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51話 狙われている

 サナがリャーチェと出会った日の夜。


 フルスタ……〈守護獣の兜(ガーディアンヘルム)〉の神官はカスクの部屋にいた。


 カスクは気持ちよさそうに眠りについている。


 フルスタはそんな彼の様子を気にした風もなく、1人ゆっくりと窓際に近付く。

 彼女は両手で何か小さな物を大事そうに持ち、それを窓から解き放つ。


「あの方の元へ……」


 彼女の手から飛び立った物は真っ黒い鳥だ。

 それは数度羽ばたくと、闇夜の空に溶けていく。


「どうか……届きますように……」


 彼女はそう祈りを込めて、カスクの眠るベッドに戻る。


******


 そこは学園長室。


 学園長はいつもの様に1人で仕事をしていると、音もなく1人の人物が現れる。


 コツ


 彼女は学園長に気付かれる様にわざと音を立てた。


「ジェレか」

「話がある」

「なんじゃね?」


 彼女はジェレ。

 クトーに願われる形でサナの護衛についている元Aランク冒険者。


「〈守護獣の兜(ガーディアンヘルム)〉は危険。今すぐに追い出すべき」


 学園長は驚いた顔でジェレの真っ白な仮面を見つめる。


 ジェレはいつも淡々と依頼をこなしていた。

 今回のように、自分から危険を訴えて来るようなこと等無かったのだ。


「どうしてじゃ?」

「今日、サナの護衛をしている時に感じた圧力は私では抑えきれない。何か起きる前に対処するべき」

「そんなことするはずがなかろう? 彼らはAランク冒険者パーティ。そこに至るまでには膨大(ぼうだい)な時間をかけて信頼を積み重ねなければならない。彼らは王城にも出入りする事が出来る程には信頼されておる。それを捨てるような事はせんと思うが?」

「不安」

「それでも……か」


 ジェレがそんなのは関係ないとばかりに提案し、学園長は頭を抱える。


 彼女は嘘をついた事などないし、かと言って、〈守護獣の兜(ガーディアンヘルム)〉メンバーを今まで何回もこの学園に入れて来た。

 だから彼らが敵に回るとも考えにくい。


 暫く悩み、彼は決断する。


「それでは、ジェレ、貴様に精鋭部隊の指揮権を預ける。それで良いか?」

「追い出す」

「それは出来ん。既に明後日には1年生を連れて森に出掛ける事が決まっておる」

「……反対」

「決まったことじゃ」

「……サナが狙われた」

「なんじゃと? サナ……サナとはクトーの妹か?」

「そう」

「なぜじゃ……?」

「知らない」

「……」


 学園長は考え込むが、決して答えは出なかった。

 しかし、少しは気にする事にしたらしい。


「クトーに知らせてやるが良い。それと、森へ行く時に、クトーの参加も認める。これで良いか?」

「分かった」


 そう言ってジェレは音もなく姿を消した。


「本当に……彼らが裏切ること等あるのか……?」


 学園長は考え続ける。

 何が正解かを。


 しかし、その答えが出ることは無かった。

 なので直接問うことを考える。


「明日1日……もう少し話し合ってみようかの……」


******


「そろそろ寝るか……」


 僕は1人でやるスキルの練習を終え、電気を消してベットに入り込む。


 その時、いきなり声をかけられた。


「話がある」

「うわあ!? だ、誰ですか!?」

「サナの護衛。彼女が〈守護獣の兜(ガーディアンヘルム)〉に狙われている。気をつけろ」

「〈守護獣の兜(ガーディアンヘルム)〉? フェリスが信頼しているって言っていたAランク冒険者パーティじゃないんですか……?」


 サナの護衛と言っているけれど……まぁ、学園の中であるし、攻撃をして来るような気配もない。

 多分大丈夫だろう。


 それに、サナに危険があるなら少しでも情報を集めておかなければならない。


「そう。けど危険」

「何か……あったんですか?」

「何かされそうになっていた。でも、私では分からない。だから警戒だけはしておく」

「分かりました。授業もサナの隣に居てもいいんでしょうかね?」

「次の森の探検。その時が危険。だから一緒に来る」

「分かりました。それはいつですか?」

「明後日」

「明後日……」

「以上」

「え?」


 彼女は言うべきことは言い終えたとでも言いたいのか、一瞬で姿を消してしまった。

 今のがサナの護衛……元Aランク冒険者……。という事だろうか。


 でも、そんな彼女がついていて、危険と言って来る相手……相手は……本当にAランク冒険者なのだろうか?


******


 僕は次の日に、授業をサボって禁書庫に向かっていた。


 レイラには朝食の時に説明してあるので、問題はない。


「司書さんいる?」


 僕は1人でダンジョンに入り、記憶を頼りに禁書庫に辿り着く。


 前回は試練を受けたけれど、今回はそんなことも無く歓待(かんたい)される。


「よく来たな」

「それで、どこまで分かった?」


 僕は司書について禁書庫の中に入った。


 司書はいつもの様に少し大き目の人形サイズでふわふわと浮き、調べてくれた情報を聞かせてくれる。


「実は……そこまでほとんど分かっておらんのだ。黒蛇病についてはあれ以上一切詳しい事は分かっていない。もう一方の方だが、少し分かった事があると言っても、〈黒神の祝福(ブラックブレス)〉は少なくとも500年以上前から活動している。ということくらいか」

「そんな昔から!?」


「後は最初のころのメンバーはどれも恐ろしく凄腕だったということくらいか」

「どんな風に?」

「トップは神と見まがう程の獣に変わり、全てを切り裂いた。ナンバー2は呪術を使い、あらゆる敵を呪い殺した。彼らの補佐である神官は〈黒神の祝福(ブラックブレス)〉の為に全てを捧げ、その羽で包み込んだ……。という事しか残っていない」


 その話を聞いて、僕はもしかして、〈守護獣の兜(ガーディアンヘルム)〉がその〈黒神の祝福(ブラックブレス)〉の隠れ(みの)なのではないかと思った。

 サナの護衛の話もあるし、近いのでは無かろうか。


 そこまで考えて頭を振る。

 だってこれは500年前の話だ。

 今も生き残っているはずがない。


「彼らの技術が残っているかもしれない。っていうのを考えると、〈守護獣の兜(ガーディアンヘルム)〉の人達はそれぞれあっている様に思うけど……」

「〈守護獣の兜(ガーディアンヘルム)〉?」


 司書が学園に来ていることを知らないからか聞いてくる。


「そう。今来てるんだ。それで、その人達がサナを狙っているっていうのを聞いたんだ」

「〈守護獣の兜(ガーディアンヘルム)〉……少し待つがいい」


 司書はそう言ってフヨフヨとどこかに行ってから1冊の本を持って帰ってくる。


「これによると、〈守護獣の兜(ガーディアンヘルム)〉は20年以上も前から活動しているパーティだが、これの事か?」

「え?」


 僕はそう言われて不思議な感覚を覚えた。


 司書が差し出す本には、確かに、〈守護獣の兜(ガーディアンヘルム)〉の特徴がこれでもかと書かれている。

 でも、僕はあの人達を見たけれど、そんな歳をとっている様には見えなかったのだ。


 ローブを着た人も、神官の人も。


「見た目は……すごく若かったけど……」

「何かやっているのか?」

「わかんない……でも、何か見逃しているかもしれない。〈守護獣の兜(ガーディアンヘルム)〉についての情報を集めて」

「承知した」


 僕はそれから1日を使って〈守護獣の兜(ガーディアンヘルム)〉の情報を集め続けた。


「面白かった!」


「続きが気になる、もっと読みたい!」


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