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10話 サナとお出かけ

「サナ!」

「兄さん。どうしたの?」


 僕は次の休日に愛しくて可愛いサナに会いに来ていた。


 サナはいつものように車いすに座り、優しい目を僕に向けてくれる。

 艶やかで長い黒髪は美しく、僕の黒髪よりも引き込まれてしまいそうだ。


 僕はそんな彼女の後ろに流れるように行き、彼女の車いすを押し始める。


「サナ。今日はちょっと一緒に遊びに行かない? 予定とかあった?」

「ううん。何もなかったから、街にでも出てみようかと……」

「ダメだよサナ。君は可愛いんだから、一人で行ったら絶対にさらわれるよ」

「ふふ、大丈夫よ兄さん。私だってこの学園に入れるくらいには強いのよ?」


 ここ、ルインドワーズ高等学園に入るには、剣術や魔法、もしくはスキルを使ってある程度戦闘が出来ないと入学する事が出来ない。

 ただ、戦闘が出来るから入学出来るという訳ではなく、戦闘も出来て頭も良くないと入れない。

 それがここルインドワーズ高等学園なのだ。


「だからってサナは子供でしょ? 一人でいたら絶対に連れていかれるから。僕がそんなことはさせないから一緒に行こう」

「兄さん……私たち1歳しか違わなかったと思うんだけど?」

「それでも僕からしたらサナは子供だよ」

「もう……兄さんたら……。でも、ありがとう。心配して付き合ってくれるんでしょう?」

「当然でしょ。それじゃあ行こうか」

「ええ、お願い」


 僕はサナと一緒に学園を囲む街に繰り出した。



 街に向かう途中、彼女の体調を聞く。


「そういえばアンクレットはどう? 調子いい?」

「うん。兄さんが選んでくれた足に効く物でしょ? 全然痛まないよ」

「そっか、良かった」

「それでどこに向かっているの?」

「着いてからのお楽しみだ」

「もう……」


 そう言って最初に向かったのは服屋が多くある通りだ。


「ここら辺が服屋とかが多いかな。サナなら何でも似合うから問題ないけれど、それでも値段とかも手ごろで丁度いいよ」

「だからってこんなに着れないよ」


 サナの膝の上には、僕がいいなと思った服が20着以上置かれていた。


「サナなら似合うと思うんだけどな……」

「似合っても着れないならこんなに持っていても意味ないじゃない……。制服もあるんだし、私はそれで十分よ」

「そんなこと言わずに是非着て見て欲しい。着替えを手伝うから!」

「本当? 昔のように一緒にお風呂も入ってくれる?」

「え……」


 懐かしい。

 僕とサナがまだ小さかった頃、僕達はずっと一緒に入っていた。


 成長するにつれて入るのを一緒にやめるようにしたけれど、それでも、サナは時々一緒に入ろうと言ってくれる。

 でも、流石に僕にもそれがいいか悪いかの良心は持っていた。

 なので、泣く泣く断る。


「サナ……それは……ダメだよ」

「どうして?」


 サナが振り返り少し悲しそうに首を傾げる。


 僕は胸が張り裂けそうになりながらも気合で首を振った。

 サナの願いは全て叶えてあげたい。

 僕はサナの為に出来る限りのことをすると誓ったのだから。

 でも、これは出来ない。

 これだけはやってはいけないのだ。


「サナ……年頃の男女がそういうことをしてはいけないよ」

「どうして? 私は兄さんが優しくてしっかりしているからそういうことにはならないって分かっているよ?」

「……それでもだ。僕たちはならないと知っていても、それで学園側がどう思うか分かんないから……」


 僕だってサナと昔のように仲良くお風呂に入りたい。

 けれど、そんなことをしてしまったら僕の評判はどうでもいいとはいえ、サナの評判まで落ちてしまうのはよろしくない。


 僕はギリギリで踏みとどまる事に成功した。


「もう……」


 サナはちょっと(ふく)れていたけれど、納得はしてくれたようだった。


 次に向かったのは食事をする通りだ。

 思いの外服屋で時間を使ってしまったからだ。


「サナ。食べたい物はある?」

