運命の輪
とある国、国営カジノにて。いつもは騒がしいものの人だかりができることは決してなかったが、今日はいつもとは違った。
カジノの客の、およそ9割がルーレットコーナーに集まっていた。
「おいおい、あの娘すげえな……」「これで何連勝だっけ?」「確か、78連勝のはずだよ。」「違う違う、これで97連勝さ」「まあレート低いやつばかりだしな」
ザワザワの中心には、ある少女とディーラーがいた。積まれてるチップは山のようで、少女の座高よりはるかに高く積まれていた。
うるさいなぁ。と口を小さく動かす。観衆の目は彼女は得意ではなかった。
めんどくさい。そう思った彼女は、さっさと終わらせることにした。
「ディーラーさん、あと3戦で終わらせましょう。全部勝ったら私の勝ち、そうでない場合は全部差し上げます。オールシングルベットで。」「……かしこまりましたお嬢さま。では始めましょう。」
カラカラカラ……銀球がルーレットのレール上を転がり始めた。観客のだれもが静かに見守る。
「……黒、28に。」その数10秒後、まるで予言したかのように、球は黒の28に吸い込まれた。観客全員がざわつく。
はじめは少女以外の誰もがまぐれだ、たまたまだと思っていた。しかし、その次も少女は見事に的中させた。
「次で100戦目だ。」「私は今、伝説の瞬間を目の当たりにしているのかもしれないわ……」「どっちが勝つんだ……?」「ここまでワクワクするルーレットは見たことねえ!」
銀球が回転をはじめる。すぐさま彼女は目を閉じ、ため息をつきながらこう言った。「赤、13。」
誰もが息を飲み、静寂が包む。そして、銀球は────吸い込まれていった。赤の────13に。
直後、歓声が上がった。伝説の瞬間を目の当たりにした喜びが、観客をつつんだ。
「それじゃ、私帰るわ。楽しかったわ、ありがとう。」「またのお越しを、お待ちしております。」恭しく、紳士的にディーラーは頭を下げた。
この後駆けつけた記者がこの様子を見た観客にインタビューを行った。彼女が何者か、誰も知らなかったが、皆が彼女を英雄を見る子供のような目で語っていた。その中でひとり、こんなことを言ったものがいるという。
「あれは凄かったよ。最初はまぐれだろって思ってたんだが、ありゃ違うね。彼女はわかってたんだ。」