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【Unique Online】  作者: 地味な男
第一章 第一層攻略編
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第9話 vs.堕天使ルシファー

 ルシファーの斬撃を、サンダースとバーチカルソードをクロスさせることで受け止める。

 ガギイイイィィン!!

 凄まじい効果音が鳴り響き、俺はルシファーに力ずくで飛ばされ、壁に衝突。ずり落ちるときにHPバーを見てみたが、四分の一を削られていた。

「このダメージ……反則だろ……」

 ルシファーとの戦いが始まり、そろそろ十五分が経とうとしている。しかし、俺たちはルシファーにほとんどダメージを与えられていない。

 ルシファーのHPバーは二本ある。現在、ルシファーの残るHPは、バー一本と、半分になったバー一本。つまり、五人掛かりでたったの四分の一しか、HPを削れていないのだ。

 そして今、俺たちはピンチである。

 アスカのMPは50を切り、後二回魔法を使えるかどうか。カインとヘディのHPも、レッドゾーンに入っている。グレムも、後一発しか打てない。

 そして俺は……サンダースに、ひびが入っている。

 さらには、回復アイテムが底を尽きかけている。

 俺はよろよろと立ち上がり、他の四人に指示を出す。

「一回引こう!」

 俺たちは部屋を出た。




 ―――




「くそっ、何なんだよあの強さは!」

 太刀を鞘に納め、回復を済ませたカインが毒づく。

「レベルの差が大き過ぎるんだ。ルシファーのレベルは20だからな……」

「そんな化け物……どうやったら倒せるのよ……」

 暗く沈んでいるグレムとヘディ。完全に戦意を喪失しているこの二人に、もう一度ルシファーと戦えと言っても、それはもう無理だろう。

 アスカとカインは……聞いてみるか。

「アスカ、カイン」

「どした?」

「何?」

 二人が俺を見てくる。

「また、戦えるか?」

「まさか、また戦うの!?」

 アスカが驚きの声を上げる。

「当たり前だ。そうしないと、地上には上がれない」

「でも、アレンとルシファーのレベルの差は、7もあるんだよ!?無理だよ……」

 完全に諦めているアスカの頭に手を乗せ、優しく話しかける。

「大丈夫だって。俺は絶対死なない。決めたろ?絶対、三人揃って現実世界に帰ろうって」

 アスカは、泣きながら「でも……」と言っている。

 俺はそれ以上アスカと話していると辛くなるだけだと判断し、立ち上がった。

 カインに話しかける。

「カイン。お前はどうだ?」

「俺か?えー……と、まあ、行けると思うぜ」

「カイン。無理なら無理って言ってくれ。その方が、良い」

 カインは、黙った。

 俺はそれを見て、笑顔を作る。

「じゃあ、行ってくる」

 四人に背を向け、右手を振りながら、俺は再びルシファーが待つ部屋へ入った。




 ―――




『ほう。逃げたと思ったが、まさか戻ってくるとは……。しかも一人で』

 機械的ではない、まるで、本物の人間が喋っているような声で、ルシファーが喋る。

「お前……喋れるのか」

 モンスターが喋れるって、前代未聞だぞ。まあ、別に良いけど。

「まあいいさ。俺はお前を倒してあの階段を上る。そのために、本気で行く。だから……」

 そう言ってサンダースとバーチカルソードを鞘から抜き、バーチカルソードの剣先をルシファーに向けた。

「……だから、お前も本気で来い」

 そう言い、俺は剣技『雷剣』を発動。雷が二本の刀身を包む。

 そこまで見たルシファーが、高らかに笑う。

『はっはっはっ……。貴様、あの時は本気ではなかったのか?』

「当たり前だろうが」

 ――スペシャルスキルを使ってない時点で。

 俺が一回目に戦った時にスペシャルスキルを使わなかった理由。それは、味方を巻き込む可能性があるからだ。

 このUnique Onlineでは、(プレイヤー)(キル)が出来る。つまり、他のプレイヤーにダメージを与える事ができると言うことだ。

 まあ、俺からすれば、迷惑なだけのシステムだが。

 それに、『双剣』のスペシャルスキルは、攻撃範囲が大きい。

 そんな訳で、俺はスペシャルスキルを使わなかったのだ。

「無駄話は止めて、行くぞ」

 そう言い終わるや否や、俺はバーチカルソードを突き出しながらルシファーめがけて突っ込んだ。

 ルシファーは俺の攻撃を右に移動することで回避し、側面から俺の右の脇腹を狙って漆黒の剣を突き出してきた。

 それをギリギリで回避し、全力で右に飛ぶ。