「私……うーん。兄さんの食べたい物が食べたいかな」

「サナ……」


 何て優しい子なんだろうか。

 僕は感激で胸が震える。


「それじゃあ僕がすごくおススメする場所に行こうか」

「うん!」

「こっちだよ」


 僕とサナは僕のおススメの店に入って食事をした。

 そこは、魚介がすごく美味しいお店で、サナもとても美味しそうに食べてくれていた。


 僕たちは食事を満喫して、店から出るとかなりの数の人が並んでいた。

 たまたま人が少ない時間に入れたらしく、ラッキーとしか言い様がない。


「兄さん、とっても美味しかったわ! こんなに美味しい魚料理を食べたのは初めて! 兄さんはすごいわ!」


 サナが店を出るとテンション高めに話しかけてくる。


「ありがとうサナ。そこまで喜んでくれて嬉しいよ」

「ううん。私をこんな美味しい所に連れて行ってくれたり、街も案内してくれていて本当に嬉しい。ありがとう。兄さん」

「サナ……。何をもう終わったみたいな話をしているの。まだまだこれからもっと回るんだよ?」

「うん。でも、私もちゃんとお礼を言っておきたくって」

「気にしなくてもいいよ。それじゃあ行こうか」

「ええ」


 僕たちはまた街を歩き回った。

 鍛冶屋が多い場所を回ったり、保存の効く食材を販売する場所、装飾品を販売しているところなどだ。


 サナは楽しんでくれたように思う。

 僕は、サナがそうやって楽しんでくれたのが最高に嬉しい。


 日もそろそろ赤くなってきていて、帰る時刻になってきた。


「サナ。そろそろ帰ろうか」


 サナも十分楽しんでくれただろうし、僕はそれだけで満足だ。

 いつも行っている本屋に行けなかったのは少し残念だけれど、こんな日があってもいい。


「待って兄さん」

「サナ? どうしたの?」

「私……いえ、兄さん。行きたい所があるんじゃないの?」


 サナは僕の方を振り向かずに、そう言ってくる。

 後ろから見る彼女の髪は綺麗と言うことしか分からず、表情は見えない。


「な……何を……」

「兄さん。私の為に今日は一日一緒にいてくれたことは感謝している。でも、兄さんも行きたい場所があるんでしょう?」

「な、なんで……」

「いつから私たちが兄弟だと思っているの? 顔に出ていたんだよ」

「う……それじゃあ……ちょっと本屋に行きたい」

「ええ、勿論」


 サナはそう言って振り向くけれど、その顔は笑顔で、引き込まれてしまいそうな素敵な笑顔だった。


 僕たちは一緒に本屋に行き、サナの提案で別れる。


「私はこっちに行くから、兄さんはゆっくり見ていて」

「でも……」

「いいから、ゆっくりと見たいんでしょ?」

「……ありがとう。サナ」

「ふふ、どういたしまして」


 サナはそう言って一人で行ってしまう。


 僕は彼女の背を少し見送った後、求める本を探す。


「……これ気になるんだよなぁ」


 目当ての本を見つけたけれど、この本は魔法がかけられていて、中を開くことも出来ないし、持ち逃げしようとしたら即座にバレる。

 ここの本にはそういった魔法がかけられていた。


 タイトルは『不治の病についての研究』という本である。

 内容としては世間で言われている不治の病等を詳しく調べた物で、サナの病気でもある黒蛇病についても記載されているはずだ。

 だから、この本を読んで、黒蛇病についてもっと調べたい。

 知って、何としてでもサナの治療をしたい。


 だけれど、本は高価であるため平民である僕からしたら手が出せない。

 両親が僕をこの学園に入れてくれただけでも感謝しなければならないのに、高価な本まで買って欲しいと願うのは求めすぎだろう。


「他に何かないかな……」


 興味を引くような、サナの病を治すのに役立つ本はないかと僕は更に探す。


 そして、閉店時間ギリギリまでそこにいてしまった。

 帰り道は、サナと今日の事を笑いながら話して帰った

「面白かった!」


「続きが気になる、もっと読みたい!」


と思っていただけたなら


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