其の八
繰子は聞いた一部始終を一番理解出来ていなかったであろう於珠に話した。
「けどなぁ、まだ何かある言うんよ。何やろ。何遍聞いてもお前にはまだ早い言うて教えてくれんねん」
不思議そうな顔をする。
「於珠ちゃんはわかる?」
眉を下げながら横に居る少女に改めて聞く。
「・・・ふぅん、なるほどね」
少女には判った様だった。
「え、判るん?なぁ、教えてやぁ」
「確かにあんたにはまだ早いかもね」
意地の悪そうに少女は笑った。
その後暫くして於珠は再び土産屋へと向かった。その後二人がどうなったのかを聞く為に。相変わらず噂好きな女主人は話したくて仕方がないようだった。
聞けば男は、父親に頭を必死でを下げ続けたらしい。しかし中々受け入れてもらえずに最後にはゆねと一緒になれないのならば死ぬとまで言ったらしい。そこまで言われて、結局父親が折れる形で事は収まったのだそうだ。
――死ぬ、か。
「勿論一人で、ってわけじゃないわよね」
ぽつりと言った。
そうそう、明後日は祝言よと最後に女主人が思い出すように言うのだった。
女は、於ゆねは、きっと引き止めて欲しかったのだろう。自分が手切金を受け取っても、それでも尚、男の自分への思いが消えないのかどうか確かめたかったのだろう。そして待っていたのかもしれない。男が迎えに来てくれるのを。けれど男は待っても来ずに、このまま他の男に抱かれ続けるくらいならば、と死を覚悟したのか。
めんどくさい。於珠は心底そう思った。
女心と秋の空。
見上げた空は、いと高く晴れていた。
了




