作戦会議
確かに。バルバルトは「対価は払ってもらう」と言っていた。しかし、それでもこれはなんというか…
「詐欺だろ!!!」
「何言ってんのさ!俺は正当な対価をお前に求めてるだけだぜ?まーもっといえば『組織が』かな。今日使った金もぜーんぶ支給されたやつだしネ!!」
策士だ。こいつは策士だ。
「そう睨むなよ~。俺だって好きでこんなことしてるわけじゃないんだしさ~」
「お前の言葉は嘘にしか聞こえねーよ全く…」
「ロート、これ、私のせい…?」
フランが状況を察してか俺に聞いてくる。
「いや、こいつに頼んだ俺のせいだ、気にすんな」
「そうそう!よーやく認めたか!!じゃあこれ、仕事の概要ね」
いつもの様に封筒を渡してくる。
どちらにせよ拒否権はないってことね。
「おーけーおーけー。わかった。どうせまた面倒な仕事なんだろ?資料には帰ったら目をとうしておくから安心しとけ」
「そうそう、言い忘れてたけど、今回の仕事は俺も始めから参加するからヨロシクね!」
前回は俺を囮にしていいとこどりしたもんな。
「久々にお前と2人での仕事か。失敗する気しかしねーぜ」
「またまた〜!俺と一緒に組んだ仕事で失敗したことないじゃんさ~!」
…ムカツクが事実であるから反論できない。
失敗しねーかな、この仕事。
そんな事を考えてると、話を聞いていたフランが一言、こう言った。
「私も、ロート達の仕事手伝う」
今回の仕事の内容は、前回の仕事の延長線上にある様なものだった。前回の仕事で違法魔導兵装を製造していた社長は始末したが、肝心の違法魔導兵装が見つからなかったのである。どうやらこの国のレジスタンス達がひと足早く根こそぎ買い取っていたらしい。
…確かに、1度も違法魔導兵装の使用者と対峙しなかったからな。おかしいとは思っていたんだが。
今回の仕事はそのレジスタンスの戦力を削ぐ事だ。もっと簡単に言えば、買い取った魔導兵装を破壊することになる。
「戦力的には充分だけど…。お嬢さんの知り合いと出会うかもよ?ホントに参加するの?」
「大丈夫。仕事に私情を持ち込まないのは人を殺す上で一番大事なことだから。それに、ロートがこの仕事を受けたのも私のせいだし」
あんな危険なものを買う連中なんて限られている。レジスタンスか頭のイカれた連中だ。そして今回の目標としている奴らは、おそらく常連客だったのだろう。だからこそ、社長が俺達殺し屋に狙われていることも知っていた。でなければ、『社長が殺される前に全て買い占める』なんてふつーはしない。
つーか、フランまだ気にしてたのかよ。別にお前のせいなんて思ってねーんだけどな…
「まぁ、本人もそう言ってるし、大丈夫だろ。リスクが減るのも確かだし」
1番大切なのは、『仕事から生きて帰ること』だ。『仕事を達成すること』じゃない。それを俺もバルバルトもよくわかっている。だからフランの同行にも否定的ではないのだ。
「さて、じゃあフラン。仕事を始める前に確認しとくぞ。お前の得意な魔法と苦手な魔法を教えてくれ」
そう。これは仕事をするにあたって大事な質問だ。
仲間の能力を把握しておかなければ、どこまで任せていいのかも判断出来ないからな。
…?フランが不思議そうな顔をしている。何だ?何かあるのか?
「得意な魔法?苦手な魔法?それって何?」
こいつまじか!!そんな事も把握していないのかよ!!学がないのはしっていたがまさかそこまでとは…。
「いっちょ説明してやってくださいよロートサン!!」
「お前は少し黙れよな…」
「?」
フランが一層不思議そうな顔をしている。仕方ない…説明するしかないか。
「えーとな、フラン。お前やバルバルト、人間が使う魔法には必ず一人ひとりに得意な魔法と不得意な魔法ってものが存在する。それは努力とか、センスとかで補えるものじゃなく、『そういうもの』なんだ。」
俺は続ける。
「例えばお前のその瞬間移動の魔法だが、それはかなりめずらしい魔法だ。理由は簡単。多くの奴らは瞬間移動の魔法は不得意、もっといえばつかうことすらできないからだ。それと同様にお前にも使えないものがあるはずだ。逆に得意なものは、その効果を100%引き出せる。それを知りたいんだが…」
フランの頭の上には『?』マークがいくつも出ていた。
こいつ、今までよく生きてこれたもんだな。
「ったく仕方ねーな。じゃあ、仕事の時によく使う魔法だけ教えてくれ。」
「それなら…」
フランに教えなくてはいけないことが一つ増えたようだった。