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魔族の目的

 敵はどこにいる?




『首都の南東方向、この辺りにいると思われます。ヨミさんたちの魔力もそこへ向かっているようです』




 マスクの中に地図が映し出される。


 赤く点滅しているのが敵の位置で青く点滅している二つの反応がヨミとアスラか。


 GPSが使えないってのにここまで示してくれるのはありがたい。




『保険として言っておきますけど、多少の誤差はありますからね。それと、この機能はセンサーにもネムスギアのリソースを割いているから出来ることなので、他のフォームではここまで正確な索敵は不可能ですよ』




 わかってる。


 俺がAIと会話しているうちに、二度目の攻撃は終わっていた。




「くそっ! 一体、何がどうなって」




 混乱しているのか、レオルが剣を抜いて辺りを警戒しているが意味はない。




「あの、アキラ殿の仲間はさっき、敵を見つけたと」




 考え事をしていたローライドが聞くが、俺は言葉を遮って警告した。




「また来るぞ! 避けろ!」


「光の神の名において、我が命ずる! 我らを守る家となれ! シャイニングバリアフィールド」




 ローライドを中心に光が膨らむ。


 それはまるでテントのように食堂の一部を隔離させた。


 そして、そこに闇の矢が二本刺さる。


 当然のように、無数の闇の矢も降ってきた。




「くぅ……」




 ローライドが両手を前に出して、迫り来る闇の矢を押さえ込んでいるようだった。


 その攻撃はこれまでの二回よりも短い時間で終わった。


 同時にローライドの防御魔法が解除される。


 そのまま彼は膝をつき肩で息をしていた。




「大丈夫か?」




 俺が声をかけると、微笑みながら立ち上がった。




「アキラ殿にばかり頼っていては、国防大臣の名が泣いてしまいますから。それに、そのセリフは私の方が言いたいですね」


「どういう意味だ?」


「あれほどの魔法攻撃をアキラ殿はその体で二度も受け止めています。あなたこそ大丈夫なのですか?」


「痛みを感じるほどの攻撃でもない。ただ、数が多くて動きづらいだけだな」


「……フフフッ……大統領があなたを頼るわけですね」


『彰、今までの敵の攻撃パターンから計算すると、また数十秒後には例の魔法が飛んできます。少なくともこの場は離脱するべきでしょう』




 AIは冷静に次の行動を促していたが、要は無駄話をするなと言っている。




「敵の場所は俺にもわかった。とにかくここから出よう」


「そうですね。私たちもアキラ殿の仲間を追うべきでしょう」


「いや、大統領にはここに残ってもらう」




 俺がそう告げると、クリストフは訝しげな表情をさせた。




「なぜだ! 私だけ逃げろと言うつもりか? 大統領だからか!?」




「どうやら狙われてるのはレイラだ。俺はレイラを守りながら少しでも敵に接近したい。ローライドの防御魔法は役に立つが、クリストフには何か出来ることはあるか?」


「む……そう言われると……」


「あんたにはあんたの仕事があるはずだ。一緒にいて巻き込まれる方が面倒なんだよ」




 きつい言い方だが、これ以上議論をしている場合じゃないってことはクリストフもわかっているようで、それ以上何も言うことはなかった。




「行くぞ」




 俺がレイラの腕を掴んで食堂を出ようとしたとき、




「レイラくん。死ぬんじゃないぞ。君ほど優秀な秘書はいないからな」


「大統領、ご安心を。私のしぶとさはご存じのはずです」




 クリストフのお陰で、レイラもやっといつもの調子を取り戻したようだった。


 官邸から外に出るや否や、俺は辺りを警戒した。


 そろそろあの魔法が飛んできてもおかしくはない。




『来ないですね。攻撃パターンを変えるつもりでしょうか』




 AIがそう言ったとき、遠くから爆発音が響いてきた。


 どこから聞こえてきたのか、探すまでもない。


 炎と煙が南東の方角に見えた。


 AIにもう一度町の拡大地図を映像に出させる。


 赤い点と青い二つの点が重なっていた。


 ヨミとアスラが敵と接触したようだ。


 しかし、あいつら町の中で戦うつもりか?


