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6話 ウェーレ

 クトーお兄ちゃんがわたしの為に助けに来てくれた。


 執事の人を殴り倒して、顔から汗をダラダラと流しながらももう1人も倒してくれた。


 クトーお兄ちゃんは凄い。

 顔色も悪くてすごく辛そうなのに、わたしを心配させないように笑顔をわたしに向けてくれる。


 ウィリアムお兄ちゃんと同じくらいにすごくて……かっこいい。


 待っていると、真っ白な髪と髭のおじいちゃんが入ってくる。

 その人はわたしを見るなり近付いて来た。

 ちょっと怖い。


 でも、直ぐに手と足を動かせなくしているのを壊してくれた。

 久しぶりに動けるようになって嬉しい。


「あ……ありがとう……ございます」


 わたしはお礼を言った。

 けれど、おじいちゃんは苦そうな顔をするだけだった。

 その目の先には、わたしよりも先にここにいたお姉ちゃん達がいる。


「あ、お姉ちゃん達を助けてあげて! 毎日ひどいことをされていたの!」


 ここ数日は何もされていなかったけれど、とっても偉そうなグレーデン様って呼ばれている金髪の人にひどいことをされていた。


 お姉ちゃんたちが泣いても、叫んでも、笑ってひどいことをしていた。

 その内わたしにもひどいことをしてやるって、彼は笑っていた。


 死にたいと思った。

 でも、お兄ちゃんが助けに来てくれると思って出来なかった。


 助けに来てくれたのはクトーお兄ちゃんだったけど、ウィリアムお兄ちゃんもきっと力になってくれたと思う。


「ウェーレ。少し……その……話をしてもいいかな」

「? 何? クトーお兄ちゃん?」


 かっこいいクトーお兄ちゃんがすごく……すごく辛そうな顔でわたしに向かって話す。

 それは、聞いていられない物だった。


******


「うそうそうそうそうそうそ! そんなのうそだよ! 何で! なんでお兄ちゃんが、ウィリアムお兄ちゃんがそんなこと……うそ!」


 僕がウェーレにウィリアムのことを伝えると、首を何度も振って、目からは涙が(あふ)れていた。


「うそじゃない……。僕の背中で……ウィリアムは……」

「どうして……? どうしてそんなこと言うの? ねぇ。クトーお兄ちゃんが一緒にいてくれたんなら……どうして……どうして……!」

「ごめん……」


 謝ることしか出来なかった。

 泣き叫ぶウェーレの声を僕はただただ受け止める。


 僕に力がなかったから、僕が弱かったからウィリアムは死に、彼を慕っていたウェーレは泣き叫ぶ。


 力なく僕に(すが)りついてくるウェーレに、学園長が声をかける。


「ウェーレ。クトーもまたウィリアムの死を悲しんでいる。お前の兄の、友人だったのじゃから……」

「……でも……でも……」

「ウェーレ」

「学園長……いいんです。僕が……僕の力が弱かったばっかりに、ウィリアムは死にました。それは紛れもない事実で……。ウェーレは僕を責める権利があります。だから、今はこのままでいいんです」

「じゃがの……」

「彼女は僕が責任を持って家族の元に返します。だから、学園長はグレーデンのやつを……絶対に逃がさないようにお願いします」


 僕が責められるのはいい。

 ウェーレは10歳。

 そんな彼女が受け止められないことを、僕が受け止めるくらいのことはしよう。


 でも、グレーデンの奴だけは絶対に許さない。

 ウィリアムを殺し、ウェーレにこんな事をさせて、更にサナにまで手を出そうとしているあのクソ野郎。


「分かった……それでは先に失礼する」


 学園長はそれだけ残すと、直ぐに上に行く。

 その途中ではきはきとこれからのことを指示する声が聞こえた。


 僕はそれから、ウェーレが泣きつかれるまで出し切って倒れるように眠るまで彼女の側で話を聞いていた。




「すぅ……すぅ……」


 僕は泣きつかれて眠ったウェーレを抱えて部屋を出る。

 その時には一緒にいた他の2人の女生徒はなく、僕たちの護衛か騎士が2人いるだけだった。


「僕は部屋に帰ります」

「お供いたします」


 僕はウェーレを抱えて、自分の部屋に戻る。

 部屋は個室のため同居人はいない。

 狭い部屋だけれど、落ち着ける場所だ。


「我々はここに」

「はい。よろしくお願いします」


 騎士の2人はここで守ってくれるらしい。助かる。

 襲われることを気にせずに休めるのだから、学園長の気遣いには助けられた。


 僕は部屋に入り、ウェーレを僕のベットに横たえて考える。


 僕はどうしたら良かったのだろうか。

 僕の望みはサナ。僕の大事な大事なサナの不治の病を治療する。

 それが僕の望みであり、彼女が僕の全てだと思っていた。


 けれど、いざ友人のウィリアムが死に、妹であるウェーレにあんな感情をぶつけられると、このままでは良くないかもしれない。

 そう思ったのだ。


 【タコ化】のスキルだってそうだ。

 タコ野郎とバカにされるけれど、それだけだった。

 だから回復に使えない無意味な物と割り切っていたけれど、今回の事があると今のままでいいようには思えない。


 それに、もし……もしもサナが……今回の様に……。

 ウィリアムと逆の立場だったなら……。

 自分はどうしていたのだろうかと。


 サナを人質に取られ、言うことを聞くしかない状態にされていたら……。


「このままじゃいけない」


 僕は……僕はサナの病を治すだけじゃいけない。

 サナに幸せになって欲しいんだ。

 そのためには力がいる……。


 クラーケンの力は強力だ。

 使いこなせれば……という但し書きがつくけれど。

 それでも、これからのことを考えると扱えるようになるべきだ。

 僕のためにも、サナのためにも。


 僕はウェーレの寝顔を見ながら、今後のことを考える。


「まずはグレーデンの奴を何とかする。学園長がやってくれると思うけれど、他に何か手を出して来るかもしれない。それが終わったら……僕は僕の【タコ化】スキルの訓練。それと平行して、サナの治療をする為の勉強だ」


 休んでいる暇はない。

 でも、今日は……。


「流石に……疲れた……」


 僕は、ウェーレの隣で眠りについた。


「面白かった!」


「続きが気になる、もっと読みたい!」


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