「剣技発動!『雷刃』!!」

 着地と同時に、刀身に宿る雷を全力でルシファーの顔面に飛ばす。

 ルシファーはそれを漆黒の剣で凪払い、俺に向かって走り出した。

「(これは初級の剣技だけど、やっぱりあれは反則だろ……)」

 スキルを凪払うって……さすが、レベル20は伊達じゃない。

 まあ、俺のレベルとの差が7って言うのもあるんだろうけど。

「さて……と。使うか」

 俺はそう言って二本の剣の柄を逆手に持ち替え、ルシファーに向かって走り出した。

 走りながら剣技を発動。二本の刀身を雷が包む。

 充分に近づき、サンダースを振り上げる。が、ルシファーはサンダースに漆黒の剣をぶつけ、左上へと軌道を変える。

 剣技とは、二連撃以上の場合、軌道を逸らされた時点で強制的に終了させられる。しかしそれは、武器が一本の時。

 武器を二本使う俺の場合、片方の軌道が逸らされたとしても、もう片方は止まらない。

 ガアアァァアン!! と、凄まじい金属音が響く。

 俺は柄を持ち替え、バックステップで下がって距離をとる。

「『双雷逆刃(そうらいげきじん)』でも無理なのか……」

 二連撃技は一応成功したが、倒すべきモンスターの体には触れていない。

 あの漆黒の剣一本だけなら問題はない。パワーでは負けるが、剣技の手数では俺が上回る。

 問題は盾だ。

 手数で上回れたとしても、盾で斬撃を防御されてしまう。

「(これからどうすれば……)」

 何の策もない今、ひたすら剣技を使っていくしかないのか……。

 ルシファーを睨み付け、両膝を軽く曲げる。

「(やってみるしかない!)」

 両膝を一気に伸ばし、前進した。




 ―――




 ――すげえ。

 ルシファーと戦っているアレンを見て、カインはそう思っていた。

 最弱のスキルである『小さくなる』。自分の知る中で、一度の剣技発動で最も相手に攻撃できる回数が多い、攻撃重視である最強の武器、『双剣』。

 その二つを持つアレンが今、五人掛かりでも倒せなかった――いや、全体の四分の一しかHPを削れなかったモンスターと、たった一人で戦っている。

 一度戦ってみたことがあるカインは、アレンは強いと思っていたが、やっぱり強かった。

 しかし。

「ぐっ」

 アレンが『双雷逆刃』の次に発動したスペシャルスキルの最後の一撃が防がれ、ルシファーに弾き飛ばされた。

 床に座り込むアレンに、ルシファーがゆっくりと歩み寄っていく。

 アレンを注視すると、HPが半分より少し多めまで減少していた。対するルシファーは、ダメージを一切受けていない。

 ルシファーのあの一撃。

 やはり、アレンとルシファーの間に立つ、7と言う数字の差は、それほどまでに大きい。

 よく叩いたり殴ったりしているアレンだが、カインをいつも助けてくれる、大切な友達であり、大切な幼なじみ。

 そんな大切な人が今、窮地に立たされている。

 気が付くと、カインは太刀の刀身を炎で包み、ルシファーに向かって走り出していた。




 ―――




「(『双雷逆刃』だけじゃなく、『雷剣の舞』も通じないとは……)」

 ――本物の化け物じゃん。

 しかし、諦める訳にはいかない。

 『諦める=死』と言うこの世界で、諦める訳にはいかない。

 壁に背中を預けながら、何とか立ち上がる。

 顔を上げると、そこには漆黒の剣を振りかぶった、背中に六枚の黒翼を持つ堕天使の姿。

「(まずい……)」

 と、そう思った時。

「うおおおおおおっ!!」

 刀身を炎で包んだ幼なじみが、走ってきていた。

 カインはそのまま走り続け、加速。太刀を上段に構え、ルシファーに太刀を振り下ろす。

 ルシファーはその斬撃を盾で防き、爆音が響く。

「ぶっ飛べ!!」

 カインがそう怒鳴ってから一秒後、太刀を包んでいた炎の火力が倍化。その威力を防ぎ切れず、ルシファーは吹っ飛んでいき、壁に背中を打ち付けた。

 それでも、ルシファーのHPは一割しか減少していない。

 残りのHPは、バー一本と四割まで減ったバー一本。

 ルシファーを倒すには、まだまだ時間がかかりそうだ。

 それにしても。

「カイン、ありがとうな。お陰で助かった」

「礼なら後で言ってくれ。今はあの堕天使をどうするかだ」

「ああ、そうだな」

 とは言ってみたが、どうしたものか。

「これで二対一だ。数的には俺たちが有利だけど、こっからどうすんだ?」

「まさかカイン。何も考えずに来たのか?」

「気が付いたら走ってた」

「マジかよ……。でも、これで勝機ができた」

 カインが俺を見る。

「どうすんだ?」

「俺がアレ(・・)を使うから、ルシファーに隙ができたらそこに突っ込め」