 ヨミは兎も角、アスラはそこまで考える余裕なんてないよな。


 人や町に被害が広がる前に、俺が行かないとダメだろうな。




『彰、ヨミさんたちでは敵の攻撃を完全には防げないようです』




 闇の矢が二本、レイラを狙って飛んできた。




「聖なる神の名において、我が命ずる! 悪意を滅する光の盾! セイントシールド!」




 俺が腕で防ごうと思ったら、レイラが掌の先に光の盾を出現させていた。




「自分で防げたのか? 俺は余計なことを……」


「あの程度なら何とか出来ますが、第二波は私の魔法では防げません!」


「わかりました! 私があの魔法を――」


「待てよ。あれだけの広さをガードするってことは魔力も相当使うんだろ。もっとやばいときのために温存しておいてくれ」


「し、しかし……あれを防ぐには」




 ローライドが指を差した空に、無数の闇の矢が現れていた。




『バスターキャノンを形成します。両手で構えてください』


「そろそろ、反撃しないとな」




 砲身まで入れると全長一メートルは超える大型の銃を空に向ける。




「な……それは一体……いえ、どこからそのようなものが……」




 間近で見ていたレイラが声を上げた。




『チャージショットスリー、ショットガンバレット!』




 トリガーを引くと、砲身の先が爆発し放射状にエネルギーがばらまかれる。


 それによって空に浮かぶ闇の矢は落ちる前に消失した。




「なんという攻撃……」




 レオルが目を見開いてつぶやいた。


 そう言えば、クリストフには残るようにいったが、レオルのことは忘れていた。


 何で一緒にいるんだ?




「アキラ殿、急ぎましょう。またいつあの攻撃が来るのか読めません」


「それはいいけど、あんたもここに残ってろよ」




 俺はレオルに告げた。




「何を言う。わ、私はこの町の治安を守る警察だぞ。市民が大変な目に遭っているというのに、逃げるわけには……」




 声のトーンが段々下がっていく。




「魔族の討伐は警察の仕事じゃないんだろ。後は俺たちに任せろ」


「しかし……」


「レオルさん。魔族との戦いには魔法が重要になってきます。ですから、ここは私に任せていただけませんか? 今度は取り逃がしたりしませんから」


「ローライド……」


「それに、町の中で戦いが始まってしまったということは、市民がパニックになる恐れがあります。彼らの避難誘導は、警察にお任せしたいのです」


「……そうか、そうだな。ローライド大臣のおっしゃるとおりだ。全警察官の威信をかけて市民の命を守ろう」




 レオルの瞳から迷いの色が消えた。


 俺たちには市民の誘導なんてしている余裕はない。


 彼の仕事は被害を少なくするという意味では重要な役割だった。


 そして、さらにまた大きな爆発が起こる。




「急ぎましょう」




 いわれるまでもなく俺は武装を解除してレイラを連れて走り出した。


 キャノンギアの最大の弱点はここだな。


 移動速度が普通の人間とたいして変わらない。


 かといって、ソードギアであの攻撃を受け止めるか試す気にはなれない。


 ファイトギアなら俺は避けられるが、レイラを守ることは難しいだろう。




「レイラはどの程度魔法が使える?」




 マスクの中に映し出された地図を頼りに走りながら聞く。




「複合魔法なら二つまで。属性は光と風と水と聖なる神」




 ……たぶん、俺が魔道士ならそれだけでも力量がわかるんだろうな……。


 使えないまでも、エリーネに少し教わっとくんだった。





『魔力から計算すると、エリーネさんにやや劣るくらいですから。中級冒険者クラスと計算していいかと思います』




 おお、さすがAI。今までの経験を十分に発揮してくれている。


 それじゃ、参考までにローライドは?




『エリーネさんより上でルトヴィナさんやシャリオットさんより下です』




 結構魔力が高いってことじゃないか。


 大臣に選ばれるだけの実力者ではあったってことか。


 普段は優男っぽいけど、いざとなったら決断力もあるし。




『それでは雑談はここまでにしましょう』




 ああ、マップに映し出された赤い光が中心に来る。


 つまり、次の角を曲がったら、会敵だ。




「うおあああああああ!!」


 長身でイケメン。黒とシルバーのメッシュの髪。確かにそのままの男がアスラにあの闇の矢の雨を浴びせていた。


 アスラはそれを拳で弾き飛ばしている。


 防ぎ切れ無かった矢が顔や体を傷つけるが、お構いなしに殴り続けていた。


 ヨミは、どうした?


