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異母姉妹の恋愛

女の趣味以外は完璧な私の幼なじみ

作者: 佐藤めぐみ

主人公の名前はリリィです。


にている話があったらごめんなさい。



 私には幼なじみがいる。

 それはもうものすっごくモテる男の子だ。どのくらいかと言われてもわからないくらいモテる。


 想像してみてほしい、よく知りもしないのに、転んだとき迷わず手をさしのべてくれるイケメンな先輩を。


 男友達が頼ってきたときに、笑って勉強を教えてあげているお金持ちな同級生を。


 話したこともないのに、落としたハンカチを拾って砂まで払ってくれる紳士的な後輩を。


 重い荷物を抱えていると、何もいわずに手伝ってくれる爽やかな近所の男の子を。


 道に迷って泣いているとお母さんを一緒に探してくれる面倒見のいいおにいちゃんを。



 おかげさまで、私の幼なじみは貴族王族も通っているこの学園の中で、男女問わず人気を博しているし、近所のおばあさんやママさんたち、果ては商工会のおっちゃんまでもを魅了する超人である。


 ちなみに私は男爵家の長女、彼の方は家が王家御用達の菓子メーカー経営者の平民だ。


 そんな彼にある唯一の欠点は、女の趣味がすこぶる悪いこと。


 その彼は今日も私の"あの"異母妹と仲良くデートをしている。



「ルゥ~、サリィ、あのイヤリングほしいわぁ」

「いいよ、かってあげる。今日も可愛いね、天使のよう、いやそれ以上だよサリィ」

「当然でしょ。ねえ、このドレス似合う?」

「よくにあっているけど…。先週あげた首飾りをつけていないね」

「あれ? あきたから捨てちゃった。ねぇ、ルゥ、私それよりも新しい髪飾りがほしいわ」

「もう、サリィはしょうがない子だなぁ」


 だらしなく口元をゆるめて私の異母妹を甘やかすルーベルトに頭が痛くなる。


 公衆の面前でいちゃつくな! そして、妹! わがまま言うな!


 苦々しい思いで二人に苦言を呈する。


「二人とも、デートをするならせめて私を誘わないでもらえるかしら」

「えーっ、いいじゃないおねぇさまぁ。一緒に楽しみましょうよ」

「そうそう。あ、ひょっとしてサリィに嫉妬してるの?」


 したり顔でこちらをみるルーベルトが頭にくる。うざい。

 やたら語尾をのばしてくるサリィ。べつに、いいですけど。


「べつに! してたらしてたであなたには関係ありませんから。どうぞご勝手に」


 ぷんすかおこりながら帰りの馬車に乗り込むその手を、サリィがつかんだ。


「姉様、お母様にいっちゃうわよ」


 ちっ。

 この妹は現在我が家の最高権力者が誰か心得ている。

 私がサリィを邪険に扱おうものなら、彼女の万年筆が飛んでくる。おかげで我が家の壁は穴だらけだ。お父様と結婚する前の家庭教師時代の癖がまだ抜けていないらしい。しかもあの継母、私の物をしょっちゅうサリィに横流しするのだ。まあ、お古だからいいんだけど…。


 継母がサリィを好きで、私のことを邪魔に思っている。サリィはそれを心得ていて、我が物顔で闊歩する。本当に、むかつく。


 たしかに、この子はかわいい。みんなが天使とほめるのも納得いく。目もきらきらしていて、私みたいに無愛想じゃない。


 この子が生まれてから、私は親の関心が妹に移ったのに気がついた。ずいぶん寂しい思いをしたし、父と継母がサリィを猫可愛がりするのも悔しい。もっと私をみてほしい、そう思っていたのに、思いは届かないまま。もう期待するのはやめた。特に邪険に扱われているわけでもない。

 親としての義務は果たしてくれているんだから、それ以上を望むのは傲慢だ。



 頭ではそう割り切れているんだけどね。


「ルゥ、あのシュークリームすっごくおいしいんですって!」

「本当? サリィは物知りだなぁ。よし、ご褒美にシュークリームを一ダースかってあげようね」

「やったぁ!」


 目の前で幼なじみを見せつけるように独占されて、イライラしないはずがない。


 こらっ! 腕を組むな! 私がいるんだぞ。

 「あーん♡」じゃねーよ、ああん!?


