戦後処理その二、報奨編
「でも、そうなると本当にアキラにはしてあげられることが……」
「そんなに気にしなくてもいいんだけどな。もし、示しが付かないって言うなら……あの飛翔船を俺に買ってくれ」
「はい!?」
素っ頓狂な声を上げたのはシャリオットだった。
以前、貸してくれる約束はしたが、買えるならもっと自由に扱えるし。
「あの、アキラさん。あの飛翔船はまだ試作段階で、売るというのは……」
「シャリオット殿下。ちなみにおいくら?」
「え? ……機関部分のクリスタルは、元々アキラさんたちが討伐した魔族のものですから。それを差し引くと……そうですね、金貨五万枚と言ったところでしょうか」
「ご、五万枚? ちょっと待って、そんな高価な物を惜しげもなく私たちのために使ってくれたの?」
「それはまあ、同盟国の危機でしたから。それに、実戦データも取りたいという事情もありましたし」
その割にはいきなり墜落しかけてたけどな。
ミュウのクリスタルがなかったら、どうするつもりだったのか。
ああでも、金華国の王都は魔物たちに支配されていたから、あの魔物のクリスタルをかき集めればもう一回くらいは飛ばせたのか。
「アキラ、悪いけどさすがに五万枚じゃ買ってあげることはできないわね」
「まあ、言ってみただけだ。それじゃあ、ルトヴィナの持ってる携帯型の魔法水晶だったらいくらで買える」
「え? 私の?」
俺には使えないが、ヨミが持っていればいいし、携帯電話みたいで便利だと思ったんだよな。
「……これも、まだ試作品ですが……そうですね、金貨五十枚でお譲りしましょう」
「それならすぐに払えるけど、アキラはそれだけで本当に良いの?」
「だから、いいって」
俺はルトヴィナから魔法水晶を受け取りながら答えた。
それをヨミに渡す。
「え? 私がいただいてもいいんですか?」
「俺じゃそれは使えないだろ。ヨミが持っていた方が便利なんだよ」
「確かに、では大切に預からせていただきます」
「ヨミさん。次はあなたへの報奨なんだけど」
俺が魔法水晶を預けただけですでに喜んでいるヨミの姿を見て、キャリーの顔は引きつっていた。
報奨のことなどまるで気にしていないのが丸わかりだった。
「え? 私にも何かくれるんですか?」
「当たり前でしょ。ヨミさんだって十分貢献してくれたんだから。えーと、そうね。ヨミさんは伯爵ってわかりますか?」
「あそこで寝ている偉そうな人がそう呼ばれていた気がします」
「まあ、そうだったんだけど……その、ヨミさんにも伯爵の爵位を与えたいのよ」
よくよく考えれば、キャリーと行動を共にしていた俺だけが爵位を与えられるってのは、バランスに欠けていた。
つまり、ヨミにも当然そういう報奨があってもおかしくはなかったんだ。
「え? あの人と同じになるってことですか?」
あからさまに嫌そうな顔をさせた。
爵位ってそういうものじゃないんだけど、それをヨミに説明するのは難しい気がした。
「ヨミさん。女王様はあの人みたいになれって言ってるわけじゃないよ。私のお父さん、覚えてる?」
「はい、私とアキラにいろいろよくしてくださいました」
「お父さんは子爵だったけど、お父さんみたいな貴族を目指せばいいと思うよ」
「貴族? え? 私が、ですか?」
エリーネの説明で、ようやくキャリーが与えようとしているものの本質に気がついたようだった。
「あの、それをいただくとどうなるんですか?」
「この王国において、権力と土地が与えられます。差し当たってヨミ殿に任せたいのは、アキラ殿に断られてしまったフレードリヒやクリームヒルトの辺りを検討しているのですが……」
クラースが嬉々として説明していた。
ヨミの戦闘能力も宰相としては見過ごせない部分だろうからな。
俺に断られた以上、ヨミの能力を欲しがるのも当然だった。
俺としては、ここでヨミが伯爵になるのは反対する気はない。
人間と共生していきたいと願うヨミがこの世界で居場所を得ることはきっと意味のあることだから。
「それってどういうことですか?」
