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24話 サナと過去

 過去編は1話で終わって次話から展開が進みます。

 これは僕がまだ6歳だった頃、サナが元気で黒蛇病に侵されていなかった時の話。


「クトーお兄ちゃん、クトーお兄ちゃんどこ!?」


 僕は小さいころ、よく友達と一緒に遊んでいた。

 でも、引っ込み思案のサナはあんまり友達がおらず、いつも僕の後について来ていたのだ。


 僕は男友達と森の中で鬼ごっこをしたり、かくれんぼをしたり、結構派手に動き回っていた。


「お兄ちゃん待ってー!」

「サナ……家に居なよ……バレちゃうだろ?」

「大丈夫だよ。だってお兄ちゃんが助けてくれるもん!」

「もう……サナは……」


 僕はそういいながらも、サナが一緒の木に登れるように手を貸した。


「えへへ、ありがとう。大好き」

「もう……サナは……」


 こんなことがあって、仲が良かったと思われていたけれど、怒られたくないからそうしていただけだ。


 小さい頃、僕はサナがあまり好きではなかった。

 彼女は常に僕の後をついて来ていたし、そのせいで鬼に捕まったことや、見つかってしまったことは何度もあった。


 サナは笑って楽しいと言っていたけれど、僕は全然楽しくなかった。


 そんな時に、僕はあることを思いつく。

 サナに見つからないように一人で行ってしまおうと。


 僕たちが遊んでいた場所は森の少し入った場所で、ゴブリンとか、ホーンラビットみたいな魔物は一切いない安全な森で遊んでいた。


 そりゃ小さな動物はいたけれど、危険は少なかった。


 だから、サナも僕を見失ったら、直ぐに一人で家に帰るだろうと思ったのだ。


「クトーお兄ちゃん待ってー!」


 サナはいつもの様に僕の後をついてくる。


 僕は、そうやってトコトコと歩いてくるサナを隠れてやり過ごしたのだ。


 サナはドンドン奥へと入っていく。


 僕はそれを見送って、友達たちと遊んだ。


 友達にはサナの隙をついて話していたから問題なかった。


 僕は友達とサナのいない楽しい時間を過ごして、最高の日かもしれないと思った。


 友達と遊び疲れて家に帰ると、サナは帰ってきていなかった。


 日が落ちる寸前まで遊んでいたのだ。

 これからは夜が深くなり、子供が普通に過ごすには厳しいことになる。


 僕は信じられなかった。

 でも、サナがいないことは事実だった。


 村では捜索隊が編成され、サナが消えた森中を探した。

 たまたま来ていた、高名な冒険者パーティにも協力を要請して探していた。


 僕は家にいていい。

 そう言われたけれど、家にいるだけだとバカな自分をこれでもかと呪うことになって、居ても居られなかった。


 だから、大人の人に付き添ってもらい、森を探し続けた。


 それから、僕にとって最悪の日は更新し続けた。




 サナは1週間経っても見つからなかった。


 彼女の足ではそこまで遠くに行くことは出来ないはず。


 狩人や冒険者が森の奥まで入り、泊り込んでサナの痕跡を見つけようとしたけれど、何も発見できなかった。


 それでも彼らは諦めずに何日も探してくれたけれど、見つからなかった。


 サナは死んだと囁かれた。


 僕は後悔で……後悔で死ぬかもしれないと思った。


 僕のせいで、僕がサナと一緒にいなかったせいで、彼女は死んでしまったのかもしれない。


 サナに怨まれる。絶対に怨まれる。


 彼女が生きていても死ぬまで呪われるかもしれない。


 本気でそう思い、僕は一人でフラフラと森の中に入っていった。


 それでも良かった。


 生きてさえいれば見つけられる。


 サナが生きて見つかるのであれば、僕がどれほど怨まれても、神から嫌われてもいいと思った。


 だから一人で森に入ったのだ。


 大人たちも連日の捜索で疲れていた。

 皆力なくうなだれ、元気もなかったから見つからなかったのだと思う。


 僕は森の中を探し回った。


