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45話 お出かけ

「サナ。それじゃあ行こうか」

「ええ、兄さん。久しぶりだから嬉しい」

「僕もだよ」


 僕は次の休日に、サナと一緒に街に出掛けていた。

 彼女の車いすを押し、最近の事を話しながら行く。


「そう言えば、私レイラさんに昨日あったの」

「レイラに?」

「そう。聖女候補の方だって聞いてびっくりしちゃった。でも、とっても優しかったし、兄さんにあんな素敵な友達がいて安心した」

「サナ……僕だって友達はいるよ」

「本当かしら?」


 サナの声色は僕の事を疑っているようで、実際、間違っていない。


「レイラさんと遊びに行ったりしないの?」

「? 授業は一緒に取るようになったけれど、遊びには行ったことないかな。僕にはサナがいるからね」

「もう……兄さんたら……」


 そんな事を話して歩いていると、前からガラの悪い連中3人が近付いてくる。


 僕たちは横にそれて避けようとしたけれど、彼らの目にはサナの美しさが止まってしまったらしい。


「おうおう。学園のかわい子ちゃんじゃねぇか。そんなひょろい小僧と遊ぶよりも俺らと遊ぼうや」

「はい?」

「車いす……いいじゃねぇか。俺達が優しく世話してやるからよ」

「あの、学園に言いつけますよ?」


 僕の事を悪く言うのはどうでもいいけれど、サナに手を出そうとするのは許せない。

 触手で何とは言わないけれど握り潰してやろうかとすら思う。


 でも、僕が手を出すまでもなかった。


「ちょっとこっちに来て下さいますか?」

「サナ?」


 サナが彼ら3人を呼んだのだ。


 3人はいやらしい顔を浮かべて近付いて来る。


「分かってんじゃねぇか。物わかりのいい子は好みだぜ?」

「……」

「サナ?」

「ここは任せて、兄さん」

「……」


 僕はサナの言葉に背筋がゾクリとした。

 彼女が物凄く怒っている様に感じたのだ。


 3人が近付いて来て、サナに手を伸ばす。

 すると、


「『闇の拘束(ダークバインド)』」

「!?」


 サナは魔法を詠唱し、一瞬で3人を黒い(いばら)で拘束する。


「『闇の礫(ダークバレット)』」

「ふぐぅ!」


 それから更に魔法を詠唱して、彼ら3人に黒い(つぶて)をこれでもかとぶつける。


 彼らは慌てて逃げようとするけれど、(いばら)に拘束されていて動くことが出来ない。


「貴方達……兄さんの悪口……聞き逃しませんよ?」


 サナは自分で車いすを動かし、3人に近付いていく。


「ま、待て! わかった! 悪かった! 謝る。謝るから!」

「はぁ!」


 ズドン!


