穴に向かって進む。


 その穴は少し入っただけで今までとは全く違う感覚に囚われた。

 先は奥に行くにつれて息が詰まるような雰囲気になり、いるだけで気持ち悪くなる。


 しかし、止まる訳にもいかない。

 少し歩いていると、広い場所が見えて来る。


「次の場所が闇の神の祭壇よ。気を付けてね」

「うん」


 レイラの言葉を聞いて、少し進む。

 そこには、司祭の服を着た優しそうな表情をした男性がこちらを見て微笑んでいた。

「面白かった!」


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