女神の気まぐれ(ダイスロール)で運命を切り拓け!!!
《《ダイスロール!!》》
強く心で叫んだオレの頭の中に天上の女神の歌声の様なダイスの音と声が鳴り響くと同時に刻が止まる。
《《カランカランカララン》》
《《どうやらキノコーンは何かに気を取られた様で一瞬動きが止まった》》
女神さまに感謝をしつつ動き出す刻に合わせて、持っている大盾でシールドチャージをキノコーンへ向かっておこなう。
《《ダイスロール!!》》
重ねて再度強く心で叫んだオレの頭の中に天上の女神の歌声の様なダイスの音と声が鳴り響くと同時に刻が止まる。
《《カランカランカララン》》
《《どうやらキノコーンは体勢を崩していた様で簡単に吹っ飛んだ。また打ちどころが悪かった様でそのまま絶命した》》
どうやらクリティカルを引き当てたみたいだ。
女神さまに愛してるぜと最大限の感謝を贈りつつ動き出す刻に合わせて、フルパワーでシールドチャージ。
頭の中に鳴り響いた声の通りにキノコーンは絶命した。
残心をしつつ、より確実な手段で《《ダイスロール》》をする、が特に変な声は聞こえなかったので戦闘態勢を終了しキノコーンが落としたアイテム回収へと向かう。
勿論定期的に《《ダイスロール》》するのは忘れない、一度夢中になってて忘れた時にバックアタック受けて痛い目を見たんだ……奇跡的に助かったけども。
今の時期はキノコーンが旬なのでキノコーンの肉が高く売れる為、ほくほく顔でキノコーンの肉カードを拾っていく。
うん、倒すと何故かカードが出てきて魔物は消えてしまうんだよね。
皆は気にしてないんだけど、前世でラノベやら漫画やらゲームやらをしていたオレにとっては違和感しか感じないんだ。
カードが出るって何でだよ!!!
そう言うモノだと諦めて今日のノルマは達成したから近くの森より街へと戻る。
成果としてはキノコーンの肉が50枚、これだけあれば街のそこそこ良い宿屋へ1週間は泊まれるんだ。
キノコーンを殴りまくって多少痛んだ大盾と小剣を直しても今日一日呑んで食べてもおつりが来る。
ホント女神さま様々だよなぁ。
街の中でも《《ダイスロール》》は欠かさない。
余程運の悪くない限りは、ファンブルしないから。
仮にしそうになっても声が聞こえるから、ファンブルに対して更に《ダイスロール》することでギリギリ回避出来るんだよ。
一度《植木が落ちてきて即死する》って声が聞こえてきたとき、全力で色々と抗おうとしてて直感的に《《ダイスロール》》と叫んだら、《《でも何故か大ダメージで済んだ》》って声が聞こえてきて何とか助かったんだ。
物凄く痛かったし治療費も物凄く痛かったけど二度目?の人生だから楽しく生きたいよね!
そうそう、オレには前世の記憶があるんだ。
しがないSE系サラリーマンでオタク趣味だけが生き甲斐の様な人生だったけども、TRPGの知識だけは今人生凄く助かっている。
なにせ一度死にかけた時に《《強制ダイスロール》》の音が聞こえてきて、《《ダイスロール》》みたいって何故か思ったら前世の記憶を思い出したんだ。
前世を思い出した混乱した頭で《《ダイスロール》》した結果、今こうして生きているって訳。
前世で死んだ時に神さまに会った記憶はないけど良くある転生した際のボーナスが《《ダイスロール》》だったのかな?
そうそう《《強制ダイスロール》》、これにも助けられてます。
今でこそ《《ダイスロール》》を欠かさない癖をつけてるけど、稀に良く忘れて死にかけたりする時に必ずチャンスとして入ってくるのでホント女神さま様々、じゃなければこうして生きていないと思う(遠い目)
そうこうしている内に生活互助組合に着いた。
いわゆる冒険者ギルドとか生産系ギルドがまとまった物でどんな小さな町にもあるから困った時の相談窓口となっている。
素材の採集・収集依頼板を横目に買取受付に並ぶ。
因みに依頼板には今日狩ってきたキノコーンの他にもサンマンやイガグリーン、カッキン、キントキンの依頼が並んでいて良き日本の秋という感じが否定できない。
この世界の神様、絶対日本関係者だろう?