 カインの頬が緩んだ。

「アレ(・・)……俺が負けたヤツか」

「ああ。でも、これが通じなかったら、ルシファーは倒せない。一世一代の賭だ」

「ははっ、あの剣技なら問題ねえだろ」

 俺とカインは互いに顔を見合わせ、同時に頷いた。

 立ち上がったルシファーを視界に捉える。

 俺は全力で地面を蹴り、一気に距離を積めて肉薄。着地と同時にバーチカルソードの腹をルシファーに叩き付け、少し下がる。

 両足を肩幅に開いてサンダースをだらりと下げ、バーチカルソードを肩に担ぐように構える。

「(剣技発動……)」

 二本の刀身が雷に包まれる。その雷はこれまでに無いほど強く発光し、バチチチチと音を立て始めた。

「『雷撃連斬』!!」

 肩に担がれたバーチカルソードを一旦肩から浮かし、振り下ろす。直後、バーチカルソードの刀身を包んでいた雷が刀身を離れ、ルシファーに向かって飛んでいく。

 バーチカルソードを振り下ろしたと同時に俺は走り出し、ルシファーが一撃目を剣で凪払った時、俺は至近距離まで接近していた。

 ブレーキをかけるように右足で踏ん張り、だらりと下げていたサンダース素早く逆手に持ち替え、勢いに任せて振り上げる。

 ――ズバッ

 俺はここで初めて、ルシファーにダメージを与えた。が、これで二回。まだまだ『雷撃連斬』は終わらない。

 サンダースを振り上げた瞬間、次にバーチカルソードを逆手に持ち替えて振り上げる。

 血を思わせる赤いエフェクトライトが光る。

 両手を一旦柄から離し、再び持ち方を変える。

 強く柄を握り、一気に、振り上げたままの二本の剣を振り下ろす。

『ぐあああああっ!!』

 ルシファーが悲鳴を上げ、剣を振り回す。俺の右の太ももを掠ったが、大したダメージではない。気にすることはない。

 両腕を振り切り、遠心力を利用し、回す。バタフライの腕の動きのように。

 そして、サンダースを左上から右下へ。バーチカルソードを右上から左下へ、振り下ろした。

 ルシファーの体から大量に出現した赤いエフェクトライトが視界を埋める。

 これが、俺が現時点での最強のスキル。七連撃剣技、『雷撃連斬』だ。

 と、次の瞬間、俺はルシファーの盾で殴り飛ばされていた。

 一瞬自分のHPを確認。俺の残りHPは、僅か22だった。

「くっ、行けぇ!」

 そう指示を出した直後、俺は床に何とか着地。5のダメージを受けた。

 その直後にカインを見る。

 カインの剣技が、ルシファーの盾を一刀両断し、炎がルシファーの左手を焼いていた。

 ルシファーがカインを斬ろうと剣を振る。カインはそれをバックステップで回避し、俺が居る場所まで下がってきた。

「俺とアレンの攻撃でも、倒せねぇのかよ!」

 カインの言葉を聞き、急いでルシファーを注視。HPバーがどうなっているかを見る。

 ルシファーの二本ある内の一本のHPバーは無くなっていて、もう一本は残り三割。HPバーが村のない赤に染まっていた。

 ルシファーを倒すことはできなかったが、ここまでHPを削れば上出来だろう。

 俺はHPを回復させながら立ち上がり、ルシファーを見ながらカインに言う。

「後三割だ。一気に決めるぞ」

「おう。もう一発かましてやるぜ」

 HPが八割まで回復したことを確認し、ルシファーに向かって走り出そうとした。

 その時。

 ルシファーが、剣を手放した。

「(何をするつもりなんだ?)」

 そう思って見ていると、ルシファーは六枚の黒翼を限界まで天井へ伸ばした。そして、その黒翼を振り下ろし、飛翔。天井の近くまで飛び上がり、翼を伸ばして滞空し始めた。

『なかなかやるな。しかし、ここからは本気で行くぞ!』

 ルシファーが、漸く翼を使う時が来た。

「お、おいアレン……サンダースが……」

 カインが慌てたように言うので、俺のサンダースを見た。

 そこには、刀身が粉砕し、柄だけの剣が握られていた。

 恐らく、これだけ派手に壊れていたら、修復は不可能だろう。

 俺はサンダースの装備を解除し、それを部屋の端に放った。

 そして、スペアとして所持していた片手用直剣、『鋼の剣』を装備。

 『鋼の剣』はサンダースよりも性能は低いが、双剣として装備は出来る。ただ、俺が気になるのは、『鋼の剣』の耐久力が持つか、だ。

 そこまで考えて、俺はバーチカルソードを縦に思い切り振り下ろした。 考えても仕方ない。やるしかないんだ。

 俺が顔を上げるのと、ルシフィーが行動を開始するのは、ほぼ同時だった。






To Be Continued.

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