第8話 最下層
「いってぇ~~……」
落とし穴に落ちた俺たちは、ただひたすら痛みに耐えていた。と言っても、システムに痛みは軽減されているから、大した痛みではない。が、痛いものは痛い。
起き上がり、周囲を見渡してみる。
ちなみに、HPは減少していなかった。何故だか分からんが、これはこれでラッキーだ。
いち早く復活したカインが、てくてくと歩き回っていた。
カインの近くまで行き……殴った。
「な、何すんだよアレン!」
「五月蠅い!お前とグレムがせっかちだからこうなったんだろうが!少しは反省しろ!!」
「……すんません」
カインに頭を下げさせていると、赤毛の少女が歩いてきた。ヘディだ。
「二人してどうしたの?」
「このバカを叱ってたんだ」
「あー……なるほど」
何事もしつけは大切だ。
「アスカとグレムはどうだ?」
「その二人なら、あそこに居るわ」
そう言ってヘディはある一点を指さした。
そこには、黒髪の魔導士と緑髪の銃士が居て、何か話している。
さて、全員目覚めたところで今後の方針を決めますか。
―――
俺の右隣にアスカ、次にカイン、グレム、ヘディの順で並び、円を組んでその場に座った。
「とりあえず、これからどうすればいいか決めようと思う」
俺の言葉に、グレムが言葉を返してくる。
「ハルトとテレパシーはできないのか?」
確かにその手もあるだろう。しかし。
「今はそれはできない」
俺の答えに、カインが疑問をぶつけてくる。
「何でできねえんだ?」
「さあな。俺はそこまで詳しくないからな。所有者のハルトなら分かると思うけど……」
「まあいいわ。新しいのを考えましょう」
ヘディが話題を変える。
「やっぱり、ここを探索するのが一番じゃない?ここが今どこかも分かってないから、知る必要もあるでしょ?」
アスカの提案に、俺たちは頷いた。
グレムが呟く。
「それで良いけど、どうするんだ?」
「どうするって、何をよ」
ヘディの質問に、グレムが答える。
「この五人全員で行くのか。それとも二つのグループに分かれるのかってことだよ」
「まあ、それは二手に分かれて探索した方が良いんじゃない?だって、その方が効率がいいし。これで良い?」
ヘディが急に話を振ってきた。
まあ、俺は別にそれでも構わないけど……。
「俺は良いけど、カインとアスカはどうだ?」
「「まあ、良いんじゃない?」」
二人の声がハモった。
まあいい、とりあえずOKってことか。
ヘディに向かって親指を立てる。
「じゃあ、それで決まりってことで」
ヘディは笑顔で言った。
「どう分けるの?」
「それはまあ、いつものパーティメンバーで良いんじゃねえの?」
アスカの質問にカインが答える。
「まあ、それで良いだろ。ああそうだ」
俺の言葉に四人が反応する。
「フレンド登録をしておこう。次の層への階段を見つけたら、その場で連絡するって形で。もしもモンスターが居るなら、合流するまで動かない。それで良いだろ」
一通り顔を見渡す。
全員顔を縦に振っていたから、異論はないらしい。
「よし、早速行くか」
グレムの声で、俺とアスカ、カインは右へ。グレムとヘディは左へ進んでいった。
―――探索開始から十分後―――
「これは……凄いな」
思わず、感嘆の声が漏れる。
カインとアスカも、俺と同じように、今目の前に広がっている景色に見とれている。
俺たち三人の前には、つい先ほど発見した大きな部屋がある。その部屋の中を、部屋の中へ入らずに見ている感じだ。
見た感じ、部屋は円形だろう。
部屋の中にはいくつもの金属の棒が立てられており、その頂点は部屋が暗い影響で見えない。
部屋の中に入れば分かるかもしれないが、この部屋は絶対に何かある。そんな気がして仕方がない。
と、言う訳で。
「グレムとヘディにこの事を伝えよう。二人と合流した後、この部屋へ入る。それで良いか?」
アスカとカインは、顔の向きを変えないまま頷くだけだった。
多分だけど、この二人は天井がどうなっているのか、ここで見ようと必死になっているんだろう。
……やばい。無性に蹴りたくなってきた。
まあ、そんな事はしないけど。
『部屋を見つけたから、俺たちの所まで来てくれ』
と、こんな感じのメッセージをグレムへ送った。
ちなみに、メニューにはフレンドというものがある。
フレンドをタッチして開き、そこからメッセージを送ったりする事ができるが、他にも使用方法はある。マップ上に白色で表示させ、どこにいるのか分かるようにできるのだ――一人しかできない――。
まあ、二人がこのことを知っていると信じて、待つとしよう。
大体、五分ほど経った頃。
ヘディとグレムが走ってきた。
走ってきて部屋を見るなり、「うおお……」「何……これ……」とか言っている。
まあそれは良いとしてだ。
「お前ら、この部屋に入る前に一応準備しとけよ。何があるか分からない」
「ああ、そうだな」
カインしか返事が返ってこなかったが、全員準備に取りかかった。
まあ、ここでモンスターとエンカウントしなかったから、HPは一切消費していない。それはここにいる全員が言えることだ。
俺が準備する事と言えば……いや、準備する事ないな、俺。武器は変えるつもりないし。