 そう思ったときには闇を纏ったヨミが、アスラを攻撃する魔族の背後から飛びかかる。


 捉えたかに見えたその時、もう片方の手で同じ魔法を発射させる。


 ヨミは両手でガードするが、攻撃の圧力に押されて家の壁に叩きつけられた。


 その衝撃で、何かが爆発する。


 そして、魔族が空に手を向けたところで、俺たちに気がついた。




「おや、まさか獲物自ら私の前に現れるとは」


「どこ見てやがる!」




 魔族の攻撃を防ぎきったアスラが、正面から殴りかかるが――。




「ガキは黙ってろ」


「うわっ!」




 拳が届くより前に闇の矢の雨をもろに浴びて吹っ飛ばされていた。


 ヨミもアスラもそれほど魔力は減っていない。


 心配はしていないが、二人とも近接戦闘主体だからこいつとは相性が悪い。




「おい! すでに百六十人も殺してる奴に何を言っても無駄だとは思うが、一応聞いておく。お前の目的は何だ!? なぜ、人を殺す!」




 俺はレイラを守るように前で進み出た。




「……お前? それは、私のことか人間よ」


「お前以外に誰がいる?」


「エサの分際でこの私をお前と呼ぶのか!? 私にはディルピアという美しい名前がある。人間よ、私のことはディルピア様と呼ぶがいい」


「断る! それよりも俺の質問に答えろ」


「そうか、私は話の通じないエサとしゃべる気はない」




 話が通じないのはそっちだろ、とツッコミを入れてる場合じゃなさそうだ。


 ディルピアが俺に手を向けた。


 こっちもバスターキャノンを形成させて構える。




「アキラ! 違います! 狙われているのはあくまでもレイラさんです!」




 瓦礫の中から起き上がったヨミが叫ぶ。


 すると、ディルピアは魔法を撃った。


 俺に向けた右手ではなく、左手を空に向けて。


 それは弧を描いてレイラを狙う。




「セイントシールド!」




 さっきの要領で最初の攻撃をレイラが防いだ。




『チャージショットワン、エレメントバスター!』


「ローライド、レイラを頼む」




 すでに魔法が待機状態だった。


 俺の呼びかけに、ローライドは無言で頷く。


 トリガーを引くと、極太のビームがディルピアに向かって発射される。




「シャイニングバリアフィールド」




 闇の矢はローライドの防御魔法が全て防いでいた。


 その状況が一瞬、ディルピアの判断を鈍らせたんだろう。


 俺の攻撃をまともに喰らって壁ごと吹き飛ばしていた。


 ……しまった。


 俺が一番町に被害を与えてしまったかも。


 エレメントバスターの射線上にあったものは全て吹き飛んで、町を囲む壁に大穴を開けていた。




「さすが、兄ちゃん。一撃で吹っ飛びやがった」




 服も体もあちこちボロボロだったが、アスラは元気そうだった。




「……これで倒したんでしょうか?」




 ローライドとレイラが近づいてくる。


 あれ? ヨミがいないと思ったら、俺の開けた穴から外に出ようとしていた。


 みんなを連れてヨミの所へ行く。




「何を見てるんだ?」


「アキラ、まだ終わっていません」




 ヨミがそう言うと、町の外の草原に倒れていたディルピアがゆっくりと立ち上がった。




「まさか、私を汚すほど馬鹿な人間がいるとは思いませんでした」


「あいつ、まだ生きてやがる!」


「お、おい!」




 アスラはディルピアの姿を見るや否や向かって行く。


 相性が悪いってのに、こういう所は子供だ。




「ヨミ、ディルピアの魔法攻撃を防げるか? あいつは隙があればレイラを狙う」


「全力のダーククロースアーマーなら、何とか一度は防げますが……」


「……わかった。一度以内に決着を付ければいいんだな」


「アキラ殿。私も微力ですが手を貸したい」




 狙われてるってのにレイラは頼もしそうにそう言った。




「それなら、あの馬鹿なガキを連れてくるから手当てしてやってくれ。俺たちは誰も治療魔法が使えないんだ」


「それくらいなら……ですが、攻撃に参加した方が……」