日本の秋の味覚を思い出しつつ今晩のご飯は何にしようかよだれが出てきた辺りで順番が回ってきた。
「はーい、次の方~!」
「キノコーンの肉50枚です、確認お願いします」
お姉さんに渡しつつ、ここですかさず
《《ダイスロール!!》》
《《どうやらキノコーンの肉は需要が高い様だ》》
「キノコーンの肉50枚ですね~、今丁度納品数が足りなかったので助かります~」
そう言いながら受付のお姉さんが渡されたカード50枚を謎の機械に通すと品質等を自動的に確認して先ほどまでの取引価格よりも高い金額が表示された。
《《ダイスロール》》に成功した様で取引価格が上昇したから今晩のご飯は豪華にしよう!と考えつつ
「それでお願いします」
と代金を受け取る。
「またよろしくお願いします~」
そんな気の良さげな買取受付のお姉さんの声をBGMに武器防具受付へと回り調整と修理を依頼した後、生活互助組合の裏手で金を支払い水浴びし泥やら汗やら汚れを洗い流してから宿へと戻る。
宿だと水を自由に使えないから井戸を引いてある生活互助組合にて水浴びした方が安いし楽なんだ。
お風呂付の超高級宿も無い事は無いけどその分お高めでそうそう泊まることはできない。
週に一回共同浴場に入るのと美味しいご飯を食べるのが今の楽しみなんだよね。
今のペースでのんびり行くと、一生まったりと暮らすのに20年はこの生活を続けなければいけないんだけども無理をして体を壊しても意味がないので無理なく安全第一でまったりと過ごすつもり。
そんな不埒な事を考えた所為か、フラグが立ってしまった様だ。
宿屋のおばs……お姉さまにお土産とキノコーンの肉を数枚渡しつつ、キノコーンステーキの美味しさに心躍らせ酒をあおっていい気分だったオレはついつい《《ダイスロール》》せずに部屋の扉を開けてしまった。
後ろ手に鍵を閉めつつ、いえっふーとベッドにるっぱーんした所で背後から男とも女ともつかない、くぐもった声がかかった。
「……貴様がシュn」
オレは反射的に
《《ダイスロール!!》》
《《カランカランカララン》》
《《カランカランカララン》》
《《どうやら彼女には敵意はない様だが、部屋に入るなり飛びあがり服を脱ぎだした変態に対して半眼になり呆れている様だ》》
助かった!?いや助かってないのか!!!?彼女?!?!?!?と言うか誰だ!!!!?????
刻が止まる中るっぱーん真っ最中の為半ケツを相手に向けながら焦るオレ。
止まる刻の中で空中で半裸で半ケツのオレ。
焦るアタマで情報を整理しつつ次の手を練る。
そして刻は動き始めた。
「……か?」
「夜更けに紳士の部屋に忍び込むとはイケない子猫ちゃんだね、食べられてしまっても知らないよ……?」
ベッドへ着地すると同時に無様な体捌きで座り直し精一杯の強がりをオレは言ってみたが
「!?…………そろそろその汚いケツをしまったらどうだ?」
一瞬の驚きを相手に与えられはしたが逆にクリティカルを返されてしまい、オレはいそいそと服を直す。
一応
《《ダイスロール》》
《《どうやら隠していた性別を当てられて多少焦って居る様だ、噂が本当だったと思っている様だ》》
クリティカルアタックに対するカウンターかどうやらクリティカルを引き当てたようだ。
べべべべつに効いてないし。
更に詳細な情報が手に入ったけれども、噂か……どこかに勘の良いチビでも居たのかな?
「貴様がシュナイか」
オレが服を直したタイミングで再度聞いてくる彼女、どうやら始めからやり直すらしい。
手持ちの情報が足りないので再度
《《ダイスロール》》
《《ダイスロール》》
《《ダイスロール》》
…
《《どうやら困っている様だ》》
《《どうやら手詰まりの様だ》》
《《どうやら猫好きの様だ》》
…
ある程度情報が出揃うまで《《ダイスロール》》するオレ、いや猫好きとか言われてもこちらも困るしハズレだな。
手に入れた情報を吟味し、ゆっくりとこう返す。
「それで何の御用でしょうか、カレンさん」
相手が疑問を持って聞いてきているのに対し、確定情報として言い返すオレ。
先ほどオレが性別を当てた以上に驚きを隠さない彼女。
そんな彼女、カレンは少し間を開けてから床に膝をつき意を決してこう言ってきた。
「噂は事実だったようですね……貴男に御願いがあって参りました。急に御伺いした御無礼をお許し下さい」
カレンの来訪によりオレの平凡な日常は終わりを告げ、運命とやらが動き始めたのだった。