ちなみに。
現時点での俺たちにはあまり関係ないのだが、獲得できるスキルは無制限でも、使えるスキルは八個までしかない。
例えば、俺がスキルを十個所有しているとしよう。
その十個の内八個を『カスタム』と言うところにセットし、残り二個を『保留』と言うところにセットしなければならない。そして、『カスタム』にセットしたスキルしか、使えなくなる。と言うわけだ。
まあ、今の俺が所有しているスキルは七個だから、全部使えるんだけど。
それに、このUnique Onlineと言うゲームには、スキルの量が多い。
プレイヤーによって獲得できるスキルが変わるため、プレイスタイルは千差万別になる。
まあ、要は自分が確実に生き残れると思うプレイスタイルを作れると言うわけだ。
「準備できたよ、アレン」
アスカに話しかけられ、顔を上げる。
俺以外の四人は準備できたらしく、それぞれ武器を構えている。アスカは武器を持っていないが。
「そうか」
そう言って俺は背中に差している二本の剣を抜く。
左のサンダースと右のバーチカルソード。
それを見たグレムが、興奮していた。
「おお……これが『双剣』か!どんなスペシャルスキルを使うんだろうなぁ~」
「ん?スペシャルスキルって何だ?」
「知らないのか?」
俺が首を傾げたままで居ることを肯定と判断したらしく、スペシャルスキルについて説明を開始した。
「スペシャルスキルって言うのは、アレンが使うような、説明書に載ってない武器専用のスキルのことだ!」
「なるほど。よく分かった。てな訳で、行くか!」
そう言って俺は歩き出す。
「カイン、アレンってちゃんと話し聞いてくれてたのかな?」
「ああ、心配するな。アレンはちゃんと聞いてるけど、あんな感じなんだ、いつも」
後ろで喋っている二人を後で殴ると決めて。
―――
部屋に入った瞬間、一番入り口の近くに立てられている鉄棒の頂点が赤く光った。いや、光ったのではなく、灯が灯った。
それをきっかけに、次々と鉄棒の頂点に灯が灯っていく。
それらの鉄棒は一直線ではなく、円を描くように、徐々に灯され、最後まで灯が灯った。
部屋が明るく照らされ、中がどうなっているのか分かるようになった。
天井の高さは五十メートルほど。部屋の広さは、床の面積から言ってかなり広めだ。第一層のギルドより広いかもしれない。
高い壁には不気味な絵のようなものが描かれており、正直言って怖い。
俺たちは周囲を警戒しながら前に進む。
すると。
「おい!あれって階段じゃねえか!?」
カインが前を指さして叫んだ。
カインが指差す先を見てみると、そこには確かに階段があった。
あったのだが。
「あれ……上りの階段じゃない?」
カインが発見した階段を見てみると、ヘディの言う通り、上り階段だった。
「階段が上り……じゃあ、ここは地下五階じゃなくて、地下六階?」
「まあ……そう言うことになるんだろうな。だって、宝箱みたいなものもなかったし、下りの階段もなかったな……」
アスカの呟きに、グレム頭を掻きながらが答える。
って、グレムの言うことが本当なら、確かにここは地下六階になる。
それに、上り階段しかないとなると……
「ここは地下六階、最下層って事か」
「じゃあ、あの階段を登れば地下五階に行けるんだね?」
「まあ、そう言うことになるんだろうな」
「だったら早く行こうz――ぐぽっ!」
「ちょっと待て!!」
走り出そうと体重を前方に移動させたカインの襟を掴んだ。
カインが恨めしそうに見てくる。
「いきなり何すんだよ」
「周りをよく見ろ」
カインが周囲を見渡し、驚愕している。
それも仕方ないだろう。そう言う俺も、驚いているのだ。
壁に刻まれた、不気味な絵。それらが青く光り出したのだ。
不気味な絵が余計に不気味さを増す。
俺の後ろで震えている黒髪の少女が居るが、気にしないで置こう。
暫く光り続け、その光は粒子となって、部屋の中央に集まっていく。
全ての粒子が一カ所に集まった直後、巨大な人のような形状に変化。粒子が実体化し、中から尖った耳をした、白髪のナイスガイが現れた。
ナイスガイの服装は天使を思わせるもので、その上から漆黒の鎧が装備されている。左手に丸い漆黒の盾を、右の手には盾と同じ漆黒の剣が携えられている。身長は高く、大体二メートルくらいか。
しかし、俺たちが彼を見て驚いたのは、そこから先だ。
――背中に生えるは、六枚の黒き翼。
それを見て、思わず声を漏らす。
「堕天使……ルシファー……」
本で読んだことがある。
地に墜ちて白き翼が黒く染まった、元天使。
「これと……戦うのか?」
うろたえながらも、二丁のハンドガンを持つグレム。
「まあ……そうしねえとあの階段には行けねえみたいだぜ」
太刀を握り直し、構えるカイン。
「前衛は私とアレンとカイン。後衛はアスカとグレムね」
片手用直剣を鞘から抜き、構えながら指示するヘディ。
「うん、後衛は私に任せている」
いつでも魔法の発動できるようにしているアスカ。
「じゃあ……行くか」
双剣に雷を宿す俺。
そして。
「行くぞ!」
「「おう!!」」
「「うん!!」」
俺たちは一斉に走り出した。
To Be Continued.