「自分の身を守る方に専念してくれた方がありがたい」




 俺はバスターキャノンを構えながらディルピアに向かって行った。




「うおおおおおおお! 闇の神と光の神の名において、オレが命ずる! 全部ぶっ壊せ! ダークプリズム!」




 アスラの全身から光と闇のエネルギーが飛び出す。


 やはり制御できてはいない。


 メチャクチャに放出しながら、ディルピアに向かって行った。


 しかし、あれならあの闇の矢も防げるか?


 そう思ったが、ディルピアの表情は余裕のままだった。




「ナイトメアカスケード」




 闇の矢の圧倒的な圧力に、アスラは足止めされていた。


 あの攻撃さえ止めるとは。だが、それだけアスラに集中しているってことだろ。


 悪いが、俺はタイマンにこだわる気はない。




『チャージショットワン、エレメントバスター!』




 近づきながら、トリガーを引いた。


 すると、もう片方の手でアスラの足止めをしている魔法を放つ。


 極太のビームと無数の闇の矢。


 ぶつかり合うと同時に爆発が起こり、どちらも消失していた。




「チッ!」




 ディルピアが舌打ちしていたが、俺も同じ気分だったことがイラつく。




「仕方ない。順番に殺すことに美学があったのだが、邪魔をされてしまったからには改めなければならないな。まずはお前たちから殺すことにしよう」




 ディルピアの言葉は聞き捨てならなかった。




「お前、今なんて言った?」


「人間よ。お前らごときに私の言葉が理解できるとは思わないが、教えてやろう。私はこの町に二百のエサを見つけた。それを魔力の低い者から順番に殺して魔力を喰うこと、そして……それを一日十人、二十日をかけていただくことにこそ美しさがあるとは思わないか?」




 ……こいつ、本当にそんな理由で一日に十人を殺していたのか?


 そんな、まるでゲーム感覚で……。




『彰、冷静さを失わないでください。町の近くで必殺技を撃つのは危険です。最悪、彰が無関係の人を殺してしまう』




 わかってるよ。だから、俺一人じゃダメだ。




「アスラ! まだ動けるか!?」




 さっきの魔法で魔力をだいぶ使ったようだが、魔法のお陰でディルピアの攻撃も防げただろう。




「ああ! オレはまだ戦えるぜ!」




 飛び起きて元気に答える。




「アスラ! さっきの魔法で地面をぶっ飛ばせ!」


「え? わかった!」




 俺の狙いはわからなかったかも知れないが、アスラは俺の言うとおりにすることに疑問を持たないようだった。




「行くぜ! 闇の神と光の神の名において、オレが命ずる! 全部ぶっ壊せ! ダークプリズム!」


「無駄だというのがわからんのか! クソガキが! それでは私に近づくことさえ出来んぞ!」




 アスラは魔法を放ったまま飛び上がった。


 俺と勝負をした時に最後に使った捨て身の攻撃を、ディルピアではなく、その手前の地面を叩きつける。




「馬鹿なガキだ! そんなところを攻撃して――」




 ドオンという地響きと共に、地面が吹き飛ぶ。


 土砂が舞い上がり、ディルピアの姿は地上にはなかった。


 俺は空に向かってバスターキャノンを構える。


 空中に巻き上げられた大量の土砂を吹き飛ばすかのように、ディルピアが魔法を俺とアスラに向けて撃ってきた。


 すでに、魔力反応をモニターしていたが、自ら視界を確保してくれるとはありがたい。




『スペシャルチャージショット、マキシマムエナジーバスター!』




 砲身に三つ分の砲弾のエネルギーがセットされて輝きを増す。


 トリガーを引くと、放出されたエネルギーがディルピアの魔法を飲み込み、そのままディルピアの全身をも包み込む。


 一条の光が空に輝く太陽に向かっていき、小さな輝きが落ちてきた。


 それは、複雑な形をしたクリスタル。


 ディルピアが消滅したという証拠だった。

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