61話 VSリャーチェ②
リャーチェは僕を睨みつけながら呪術を放つ。
「『赤黄砂嵐』!」
僕の周囲で砂嵐が吹き荒れ、視界が一気に悪くなる。
その威力は彼女がさっき放ったものよりも別次元といえるほどの威力で、普通の人間であったなら数秒で切り刻まれて息絶える程。
しかも、視界がひどく悪くて、周囲は木々が生い茂っていたのにそれを見ることすら叶わない。
「【次元の門】」
僕はすぐ目の前にゲートを作り、その場から脱出した。
「ここも……」
先ほどの事を考えて、少し離れた位置にゲートを作ったのだけれど、そこにもまた砂嵐が吹き荒れていた。
「く……【自己再生】」
クラーケンの回復力を持ってすればこの程度は直ぐに回復する。
けれど、その間にリャーチェが何をしているかわからない。
急いでここを出て彼女を捕捉しなければ。
「【次元の門】」
僕はもう一度外に出るようにゲートを繋ぎ、一度目の空地よりも遠い場所にゲートを繋げた。
確実に砂嵐から出る積もりだったけれど、そこもまた砂嵐が吹き荒れている。
直ぐ近くには森の木々がそびえ立っているけれど、砂嵐のせいで既にボロボロになっていた。
彼女は、こんな広範囲に砂嵐を巻き起こして一体何をするつもりなのだろうか。
「……」
ドス。
「!? 【触手強化】!」
僕は背中から何かに刺され、それを振り払うように触手を振るう。
けれど、それは僕が気付いた瞬間に後ろに飛び去っていく。
その姿はリャーチェの様に見えた。
攻撃された部分はクラーケン化していたのでそこまで問題は無かったのが幸いだ。
でも、
「まさか、この中でも問題なく動けるっていうのか?」
それならば不味い。
純粋に不味い。
こちらは視界が悪く、しかも振動で察知したくともこの砂嵐だ。
触覚なんて物は使い物にならない。
それなのに、相手からは僕が丸見え……だとしたら、正直ヤバすぎる。
どうしたらいい?
このまま待ってカウンターをするか?
いや、相手は僕の事が分かるのだと思う。
出なければあんなにぴったりと攻撃をすることなんて出来ないだろう。
……本当にそうだろうか。
一度試してみる価値はある。
「【次元の門】」
僕はもう一度ゲートを生み出し、すぐさまそれに入っていく。
進む方向は先ほどと同じ前方だ。
「ここも……」
そして、またしても森の中なのに砂嵐が吹き荒れている。
一体どれだけの魔力を注いだんだろうか。
この森全体をカバーしているのかもしれない。
そう思っていると、またしても死角から攻撃が飛んでくる。
「っ!」
ブン!
今度の攻撃はなんとか避ける事が出来た。
でも、あまりこれを続ける事は得策ではない。
ただただ削られて行くだけになってしまう。
ではどうするか?
一度徹底的に離れるのだ。
「【次元の門】」
僕は今いる位置から上空100mの位置にゲートを作り、そこに飛び込む。
「!」
僕はそこから下を見て、驚く事になる。
森全域を囲っていると思っていた『赤黄砂嵐』は、僕が移動して来た場所だけを囲っている様だった。
まるで、僕が転移する位置が分かっているかのようだ。
「これは……本当にバレている?」
一度それを確かめるべきかもしれない。
そう思い、僕は出来るだけ近くにゲートを作り、潜る。
「【次元の門】」
ゴオオオオオオ!!!
そこをくぐり抜けるとやはり砂嵐が巻き起こっている。
これで確実になった。
リャーチェは僕がどこに転移出来るかを把握しているらしい。
そして、それが出来るということは……。
「【水流切断】!」
僕は背後から迫ってきているであろうリャーチェに向かってスキルを放つ。
シュパっ!
「!? もう気付いたかい!?」
「逃がさない!」
「遅いよ」
スキルも躱され、そしてそのまま陰の中に入り込むように隠れられてしまった。
ただ、その際に彼女がゴーグルの様な物で目を隠しているのを見る。
こうなってしまってはこちらから手出しする方法はない。
でも、このままでは勝つことも出来ない。
多少のダメージを覚悟しなければ、きっと彼女を捕まえる事は出来ない。
だから、僕は次の手を打つ。
「【次元の門】」
もう一度ゲートを作り、少し離れた先の部分に移動する。
そして、そこに出るなり僕はスキルを使う。
「【闇の牢獄】」
僕は周囲4方の地面に黒い棺を作る。
それもかなり長細い物で、僕の触手を入れるのにぴったりだ。
僕は急いで自分の触手を伸ばして入れ、時を待つ。
「ぐふっ!」
リャーチェは僕に向かって背後から奇襲を繰り出してくる。
ただ僕は今回は反撃するつもりはなく、完全に受けに回っていた。
その為、彼女の持つロッドでのどが切り裂かれる。
でも、そのお陰で彼女がこれまでにないほどに近づいてくれた。
「解除」
「!?」
僕は【闇の牢獄】を解除して、彼女に一番近い触手で彼女を決して離さないように掴む。
そして、逃げられない様にまずは足でも……。
「『銀の境界』」
彼女が詠唱を唱えた瞬間、砂嵐が唐突に止み、僕の触手が千切れ飛んだ。
「な!」
「惜しかったね」
罠を張ったつもりが誘われていたのだろうか。
彼女は僕の触手から自由になると、そのまま右手に持っているロッドを僕に向けてくる。
触手が千切れたばかりで彼女には……。
「【墨吐き】!」
僕はのどから血が溢れ出るのを何とか抑え、今最も早く使う事の出来るスキルを彼女に向かって放つ。
「『金銀顕現』!?」
彼女の目に……いや、ゴーグルに墨を吐き掛け、そして、僕はすぐ横に飛ぶ。
次の瞬間に僕がいた場所を金銀色の綺麗な光が天を貫いた。
僕はリャーチェに向かって突撃する。
彼女が何かする前に決着をつけなければならない。
「【触手強化】」
「くっ! 『黄』 がはっ!」
彼女がゴーグルを脱ぎ、僕に向かって呪術を使う前に彼女の腹に強化した触手を叩きつける。
メキメキミシ!!!
彼女の腹の骨が粉々に砕ける音がして吹き飛んだ。
「【自己再生】」
僕は自身の体を再生させながら彼女に追撃を仕掛ける。
彼女の魔力が一体どれだけあるのかわからない。
もしも、さっきの金と銀の閃光を食らっていたらどうなるか。
その後をチラリとと見たけれど、地面の土が最初から存在していなかったように消え去ってしまっていたのだ。
地面をバウンドし、地面に寝転がるリャーチェ。
ただ、今回は彼女は起き上がって来ようとはしない。
でも、僕は油断しない。
戦いの場では油断した方がから負けるのだから。
彼女に向かって触手を振り下ろそうとし……。
「待ちな」
ピタ。
僕は、彼女に振り下ろそうとしていた触手を止めてしまった。
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