 ああ、虚しいかな。

 二人が笑いあってクリームの取り合いをしているとき、私はうつろな目でそれを眺めていた。






 一通り飲み食いすると、教会の五時を知らせる鐘がなった。


 それを聞いたルーベルトは、ぱっと立ち上がった。


「サリィ、五時だよ。家に帰らなきゃ」

「えぇ~、一緒に帰りましょうよ」

「天使と一緒にいたいのは山々なんだけど、ごめんね…。今日の労働時間が終わっちゃったから、御者の人と一緒に帰ってくれるかな」


 困ったように馬車を指差してルーベルトが言う。

 サリィはため息をついた。


「わかったよぉ」


 馬車に乗り込んでこちらに手を振ってくる。鼻の下を伸ばして手を振っているあたり、やっぱりルーベルトはサリィが大好きなのだろう。


「どうしたの、リリィ。頬をかわいく膨らませて。やっぱり嫉妬してるよね?」


 馬車が完全に見えなくなってから、こちらを覗き込んだルーベルトから顔を背ける。


「べつに! ところでルーベルト、あなたそんな様子だから幼女趣味疑惑をかけられるのよ。まだ五歳のサリィのいいなりになって。もっとしつけなくちゃいけないのに」


「いやぁ、頭ではわかっているんだけどね。かわいくて目の前にくるとつい甘やかしたくなるんだよ」


「それに何よ、あのタメ口! あんた一応はあの子の護衛でしょう」


「サリィが気安く接してって頼むんだからしょうがないだろ」


 この男は女の子の趣味がとても悪いと世間にいわれている。

 無愛想でかわいげのない私と結婚するために、「五年間無償でサリィの護衛をする」という条件を一生懸命こなしているんだから。さすがは超人で、強さも申し分ないようだ。


 学業の傍ら、本当に大変だと思う。


「……お疲れさま。大変だったでしょ」

「大変じゃないよ」

「ほんとに?」

「護衛と言っても、サリィが遊びに行くときについていくだけだし、何よりそこにはリリィがいるからね」


 はにかむように笑うルーベルトから目をそらす。


「サリィにかわいいっていったくせに」

「やっぱり気にしていたんじゃないか」


 どことなく嬉しそうに、ルーベルトが言う。


「サリィはかわいいよ。顔もそうだけど、僕を仲介して異母姉と仲良くなろうと頑張っているところとか」

「仲良くなろうと? そうなの?」

「ああ。もともと僕が護衛をする事になったのって、サリィがおねだりしたからだろ? 少しでも姉との距離を縮めようと、幼なじみの僕を利用したんだよ」


 そういえばそうだった。

 てっきりサリィがルーベルトに一目惚れでもしたのかと思っていたが。


「いい妹さんじゃないか」


 一人っ子のルーベルトが羨ましそうに見つめてくる。



「そんなに羨ましいなら鞍替えすればいいのに」



 ついすねたような声が出てしまって、後悔する。いつも、素直にいうことができない。世間様いわく、性根が曲がっているんですって。

 幼なじみだけど、さすがに傷ついたかと思って見上げると、予想外にも優しい笑顔の彼がいた。



「世間は君を、僕にはもったいない存在だって言っているよね」

「ええ。私も、そう思うわ」

「僕も、僕なんかに君みたいな素敵な女性はもったいないと思う。最近、僕と距離をとろうとしていたね。もしかして好きな男でもできたんじゃないかと不安で仕方なかったよ」

「そんなわけないわ! あなた以上に好きな人なんて、いるはずないもの」


 にこりと笑って、ルーベルトは私の手を握った。


「君は、すごく素敵な女の子だよ。こんな風に想ってもらえて、僕は世界一の幸せ者だ。話の輪に混ざれなくて寂しそうにしている君も、僕とサリィが仲良くしているのを羨ましそうに眺める君も、大好き。男爵家の令嬢で、身分が違うからかなわないかもしれないと思った恋だった。でも、忘れられなかったんだ」


「ルーベルトは、いつから私を好きだったの」

「ずっと前から。たまに僕の家のお店にきて、目をきらきらさせながらお菓子を眺める知らない女の子。勇気を出して、友達にならないかと誘ってくれた真っ赤な顔。初めて作ったお菓子を、おいしそうに食べてくれたときの笑顔。親と喧嘩して、泣いていたとき一緒に泣いてくれた優しさ。初めて思いを告げたときに僕だけに見せてくれた仕草。そんな幼なじみがいたら、誰だってぐっときて恋に落ちているはずだよ」


 彼を見つめて私は悩んだ。



「…無愛想よ」

「落ち着いているんだ」

「料理もできないし」

「僕が教える」

「嫉妬深いし」

「好きな子が自分についてやきもきしているところって、僕にとっては最高な時間だな」

「あなたに比べたら、なんにもできないしなんにも持っていないのよ」

「僕は君が好きなんだ。僕と比べた君じゃなくて、君が好きなんだよ。それに、きっと君は自分が思っている以上にたくさんの物を持っている」

「…めんどくさい女よ」

「僕だって面倒な男だ」

「いつまでも好きでいてくれる?」

「ずっと好き。これからも」

「私も好き。あなたが好き」

「浮気しないで」

「こっちのセリフよ」






 私はきっと結婚するまでこの人と一緒にいるだろう。

 そしてルーベルトはそのときまでいわれ続けるのだ。


 女の子の趣味以外は完璧なのにな、って。






 

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 リリィのお母さんが死んだのは15年前。

 父親は母親代わりとして継母を雇った。

 継母とリリィが気安いのは、ほとんど親子のように育っていたから。

 サリィはリリィと仲良くなりたがっていて、継母にルーベルトを利用すれば一緒にいられるといわれてそうした。

 もともと無愛想すぎて嫁のもらい手がなかったリリィに、ルーベルトが来たので無条件で差し上げようとしたが、せっかくなのでサリィが利用した。

 ルーベルトのいえはマジで大金持ち。森○製菓くらい有名。

 ルーベルトは子供好き。

 サリィにあげていたおやつやネックレスは、領収書をとっていた。(子供用のおもちゃです)



 悪い人を書かないつもりで書いたらこうなってしまいました。

 継母について、素直になれないリリィが回想で悪し様にいっただけで、仲が悪いわけではありません。

 矛盾を感じるところもあるかもしれませんが、感想でご指摘いただけると嬉しいです。

 



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― 新着の感想 ―
[良い点] 妹が嫌な子かと思えばまさかのまさか!幼女でしたか。 幼い時ならではのワガママっ子いいですね。そのまま大きくならなければいいのですが。 [気になる点] 継母はリリィの事をどう思ってるのかな?…
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