「町を再興させていただき、ヨミ殿が治めると言うことです」
「町を? じゃあ私の家も建てていいんですか?」
嬉しそうに言った。何しろヨミの夢だったからな。
「それはもう、お好きにしていただいて結構ですよ。何しろ、あの地はそこのテロリストが更地に変えてしまいましたから、ヨミさんの思い描くような町を作っていただけると、宰相としては嬉しい限りです」
「それじゃあ…………」
ヨミは瞳を輝かせて返事をしようとしたところで俺を見た。
「何だよ」
「……どうして、アキラは断ったんですか?」
「……キャリー、説明してもいいか?」
俺が断った理由を話せば、たぶんヨミも同じ答えを選択するであろうことは予測できた。
だから、爵位を与えるっていう決断をしたキャリーの許可を得なければ話せない。
「いいわよ。それと、クラース。あの土地を任せる貴族を別の人で検討しておきなさい」
「は? なぜです」
「ヨミさんは伯爵にはならないわ」
諦めたようにキャリーはため息をついた。
「貴族になって土地を与えられるってことは名誉なことなんだってのは、わかるか?」
「よくわかりません。それなら尚更アキラが断った理由がわかりません」
「貴族になるってことは、ヨミがこの世界で生きていくために、重要な意味を持つことになるかも知れない」
「ですから、私のことではなくてアキラのことを話してください」
焦らすつもりはなかったが、ヨミが伯爵になる利点もはっきり伝えておかなければならないと思った。
でも、ヨミにはあまり必要な情報ではなかったようだ。
俺はヨミの求める理由を話すことにした。
「伯爵になると、土地だけでなく権力も与えられる。一つの町や地方を任されると言うことはつまり、そこから自由に離れられなくなる」
「え、そうなんですか?」
ヨミは俺ではなくキャリーやクラースを見た。
「ええ、そうですね。冒険者の時のような自由はなくなってしまいますが……」
「あ、じゃあいりません」
クラースはまだ何か言いかけていたが、袖にするように断った。
「ど、どうしてです!?」
「それはもちろん、アキラと一緒に行動できなくなるからですよ」
まあ、そうなるよな。
キャリーもそうなることは織り込み済みのようで、まったく気にしていなかった。
「そそ、そんなことで……?」
「クラース、諦めが悪いわよ。何が大切か、価値観なんて人それぞれなんだから。でも、そうなるとヨミさんには別の何かを……ちなみに、欲しいものはあるの?」
「欲しいものですか? そんなの決まってるじゃないですか。私とアキラが住む家が欲しいです」
「へ、へえぇ。そう、家ね……」
不愉快とは違うし、悲しいでも、怒ってるでもない。
キャリーの苦笑いに含まれた感情は、俺には想像できなかった。
俺はさっきヨミが家を建てたいとか言っていたから心の準備は出来ていたが、キャリーはその部分をちゃんと聞いていなかったのかも知れない。
ヨミは自分の夢に向かって着々と準備を進めるつもりだ。
その事を正しく理解しているのは、ヨミの正体を知っているものだけ。
ルトヴィナが顔を隠して肩を震わせている。
さすがに笑い声だけは噛み殺しているようだった。
「い、家ね。わかったわ、でも……家を建てるには土地も必要なのだけど、ヨミさんにはないわよね」
「じゃあ、番犬の森……今は元番犬の森でしたっけ? あの辺りにでも建てていただければ」
「それはさすがに……ケルベロスがいなくなったとはいえ、あの辺りにはまだ魔物もいますし、大工が近づけませんよ」
クラースが冷静に指摘する。
そう言えば、この世界の土地の扱いってどうなってるんだろうか。
俺の世界じゃ人の住めるような土地はほとんど誰かのものだったが、王国って言うくらいだし、土地は王国のものって言う考え方なのかな。
貴族たちが地方を任されているが、それも王女が貸し与えているってことなんだろうか。
女王の伯爵への罰を考えると、取り上げることも出来たような感じがしたし、王国の土地は伯爵個人のものではないんだろうな。
だとすると、女王の許可無しには家が建てられないってことか?