 時々サナがいるような気配がして、見るとそれはリスやウサギ等の小動物だった。


 サナが見つからず落胆しても、僕は森の中を探し続けた。


「サナ?」


 時折、サナの幻影が見えた。


 サナがこっちの方に来ている。

 確証はないけれど、いると思った。


 その方向に……どうやって行ったのか、あんな場所は本当にあの森にあったのか。

 思いだせないけれど、それでも、僕はその方向に進んだ。


 気が付くと、目の前に小さな洞窟(どうくつ)があった。


 中では松明の炎が揺れているのが分かる。


 僕は躊躇(ためら)わずに入った。


 そして、奇妙な模様をした石の台座が松明に囲まれていた。

 女性らしき人の手に蛇が巻きついた様な姿で、周囲には炎の様な掘り込みがあった。


 サナはそこに寝かされていた。


「サナ……サナ!」


 僕は彼女にかけより揺すった。

 けれど、彼女は起きない。


 死んでしまった……そう思いかけて涙が溢れて来るけれど、彼女の口から小さな……小さな呼吸音が聞こえた。


「すぅ……すぅ……」

「サナ!」


 僕は彼女を再びゆする。

 けれど、彼女が起きる様子はない。


 だけど、このままにしておけるはずがない。

 僕は彼女を背負って、戻ることに決めた。


 連日の捜索で疲れていたけれど、サナを絶対に連れて帰る。

 その気持ちが僕を(ふる)い立たせた。


 僕は疲れた体に鞭打って、無我夢中でサナを背負って森を歩いた。


 その途中、サナが目を覚ました。


「うぅ……うぅ……ん」

「サナ!? 聞こえるかい!? サナ!?」

「クトー……お兄……ちゃん?」

「そうだよ! 僕だよ! 大丈夫? 痛い所はない!?」


 僕は背中のサナに声をかけ続ける。

 背負っているだけでは足りない。

 話して、彼女の声を聞き、少しでも彼女の存在を感じたかった。


「分かんない……体の感覚が……あんまり……なくって……」

「サナ!?」

「でも、私は嬉しい……」

「どうして……」

「だって……お兄ちゃんが……来てくれたから。私を……こうやって背負ってくれてるから……」

「サナ……」


 彼女は頭を僕の頭にくっつける。


 僕はそれがたまらなく嬉しく……悲しくて……言葉に出来なかった。


「ありがとう。クトーお兄ちゃん。やっぱりお兄ちゃんが助けてくれたんだよね。記憶がないけど……何か……怖かった気がするんだ」

「サナ……」

「でも、お兄ちゃんが助けてくれた。だから、私は……サナは怖くないよ。お兄ちゃん」

「サナ……」

「だからクトーお兄ちゃん。ありがとう。大好き」

「………………」


 言葉は出なかった。彼女に嫌われ、怨まれるとすら思っていた。


 けれど、サナは変わらず僕を好きだと言ってくれるのだ。


 僕はそれからどうやって歩いたのか覚えていない。

 サナと何でもいいから話していた。


 彼女との繋がりを消さないために、僕はずっと……ずっとずっと彼女と話し続けていた。


「おい! 2人がいたぞ!」

「サナちゃんもいるわ! 神官を呼んできて!」


 僕たちはいつの間にか村の近くに戻ってきていて、見つかった村人達に助けられた。


 そして、僕とサナは助けられたけれど、サナは黒蛇病という病にかかっていた。


 サナがいた場所はどうしても見つからなかったし、どうしてサナがかかってしまったのか分からない。

 けれど、サナは変わらなかった。


「クトーお兄ちゃん。ありがとう。クトーお兄ちゃんが助けてくれなかったら、サナは生きていなかったかもしれないんだ」

「サナ……でも……僕が……僕が……」

「クトーお兄ちゃん。ありがとう。大好きだよ」

「サナ……」


 僕はそれ以上サナに何か言うことは出来なかった。


 けれど、僕は絶対に行なうと誓ったことがある。

 それは、サナを一生守ることとサナの黒蛇病を治療すること。


 この2つが僕が生きる意味であり、僕の存在意義だ。

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