 そう音が聞こえるほどにサナが彼らの腹に拳を叩き込んでいく。


 ドサリ


 3人とも地面に転がり、ピクピクと痙攣(けいれん)していた。


 サナはそんな3人を見下ろして、僕の元に帰ってくる。


「兄さん。行きましょう? 邪魔な奴らはこれで居なくなったから」

「う……うん。行こうか」


 僕は彼女の車いすを押しながら、やっとの事で口を開く。


「サナ……もう戦ったらダメだからね? サナのスキルは戦闘向きじゃないんだから……」

「兄さんの悪口を言われたのよ? 黙って聞いてる事なんて出来ないわ」

「それは嬉しいけど……」

「なら、兄さんは私の悪口が言われていたら同じようにするの?」

「全身バラバラにしてやるよ。当然でしょ?」

「でしょ? 私も同じ気持ちよ。あれだけで許してあげたんだから優しい方よ」

「だけどさ……」

「まぁ……確かに【器】とかいうよくわからないスキルだから戦闘用じゃないわよ? でも、戦えない訳じゃないから。だから、そんなに心配しないで。私は……大丈夫だから」

「サナ……」


 サナはサナで僕に心配をかけないようにしようとしてくれているのだろう。

 ああ、なんて出来た妹なんだろうか。


 本当に彼女以上に素晴らしい女性なんていない。


「それにね。兄さん」


 サナが前を向いたまま小さく言う。


「もう……もう二度といなくならないでね。私……耐えられないわ。グレーデンみたいなこと……もう嫌よ」

「サナ……」


 そうか。

 彼女は前の時、グレーデン達に言われた時に無視していたのが心に残っているかも知れない。

 本当に……自慢の優しい妹だ。


 そう思って街を進んでいると、知り合いの3人と出会う。


「あら、偶然ですわね。サナ、クトー様」


 僕たちの前には、フェリス、アルセラ、アルセラの後ろに隠れたレイラがいた。

 レイラは何故か今更の様に体を隠している。

 どうしたのかな。


「いや、さっきから待って……ふぐ!」

「何を言っているんですか、偶然ですね?」


 今何かフェリスの肘が綺麗にアルセラの腹に入った様な気がするけれど……。

 問い詰めると大変そうだから気にしないようにしよう。


「偶然だね。どうしたの?」

「いえ……わたくし、少し困っている事がありまして」

「何かあった?」


 呪いの関連だったりするのだろうか?

 正直、心配になる。


「それがわたくし、友人と一緒に街で遊んでみたいと思っていたのですが、そのお相手が兄に誘われるから……と、兄とばかり遊んでいまして……たまにはわたくしとも遊んで欲しいな……と思ったのです」

「その兄は……かなり酷い人だね。妹を独占したい気持ちは分かるけれど、それは妹とその友達が可哀そうだよ」

「クトー様もそう思いますか?」

「うん。そう思う」

「ということでサナ。今から一緒に遊びませんか?」

「え?」

「え?」


 僕とサナは揃ってフェリスの顔を見つめる。


「あら、さっきの話……クトー様達の事でもあると思いませんでしたか?」

「それは……」


 全く思っていなかった。

 でも、そうやって言われると、確かにそうだと思う。

 というか、心当たりしかない。


 でも……僕はサナと一緒に遊びに行きたい。

 きっと、サナもそう思っているはずだ。


 そう思っていると、サナから衝撃の一言が飛び出す。


「兄さん。私、フェリスと一緒に遊びに行きたい」

「サ、サナ!?」


 驚いてサナを見ると、彼女の視線は何故かレイラに向いていた。


「いいでしょ? 兄さん」

「で、でも……誰かに襲われるかもしれないし……」

「さっきの私の戦いを見たでしょ? 私も強いんだから問題ないわ」

「それに、アルセラ様がわたくしの護衛もしてくれるそうですので」


 フェリスがそう言って来ると、アルセラが首を傾げる。


「そんなことは言っ……はぐ!」


 またしてもフェリスの肘が的確にアルセラの同じ部分を打ち抜いた気がする。

 気にしてはダメな様な気がした。


「という訳でして、わたくし達で行きたいと思うのですが、いいでしょうか?」

「いいけど……それなら、レイラも一緒に行くの?」


 折角の休日……カモフラージュも兼ねて遊びに行くつもりだったけれど、1人になってしまうのか。


「いえいえ、わたくしはサナと一緒に遊んで、アルセラがわたくしの護衛をしてくださるのです。レイラ様の護衛はクトー様にお願いしたいと思います」

「え? 僕が?」

「ご不満でしょうか?」


 フェリスが悲しそうな顔をすると、すかさずサナが声をあげる。


「兄さん? また私の友達を悲しませるつもり?」

「そんなつもりはないけど……」


 ないけれど、僕がレイラの護衛でいいのだろうか。


 そして、やっとレイラから声が聞こえる。


「こ、今回だけ特別よ」

「そう? それなら……わかった。僕でいいならやらせてもらうよ」


 僕がそう言ってからの2人……フェリス、サナの行動は物凄く早かった。


 フェリスはアルセラの手を握り、そそくさと早足で僕らが来た道を進み、サナもその速度について行くようにして、車いすを()いでいる。


「それじゃあ今日はわたくし達はこのまま遊んでから帰りますから! ちゃんとレイラ様を送って下さいね!」

「兄さん! しっかりしてね! 後! 2人の時に私の話題は禁止よ!」

「レイラ様! いつでも呼んでくださればいき……がふ!」


 そしてそのまま3人はどこかへ消え、残されたのは、見たこともないレイラだった。

「面白かった!」


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