「それじゃあ、どこに家を建てたらいいんですか?」
「ヨミ殿、ご安心ください。そこであなたが伯爵になればよいのです」
クラースも諦めが悪いな。
「それはいりません。家一軒分の土地だけください」
「……我が王国の法では、王国の土地を個人に所有させることは出来ないのです。それをご理解いただきたいですね」
やっぱり、王国って言うのは国そのものが王のものだという考えだってことか。
「クラース、伯爵を与えてもいいと思っているのよ。それくらいの土地は与えても良いんじゃないの」
「女王陛下!? 王国の法を自ら軽視するような発言は控えてください」
さすがにクラースが諫めた。
いくら女王といえど、国の在り方に関わるルールは胸先三寸で決められるのはよくないだろう。
「……ヨミさん。この話は私に預からせてもらってもいい?」
「はい」
「可能な限り、ヨミさんの希望がに沿うような形にすると約束するわ」
「ありがとうございます」
結局、この場ではヨミは何も得られなかったが、女王の約束という一番重いものをもらったのかも知れない。
「次に、私の印象を改善することに全力を尽くしてくれたエヴァンスね。あなたにも伯爵の地位を与えたいと思ってるわ」
「ぼ、僕がですか!? そんな、恐れ多い」
青い顔をして今にも吐きそうな表情をしているが、大丈夫か。
人の多いところが苦手だと言っていたしな。
そう考えると、人目を気にせずに撮影に集中していればよかった作戦中の方がエヴァンスにとってはマシだったのかも知れない。
AIの人選は完璧だったってことだ。
「いやあの、エヴァンス殿にも断られてしまうと、さすがに伯爵の数が……」
クラースが困り顔で焦っていた。
「……それにその、王国の政治に関わると……ギルドに行けなくなっちゃうし……」
ボソボソというエヴァンスの声は、そばにいた俺たちにしか聞こえなかったと思う。
ああ、そう言えばクリームヒルトのギルド支部の受付嬢に恋をしている様子だった。
この場にはもちろん彼女はいない。
ギルドの関係者って言うと、ハイルフくらいか。
「ハイルフ、ちょっと聞きたいんだが」
俺の発言に注目が集まる。
「何でしょう」
「クリームヒルトのギルド支部の受付嬢がいただろ?」
「ああ、はい。グロリアさんですか? 彼女は受付嬢じゃなくてクリームヒルト支部の代表ですよ」
「クリームヒルトの町がなくなっちゃったけど、彼女は今後どこのギルドで仕事をするんだ?」
「そうですね……支部の代表ですから、町が再興されればそこの支部でまた代表を任せられることになると思いますよ」
「ちなみに、ギルドの関係者は貴族との結婚は禁じられてたりするのか?」
「いえ、そのようなことはありませんよ。仕事は仕事、プライベートはプライベートですから。ジェシカさんのような方は自ら貴族との関わりを持たないようにするでしょうが、要は政治に関わらなければいいので」
ハイルフはこの場に出席はしているが、確かにただ見守っているだけだった。
「夫婦や恋人だと、そういうわけにもいかないんじゃないかって思うけどな」
「そのような関係で便宜を図るようなことが出来る組織ではありませんよ。ギルドというものは。それに、アキラさんの作戦の影響で、我々ギルドにも改革が必要だという声が上がっていますし」
「俺の?」
「フレードリヒ伯爵の件も関係しているのですが、間接的とはいえギルドが政情不安に手を貸してしまいましたからね」
例の捏造新聞か。それに加えて、俺たちの生中継。
どちらも王国の政治に多大な影響を与えたことは間違いなかった。
「アキラ、そういう話はここじゃなくて、ギルドでしてもらえる?」
さすがにキャリーが口を挟んだ。
「いいや、重要な話だったさ。エヴァンスにとっては」
「はあ? どういうこと?」
当のエヴァンスは何やら考え事をしているような格好をしていた。
俺は肩を組んで耳打ちする。
「エヴァンス。伯爵になって町を再興させれば、そこにグロリアが来る。同じ町で暮らすことになるってことだぞ」
「あ、アキラさん……」
「その意味がわからないわけじゃないだろ」
ゴクリとつばを飲み込んで、エヴァンスはキャリーとクラースに向き直った。
「あ、あの……伯爵の爵位、承りたいと思います」
