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21話 アルセラと決闘

 僕は今もスキルの練習をしながら廊下を歩いていた。

 向かう先は自室。


 つい先ほど2本の触手をクラーケンの物に出来たので気分も明るい。

 この調子で行けばスキルを使いこなすのもすぐだろう。


 コツコツコツコツ


 夜も更けていて、薄暗い廊下には他の生徒はいないはず。

 こんな時間であれば多くの人は既に部屋に帰っているからだ。


 僕の場合は学園長にスキルの練習を手伝って貰っていたからに他ならない。


(誰だろう?)


 前から真っすぐに歩いてくる生徒は僕のことをこれでもかと見つめてくる。


 窓から入ってくる月光に照らされる真紅の髪、キリリと吊り上がった目は気の強さを感じさせた。


 そんな彼女の名前を僕は呟く。


「アルセラさん」

「……」


 僕から少し離れた位置で彼女は止まり、ただ黙っている。

 と思ったら剣を抜き、僕に突きつけてきた。


「クトー。貴様に決闘を申し込む」

「へ? え……いや……え? 何で?」

「サッサと受けろ。受けねばここで一方的に切り刻む」

「え……いや……でも……」


 意味が分からない。


 どうして僕が彼女と決闘をしなければならないんだ。

 一応、殺すことは禁止になっているけれど、万が一という可能性もある。

 それに、レイラの護衛の人にそんな事を出来る訳が……。

 あれ? レイラ? 何か忘れているような………。


「受けろ。3度目はないぞ」


 しかし、受けなければ本当に斬りかかる。

 彼女の目が、本気の目をしていた。


「……分かったよ」

「ついてこい」


 彼女はくるりと背を向けて訓練場へと向かう。



 訓練場は屋内なのにかなり広い場所で、普段は多くの人がトレーニングをしている。

 けれど、流石にこの時間では誰もおらず、明かりは月明かりのみだ。


「ルールは簡単。負けを認めるか、気を失うまで。質問は?」

「なんで僕と決闘するの? レイラとの関係も悪くはなかったと思うんだけれど……」

「私に勝ったら教えてやる」

「了解」


 彼女は先ほど抜いた剣を僕に向け、そして片手でも扱える小さな丸盾を構えていた。


「武器は?」

「じゃあ……これを」


 僕は壁際に置かれている物の中から、木の盾を2枚持つ。

 両手に1つずつだ。


 どうして僕がそんなことをしているのかわからないのか、アルセラさんはさっきよりも鋭い視線を僕に向けて来る。


「なんのつもりだ?」

「君に勝つつもりだけど?」

「……コインをが落ちたら開始だ」

「分かった」


 キィン……カッ


「――ッシ!」


 アルセラさんはコインが着地するのと同時に突っ込んでくる。

 シールドでいつでも攻撃を防げるように、そして、剣は攻撃の軌跡を盾で隠すようにしていた。


 僕は動かず、じっとアルセラの動きを見る。


「はぁ!」

「ふっ!」


 アルセラの突撃しながらの突きを盾で受け止める。


 その時に盾を斜めにして、後ろに逸らすようにした。

 

 アルセラはその流れに逆らわずそのまま駆け抜けていく。


 よし。今だ。


「【タコ化】【保護色(カラーコート)】」


 僕はアルセラが体勢を立て直そうとしていて、僕から注意が外れた事を見てスキルを使う。


 勿論、アルセラも甘い人ではないらしい。

 走り抜けると、その勢いを殺さないまま再び僕に突撃して来る。


「次は逃がさん! 食らえ!」

「!?」


 彼女が再び突きを繰り出して来るのかと思っていたら、まさか盾でぶつかって来たではないか。

 彼女の盾は鉄製でかなり頑丈そうだ。


 それに比べて、僕の盾は木製。

 いくら訓練場のを借りているからってこの差は中々に辛い。


 それでも、僕は2枚の盾を前に出し、彼女の盾の突撃を受ける。


  ミシリ。


 盾が悲鳴を上げるのが分かるけれど、アルセラの攻撃はまだ終わっていない。


「そこだ!」


 彼女はもう一度僕に突きを繰り出してくる。


 僕が盾を持っている2本の触手が塞がっているのを見たからだろう。

 それに、盾の耐久力的にも厳しい。


 けれど、ここ最近、僕はずっとずっとスキルを使い続けていた。

 だから、スキルの使い方は過去最高に上手くなっている。


 つまり、僕が盾2枚をそれぞれ1本の触手で持っている事を知らない。

 更に言うと、アルセラは僕の触手が2本、消えているのを知らない。


「あっ!?」


 彼女は突きを放とうとしていたけれど、僕は【保護色(カラーコート)】で色を消していていた触手を伸ばして剣を絡めとった。


 彼女は真っすぐに力を込めていたこともあって、横からの衝撃に動揺して僕に剣を奪われる。


 僕は触手で彼女の剣を持ち、もう片方の触手で彼女の顔を叩く。


「な!」


 彼女は驚いて飛びのくけれど、僕は追撃はしなかった。


「これで満足? 剣は取り上げたけど、ここで壊したくはない。だから、大人しく降伏してくれないかな」


 これは僕の心からの本心だ。

 僕は別に彼女と……アルセラと、その後ろにいるレイラや教会と戦いたい訳じゃない。


 だから、なんとか穏便に終わらせたい。そう思うのだ。


「断る……! 私は……私はレイラ様の為に戦い、そして命を捧げる。その為ならば、剣の1本や2本は惜しくない!」

「ええ!?」

「私の力はこんな物ではない。行くぞ」


 彼女は盾を右手に持ち、力を集中させている。

 武器が無くなったはずなのに、一体何をして来るというのだろうか。


「はぁ! 食らえ!」

「まじかよ!」


 彼女は単純に、力押しで来るようだった。

 何か彼女の技でも使って来るのかと思っていたけれど、力をためて盾で殴りつける。

 ただそれだけだ。


 でも、それも十分な威力があれば脅威になる。


「レイラ様の恨みはここで晴らす!」


 アルセラが盾を振りかぶり、地面に叩きつける。


 僕は何の事だ? と思いつつも今回は躱す。


「逃げるなよ卑怯者」


 訓練場の地面が(くぼ)み、かなりの威力であることが分かる。


 でも、いきなり力を注ぎ過ぎだ。


「逃げてないよ」


 僕はこちらを睨むアルセラに接近して、こちらから盾を振りかぶって叩きつける。


「く!」

「いいの? 接近しちゃって」


 僕は【保護色(カラーコート)】で消している触手を伸ばし、彼女の盾と腕に絡みつく。


「な! 何だこの気色悪いのは!」

「……酷くない?」


 僕はちょっとイラっとして彼女の腕と盾をぬめぬめとさせながら盾をするりと奪い取った。


「ああ!」


 アルセラは盾まで奪われてしまい、悲痛な声を上げる。


 僕は彼女からバックステップで離れてた。


「これで満足? 次は……容赦しないよ?」


 僕は触手をこれでもかと大きくして、ぬめぬめした感じを出しつつも彼女に見せつける。

 彼女がなんとなく触手を嫌っているのが分かったからだ。


 悲しいけど、それは仕方ない。

 タコの事を嫌いと言っている人もそれなりにいるから、別におかしい事でもない。


 彼女は、僕の触手を見て、諦めたのか膝をついた。


「私の……負けだ。好きにしろ」


 彼女はそう言って、地面に寝転がり、大の字になった。


 ……別に触手でぬめぬめにするとかしないからね?

「面白かった!」


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