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41話 禁書庫

「禁書庫……それはどこにあるの?」


 レイラがその事をフェリスに尋ねる。


「それは……。口では説明出来ません。ついて来て下さいますか?」

「危険な場所ではないのね?」

「保証出来ません」

「そんな場所に連れて行くと?」

「それほどに重要な場所だと聞いています」

「……」


 レイラはどうするのかと目で僕に問いかけて来る。


「勿論行くよ。それに、死ぬような危険はないんでしょ?」


 禁書庫と言っても流石に学園の中だろうし、そうそう死ぬような場所があるとは思えない。


「保証しかねます……」

「え? 学園の中にそんな場所があるの?」

「入る手前までは問題ないのですが、入ろうとすると門番が立ちはだかり、門番が出す試練をクリアしないと入れない……と」

「その試練が死ぬ可能性があるってこと?」

「そう聞いています」

「だったらそこまでは行けるのかな」

「はい。今すぐにご案内出来ます」

「いいかな?」


 僕はレイラを見ると、仕方ないと言うように頷いている。


「ただし、扉の前までよ。死ぬ可能性があるのよね?」


 レイラはフェリスを見る。


「はい。ですが、一応この情報を教えてくれた兄……が戦闘の試練を選んでそれなりの強さがあれば突破出来るだろう……と。それに、これが一番簡単……ということを聞きました。なので、クトー様が強いのであれば問題ないかと……」


 フェリスはうかがうように僕を見てくる。

 でも、少し前にBランクの魔物も倒すことが出来たし、いいのではないかと思う。


「僕に任せて。サナを治療するには絶対にやらないといけない事だからさ。頑張るよ」

「危険なんでしょ? 本当にいいの?」

「うん。僕はサナを救うって決めたから。だから、止まる訳にはいかないんだ」

「まぁ……いいけど……でも、そうね。あたしもついて行くわ。貴方1人じゃ心配だからね」

「いいの?」

「ええ、いいでしょ?」

「勿論だよ。ありがとう。レイラ」


 僕は彼女に向かってお礼を言う。


「いいのよ。さ、案内して頂戴」


 レイラはそっけなく言うと、顔をちょっと赤らめながらフェリスに案内を要求する。


 フェリスは少し難しそうな顔をして話す。


「一緒に来て頂いて問題はないのですが、禁書庫に入る為の試練は1人でしか受ける事が出来ません。よろしいですか?」

「それじゃああたし達が行くのは意味がないって言うこと?」

「いえ、そんな事はありません。もしも失敗して……戻って来られた時に、回復をして頂けるのであれば問題はないでしょうから」

「なら一緒に行きましょう」

「レイラ様がそれでよろしいのなら。こちらです」


 そう言ってフェリスは僕たちを案内してくれる。

 後ろからは護衛の子達がついて来そうになったけれど、フェリスが全員は断った。


「申し訳ありませんが、護衛の方は1人まででお願い出来ないでしょうか?」

「どうしてだ?」


 アルセラが納得出来ないのかけげんな目でフェリスを見る。


「多くの人に知られたくはないのです。ですので……」

「しかし、私達はレイラ様を守るために……」

「いいのよアルセラ。それだけ重要な場所……。っていうか、そんな場所をあたし達に教えて言い訳?」


 今更だけれど、レイラがフェリスに問う。


 彼女は、考えながら話す。


「それは……いいかと。聖女様であれば、いずれ知ることになるでしょうし、クトー様も問題ないかと、わたくしも……サナを救えるのであれば救いたい。こんな……呪われた両手を持つわたくしでも構わないと言って下さった彼女を」

「ふーん。そう。ならいいわ。アルセラ、他の子は帰しておきなさい」

「しかし……」

「アルセラ」

「……畏まりました」


 アルセラは他の子達に指示をして、帰らせる。

 彼女が言えば他の子達も指示に従うらしい。


「ではこちらです」


 フェリスに案内されて、僕たちはそのまま外に出た。


「外なの?」

「はい。ダンジョンの中にあります」

「ええ? ダンジョンの中に?」

「しかも、立ち入り禁止の場所の奥に……説明するのは難しいのですが、兎に角、ついてきて下されば分かります」


 彼女に言われるままにダンジョンに入っていく。


 ダンジョンの中はあんまり好きではないのか、レイラが面倒そうな顔を浮かべて話す。


「っていうか……フェリス……どうやってここの場所の存在を知ったの? 王都では貴方は……」

「わたくしが王都を去って学園に行く。という話になった時に、兄上に教えて頂きました。もしかしたら、使うことがあるかもしれない。両手を治せる可能性がある場所の情報はそこだ……と」


 なるほど、フェリスの事を心配してくれているのか……ということを思うこともあるけれど、納得がいかない部分もある。


「それだったら王城の誰かがここに来ている……っていうことはないの? だって、フェリスって王女様でしょ? 城の誰かを使ってここに派遣とかしなかったのかなって」


 フェリスは悲しそうに答える。


「それが……ダメだったと聞いています。この学園は安全の観点から軍隊等の駐留(ちゅうりゅう)を認めていません。しかも、この学園に入るには、学園長の許可が必要です。教師として認められている方も相当に厳しい審査をクリアしないといけないのです」

「え? でもそんなに厳しかったら学生も来れないんじゃないの?」

「学生の様な若い存在であればそこまで大きな事が出来ない。そう思っているのではないかと思います」

「そうだったのか。でも、学園長なら禁書庫の存在は知っているよね? 聞いたりしなかったの?」

「そんな情報はなかった……と一蹴されたそうです」

「それは……」


 確かにあの学園長なら言いそうではあるかもしれない。

 そう思った。


 「いえ、いいのです。王城にも情報がないのに、こちらには情報がある。ということは可能性としては低いので当然です。でも、わたくしは治るなら。万が一の可能性でもクトー様にお願いしたいのです」


 彼女はそう言って僕に頭を下げるけれど、僕にとっては嬉しい事でしかない。

 なので、彼女を止める。


「こっちこそ助かるんだ。正直……黒蛇病の事を詳しく知っちゃって、それでどうしたらいいのか本当に分からなかったから……」

「そう言って頂けると幸いです。もうすぐです」


 フェリスが言う通り、立ち入り禁止の場所を何回か抜けると、少し大き目の広場に出る。


 縦横15m位だろうか。

 その奥には、小さな木製の扉が存在している。


「どこに行ったら門番が出てくるの?」

「半分ほどまで進むと出てくるそうです。なので、もし準備があれば今度ここに来ていただく事も良いかと思いますが……」

「いや、今行くよ。僕は少しでもサナの為に力になりたいからね」

「お気をつけて……」

「ちょっと!? 今日は見るだけって」

「ごめんねレイラ。僕は……今すぐにでもサナを救いたいんだ」


 僕はレイラの言葉を背に1人で前に進み、真ん中位まで到達した時、スッといつのまにか目の前に、青い騎士が存在していた。


 気が付く隙もなかった。

 まるで最初からそこにいたかの様だ。


(なんじ)、ここが何を求める場所であるか知っているのか?」


 そうくぐもった中性的な声で問われ、僕の首筋に銀色の刃が向けられていた。

「面白かった!」


「続きが気になる、もっと読みたい!」


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