「おお! そうですか! よかった!」
「……アキラ、何を吹き込んだの?」
「そういう言い方はないだろ、エヴァンスはやる気だぜ、な?」
「は、はい! 一日でも早く町を再興させて見せます!」
「そ、そう。やる気があるのはいいことだわ」
さっきとは一気に立場が変わってキャリーの方が気押されていた。
気を取り直すためのなのか、一つ咳払いをしてからエリーネを前に呼んだ。
「それじゃ、エリーネちゃん。もちろん、あなたにも伯爵の地位を与えます」
「女王様――いえ、女王陛下。ありがとうございます。謹んで承ります」
俺たちと違って、エリーネは素直に女王の言葉を受け入れた。
まあ、もともとエリーネはそのために冒険者をやっていたようなものだった。
断るはず無いんだよ。
若すぎるという異論が出なかったのは、やはりあの中継の効果だろうか。
エリーネも活躍していたからな。
「それでね、エリーネちゃん。あなたにはクリームヒルトの再建ではなく、金華国の領土をそのまま新たなクリームヒルトとして治めて欲しいのよ」
「え?」
「言っていたものね。救ってあげるべきだって」
「……私に……?」
「大丈夫よ、きっと出来るわ」
エリーネが不安げな瞳をさせたのは、ほんの一瞬だった。
キャリーだけじゃない、俺もヨミも……たぶん、あの話を一緒に聞いていたシャリオットやルトヴィナも信じている。
そして、魔法水晶を通して見ていた国民も同じ気持ちであって欲しいと思った。
それからの話は滞りなく進んだ。
オリヴィエも子爵から伯爵になった。
ディレックが新たな王国騎士団の隊長に任命され、ちゃんとした形で部隊を編成することになるみたいだ。
戦後処理の話は同盟国であるホルクレストとメリディアが立ち会う中で終了した。
そして、即日ルーザス=フレードリヒは処刑された。
断首刑だったそうだが、俺は見ていない。
エリーネは伯爵としても、そして直接の被害者としても出席した。
この辺りの価値観は共有できる気がしなかった。
死刑は俺の世界にもある。
それを否定する気はない。
ただ、俺の気持ちの問題だ。たとえ殺したいほど憎い相手でも、目の前で死ぬところを見たいとは思えないと思う。
ほんの少しタイミングが違っていたら、俺が殺していた相手だったってのに。
この辺りの甘さが、キャリーやクラースに気を遣わせたんだろうな。
そして、数日後。
ようやく全てに決着が付いてキャリーと落ち着いて話をする機会を得た。
俺とヨミとアスラ。そしてエリーネとキャリーは飛翔船に乗って旧クリームヒルト跡地へ向かっていた。
甲板に集まって、みんなで景色を見ながら俺はキャリーに話しかけた。
「キャリーにはまだ俺のことを教えてなかったよな」
「今さら、教えてもらう必要があるのかわからないわね。アキラのことは一緒に旅をしてきてよくわかってるし」
「だが、俺がこの世界の人間じゃないってことはわからなかっただろ?」
さすがにキャリーは口を開けたまま固まっていた。
「変身する能力は、俺の元の世界で得た力だ。極小サイズの機械――ナノマシンで構成されているネムスギアを使って変身する」
「き、機械? 魔法と違ってバリエーションも汎用性にも欠ける、あの?」
「この世界での機械の扱いってやっぱそうだよな。魔法の方が便利そうだもんな。だけど、俺の世界には魔法なんて力は存在しない。だからこそ、科学技術が発展したんだけどな。ちなみに、俺の世界だと機械で鉄の物体を飛ばすことが出来る」
「この飛翔船のように?」
「いいや、これより速い。飛行機と言うんだ」
「何だか、夢のような話ね」
「俺からすれば、魔法が飛び交う世界のほうが夢のようだ」
信じるか信じないかという話にならないのは、それを確認することに意味がないってお互いにわかってるからだ。
「それじゃ、まさか! 妹さんが行方不明って……」
さすがにキャリーは察しが早い。
「俺は世界を脅威から救った。だが、敵のいない世界に、俺の力は大きすぎたらしい。人類に危険視されて追放されたんだ。この世界に。その時に妹も巻き込まれた」
「……本当にこの世界にいるの? アキラの活躍も世界に中継されていたはずよ。同じ世界の人間なら、すぐに気がつくはずじゃない?」
