エピローグ
冒険者ギルドや魔導騎士団、獣人族達と共に呆然と崩れていく魔王居城を見つめる。デモンズアーチは既に崩れ落ち、魔物達も見る影もない。
「結局、どうなったんだ・・・?」
冷静さを失わないのは、戦士としての特性か。リョーがナギに尋ねる。
「・・・どうもこうも、翼主が魔王を道連れにした。それだけよ」
「・・・ナギ?」
「・・・これが約束だったのよ!邪魔はしないって約束して、必ずやり遂げさせるって誓ったの!!・・・あたし達は、ただそれだけのために、あの子を犠牲にするために魔王のもとへ行ったのよッ!」
「っ・・・ナギ様!」
激高するナギをココが抱き留める。
「っ、止められるわけ、無いじゃない!そうでもしなければ、魔王は滅ぼせないんだから!」
「私達は・・・何も出来なかったんだよね・・・」
俯くミオンの肩にそっと手を乗せ、タスクは微笑む。
「俺達は、俺達の役目を果たしたよ。・・・キララを魔王の元へ連れて行った。たったそれだけで、良かったんだ。・・・魔王の元へ行くことは、キララだけでは出来ない。全てが揃わなければ・・・」
「俺達は魔王の前では無力に等しい。・・・魔王はこの世界を創った神自身なんだからな」
首肯しながらエサカが言うと、ルザナも同意する。
「そうね・・・」
「でもっ・・・キララだけが犠牲になって・・・」
「犠牲になどなっていませんよ」
カナが泣きじゃくって言うと、タスクがそれを否定する。
「・・・え?」
「タスク・・・?」
全員の視線がタスクに集まる。タスクは柔らかく微笑む。
「いずれ、この世界の神と共に戻ってきます。・・・今度は、神の妃として・・・」
もう、魔王におびやかされることは無い。
闇は消え去り、人々の心を覆っていた不安は解消された。
偶然を装った必然により、古の約束は果たされた。間もなく神は眠りから覚めるだろう。闇の心をその身に宿して。
それを支えるのは、白き翼を持つ神の妃。皆の脳裏に美しい翼を広げるキララの笑顔がうかんだ。
結.