第一話 つまずき
初めての作品です。
趣味全開で書きます。
長く続けられるよう頑張るのでよろしくお願いします。
「こんな重いスーツじゃ動けませんよ!博士‼」
「甲冑のようなモノ」を身につけた青年が泣き言を言っている。
「外装だけなんだからピーピー喚くな!いつまでたっても情けない男じゃのう…」
博士と呼ばれた老人は手元から目を離さずに作業を続けている。
時折ブツブツと独り言を言うが、手は片時も休まない。
「こんな奴にバケモノ退治が務まるのかのう…」
世界各地である時期を境にして謎の怪事件が多発した。
原因は一切不明。
唯一わかったことは人々を脅かす敵が人間ではないということだけだった。
人々の混乱を避けるためにこの事実は世間に知らされることはなく、真実を知るのは一部の者のみとなっている。
そして現在、バケモノに対抗するために彼らがいるこの地下研究所では日夜様々な実験や研究が行われている。
研究所の一部であるこの第8ブロックではあちこちに試作段階の兵器や道具が置かれ、足の踏み場もない。
それでも彼らは造ることを止めない。
拳銃程度では死なないバケモノを倒すには既存の兵器ではあまりにも心許無いからだ。
「だいたい一人で着脱出来ないところからして欠陥品なんですよ」
青年は文句を言いながら「甲冑のようなモノ」を脱がしてもらう。
「確かにマコトの言うとおりだな」
と青年の着脱を手伝っている男が言った。
「やっぱりタクヤもそう思うだろ?」
とマコトが返事をする。
「ごちゃごちゃ言っとらんでさっさと脱がんか‼」
と博士は二人を怒鳴りつけた。
二時間かけてやっと「甲冑のようなモノ」を脱ぎ終えた後、食堂で夕食のカレーを食べながらマコトは博士に尋ねた。
「外装だけで100キロ越えてるなんてヤバイんじゃないですか?戦闘出来ませんよね?」
「最終的にはどれくらいの重量になるんですか?」
タクヤも同様に疑問をぶつけた。
「最終的には300キロをオーバーする予定じゃ。動力や武器を搭載するからのう。」
「…二人ともそんな顔をするな。基本的には地上で作ってるモノと変わらんよ。」
介護用パワードスーツの開発及び実験を行っている大企業の裏の顔。
それがこの地下研究所だ。
地上で開発された介護用パワードスーツの技術を応用して戦闘用パワードスーツを作る為に地下研究所は存在している。
地上と地下は基本的にはまじわることなく独立して存在している。
しかし、実際のところは戦闘用パワードスーツで計測されたデータが介護用に応用されるている。
ここ数年でのめざましい発展はほとんどが地下研究所で生まれた技術に基づいている。
「なら、大丈夫そうだな」
「当たり前じゃ」
と言って博士はにっこり笑った。
「さあ、早く作業に戻るんじゃ!こうしている間にもヤツ等は人々に危害を加えているんだぞ‼」
「イエッサー!」
「頑張ります!」
二人は元気に返事をして作業に戻っていった。
「…試作一号機の失敗を繰り返すわけにはいかないのじゃ」
博士の小さな呟きは二人の耳には入らなかった。
「よし、そこにあるモーターを関節部分に接続してくれ」
「オッケー出来たぞ」
マコトの手元には試作二号機の腕部があった。
「しかし重すぎやしませんかね。コレ」
不満そうなマコトを見てタクヤはため息をついた。
「またかよ。第3ブロックの連中がこれ以上は無理ですって言ったんだから、無理なものは無理なの」
「実際戦うのは俺なんですよ⁉もっと軽い材質を使えばいいのに」
「試作一号機みたいに強化プラスチックにするか?瞬殺だぞ。お前」
「わかってますよ。はぁ」
マコトは暫くブツブツ言っていたが、タクヤが無視していることに気付いて黙った。
「さて、そろそろ完成した頃かの」
博士はそうつぶやくと二人のところへ向かった。
「どうだ⁉完成したか⁉」
「バッチリですよ博士」
「動作のテストをしますか?」
「よし、始めてくれ」
嬉しそうに博士は返事をした
「タクヤ、手伝ってくれ」
「ああ」
二人は慣れた手つきで装着してゆく。
「完了です。博士、電源を入れてください」
「よしきた!ポチっとな‼」
試作二号機のモーターが鈍い音を立てて動き始める。
『聞こえるか?マコト』
無線通信で音声が聞こえてくる。
戦闘中は無線通信で常に本部からの指示を伝えることができる。
「バッチリですよ!」
『良いぞ!歩いてみるのじゃ‼』
「まずは、歩きか…」
「まあ楽勝だな」
マコトは初めの一歩を踏み出した。
その瞬間…
試作二号機は地面に倒れこんだ。
「ッッッ⁉」
マコトはなす術もなく地に這いつくばる。
『なぜじゃ⁉なぜ倒れた⁉』
「バランスが全然取れません‼」
マコトが叫んだ。
「…博士。もしかしたら…」
「なんじゃタクヤ⁉」
「重すぎるのでは…ないでしょうか?」
「なに⁉」
「普通に身体を動かす感覚ではバランスを保てないのでは…」
「…失敗じゃな。これではまともに戦えん。別のプランを検討しよう…」
三人の前に高い壁が立ちはだかった。
まだまだ当分バケモノは出てきません。
寛容と忍耐の心でどうか待っててください。