「それは、これからの情報収集に期待だな」
「あ、そっか戦争中だったからギルドもそれどころじゃなかったものね。早く見つかるといいわね」
「そうだな」
「……ねえ、もし妹さんが見つかったら、元の世界に帰るの?」
「難しい質問だな。帰っても俺たちの居場所があるのかどうか……」
「もし、この世界で生きたいと願うなら、その時は私に言いなさいよ。公爵にするから」
「ま、保険だと思っておくことにするよ」
妹の気持ちも聞かなければならないしな。
「兄ちゃん、異世界の人間だったのか? すげー。ちょーイカしてる」
アスラが目をキラキラさせていた。
「こら! 今アキラは大切な話をしているんです。あっちへ行きましょう。いい眺めですよ」
そう言ってヨミがアスラを連れて船首部分に向かって行った。
「あの子は、本当に魔族なのよね?」
「それは、キャリーの方がわかってるんじゃないのか? 何しろ俺が寝てる間にヨミと一戦やらかしたらしいし。それに、魔力だって」
「それが、確かに戦ってるときは魔力を感じたのよ。でも、普段は普通の人間とたいして変わらないわ」
「例の、ミュウが使ってた幻惑魔法を使ってるってことか?」
「ううん。私の印象としては、魔法を使っているって言うよりも本能的に普段は魔力を抑えているみたい。無駄な魔力を放出させないため、なのかしらね」
その辺りのことは後で聞いておくか。
「取り敢えず、今のところは人間に友好的だと思ってくれ」
「今のところ? もう随分信用しているように見えるけど」
返す言葉はなかった。キャリーは確かに俺のことをよくわかっている。
「それよりも、花は用意してくれたのか?」
これ以上追求されると余計なことを言ってしまいそうな気がしたので、話題を変えた。
旧クリームヒルト跡地に向かっているのは、女王との約束を果たしてもらうためともう一つ、知っておいて欲しいことがあったからだ。
「もちろん、ケルベロスの被害者を追悼する約束だったからね」
「……実は、それだけじゃないんだ。キャリーが俺たちに複合戦略魔法を使うきっかけ、覚えているか?」
「忘れるわけないでしょ」
「あの時、俺たちのそばにいた魔物は、ヨミと同じ考えを持つ魔物たちだった可能性がある」
「え…………」
それまでの雰囲気とは一転し、ヨミの表情は険しいものになった。
「人間に友好的な魔物だったってこと?」
「少なくとも俺たちにはそう話していた。そのせいで魔族に目をつけられたらしい」
「まさか、ミュウ?」
「結果から見ればそうだろうな。ミュウたちにとって邪魔だった魔物を、キャリーを利用するための道具にした」
「そんな!? それじゃ、私が……」
「本当のところを確かめる術はない。俺も見極める余裕はなかったからな。俺はこれから人間を襲う魔物――いや、命を粗末に扱う魔物とは戦うが、それ以外の魔物とはきちんと話を聞こうと思う。キャリーも、その事を頭の片隅でいいから留めておいて欲しい」
今はまだごく少数かも知れないが、アスラの話が本当なら魔王にだって話の通じる奴がいるかも知れない。
そして、この世界の人間も魔物や魔族の中にも話が通じるものがいると気付かなければならないと思う。
エリーネのようにそれを認めてすぐに受け入れられる人間は少ないが、キャリーだってヨミを受け入れたなら、いつかきっと……。
それで魔族との戦争が回避できるなら、それがこの世界にとって一番じゃないか。
「……変わらなければならないのね。私たちも……」
キャリーはもう自分を責めたりはしなかった。
それを求めて明かした話ではない。
俺も彼らを助けられなかった。
生き残った俺たちが何をするのか、それが大切なことだ。
この世界の行く末に関わる気はなかったのに、もう逃れられないような気がした。
長かった。本当に長かった第二章もこれにて終了です。
ここまでお付き合いいただいた読者の方にはありがとうございますと言うよりはお疲れ様でしたと伝えたい気分です。
長くなってきたので、そろそろ章ごとに区切ろうかなと考えています。
そして、次話から第三章です。
予定としては第二章ほど長くはならないと思うのですが……。
引き続き、よろしくお願いします。




