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【Unique Online】  作者: 地味な男
第一章 第一層攻略編
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第5話 内容

 ――ラストクエストが出現した。




 そのメッセージを受け取った俺は、アスカとカインにメッセージを送り、この事を知らせた。何となく予想は付いていたが、カインとアスカも知っていた。

 俺達はギルド前で再び会う事を約束し、数分後。俺達は再会した。

「やっとラストクエストが出たか……。でも、まさか一ヶ月も掛かるとはな」

「私……一週間くらいで出現すると思ってた……」

「俺もだぜ……まあ、モンスターを十万体倒す事自体、時間が掛かるとは思ってたけどよ」

 カインとアスカの会話を聞きながら、俺はギルドの扉を潜った。後ろから二人が走ってくる。

「早く行こう。他のプレイヤー達はもう集まってるはずだし」

 先頭を歩く俺は扉を潜った後に続く廊下を歩き、掲示板がある部屋に辿り着いた。

 初めてログインした。そして、このゲームがデスゲーム化した事を知らされた、あの広場だ。

 そこにはやはり沢山のプレイヤー達が集まっていた。

 が、五千人はいない。大体三千人くらいのプレイヤー達しかいなかった。

「なあ、死者は居ないのに、どうして五千人全員のプレイヤーが集まってないんだろうな」

「ん?アレンは知らねえのか?」

「……知らない」

「この『Unique Online』にログインした全てのプレイヤー達は、二種類に別れたんだ」

「二種類?」

 この後、カインによるクソ長い説明が行われた。その中には、どうでも良い情報も含まれていたため、俺が纏めてみる事にした。

 まず、『二種類に別れた』と言うのは、この古代城・シークレアスを己の命を懸けて攻略するプレイヤーと、このゲームがクリアされるのを安全に待つプレイヤーの二種類に別れたという事だ。

 言い方は悪いが、前者は己が死ぬ事を覚悟出来たプレイヤー達。後者は己が死ぬ事を覚悟出来なかったプレイヤー達と言う事になる。

 いや、このゲームから早く解放されたいと思い、前者になったプレイヤーも居るかもしれないが。

 遅くなってしまったが、前者を『攻略者』、後者を『不動者』と呼ぶのだとか。

 そして最後にカインが言っていたのだが、最近、『闇ギルド』と名乗る組織が現れたらしい。それを結成した心理は分からないが、フレンド登録しているプレイヤーから聞いたそうだ。

 その話を聞いた時は正直ぞっとした。

 闇ギルドがする事など、一般的に考えてろくな事であるはずがない。現実世界ならば犯罪者みたいなものだ。

 出来れば今後会いたくないと願うのは、普通の事なのだろう。

 カインから説明を受けた後、それぞれのプレイヤー達の前に、メッセージが送信されてきた。

 そのメッセージは自動的に読める状態になり、俺達三人はそれを読んだ。

「『地下五階にある『黄金の宝箱』をギルドに運んできて、職員に渡す』」

 とりあえず声に出して読んでみると、カインが反応した。

「地下っつっても、どうやって行けばいいんだ?」

 カインが周囲を見渡しながら呟いた時、突如広場の中心が光り出した。それに気づいたプレイヤー達はその場を飛び退く。光は次第に小さくなっていき、光が完全に消えて現れたのは、階段だった。なるほど、この階段を使うのか。

 そう納得し、俺とカイン、アスカを含む約三千人のプレイヤー達は、一斉に地下一階へ進んでいった。




 ---




 地下の階段を下って行くに連れて、周囲は徐々に暗くなっていく。階段の先を見てみたが、そこには闇が広がっていただけだった。

 少々怯えながら進んでいくと、地下一階に到着。階段を下ってきたプレイヤー全員が到着すると、一本の蝋燭(ろうそく)()が灯った。

 それらは連続し、暫くすると、周囲は完全に明るくなった。

 その時、俺達は初めて地下一階がどう言う所なのかを認識した。

 地面には灰色や黒色が混じった石が(いびつ)に敷き詰められ、壁は金属で作られているのか、光沢がある。そこから棒が伸び、灯が灯された蝋燭がある。天井は地面と同様に意志で作られており、謎の絵画が描かれている。

 この長い説明を一言で表現するとしたら--不気味だ。

 何か不吉な事が起こりそうな予感しかしない。

 俺がそう思っていると、勇敢な一人のプレイヤーが先頭に立ち、前進を開始した。俺達も含む他のプレイヤー達は、彼の背中を追う様に歩き始めた。




 ---




 結構な時間歩いていると、急にプレイヤー達で構成された大集団は、前進を止めた。そして、あるものを囲むように移動していく。

 プレイヤー達が囲んだものは、魔法陣だった。

 魔法陣は半径五メートル程の円形で、暗号めいた文字と、中心には五角星形の星のマークが描かれている。更にその周りには大小さまざまな岩があり、青白く光る魔法陣を囲んでいる。

 その魔法陣は幻想的で、思わず見とれてしまっていた。その時、一件のメッセージが新たに届いた。

 そのメッセージの内容は、この魔法陣についてだった。

 この魔法陣は『転移魔法陣』と呼ばれるものらしく、宝箱がある地下五階にも、同じ様な魔法陣があるらしい。地下五階に行き、宝箱と共にこの魔法陣の中に入れば、一瞬で地下一階まで行ける。が、この転移魔法陣を起動させるには、条件が一つあった。

「『地下一階と地下五階に、それぞれ三本のレバーがある。その計六本のレバーを同時に下ろした場合のみ、転移魔法陣は起動する』。何か、面倒な設定だね」

 声に出して呼んだアスカの呟きは、アスカには悪いがひとまず無視させて貰う。

 計六本のレバーを同時に下ろす。それも、地下一階と地下五階のレバーを、だ。

 普通に考えて不可能だ。テレパシーでも使えない限り、そんな事が出来るはずが--ん?待てよ?

 このゲームには、このゲーム内にたった一人しか所有しない唯一の能力、ユニークスキルがある。そのユニークスキルの中に、『テレパシー』があるのではないだろうか。あるならば、この転移魔法陣を起動させる事が可能だ。

 が。

「問題はそのユニークスキルを持ってるプレイヤーが、今この場所に居るかどうかだな……」

「何の話だ?」

 俺の呟きを耳にしたカインが聞いてきた。

 人から声をかけれて無視をするのは駄目だと思う俺は、カインの質問に答える。

「いや、テレパシーのユニークスキルがあるとしたら、そのユニークスキルを持ってるプレイヤーが此処にいないかな~と思ってさ」

「テレパシー?何なんだそれ?」

「なあカイン。その質問がおふざけなら、今の内に撤回しておいた方が良いぞ」

 全力でかぶりを振ってそれは違うと拒否したカインは、真剣な表情で聞いてきた。

 隣に居るアスカを見ると、呆れた様に肩を竦めている。

 俺が説明しなきゃ駄目なのか……。

 面倒くさいなぁ……。

「テレパシーって言うのは、遠く離れた人と会話出来る超能力だ。もしもそのユニークスキルを持ってるプレイヤーが居たとしたら……そこから先は自分で考えろ」

 自分で考えて自分で答えを導き出す。

 そうでもしない限り、カインの筋肉だらけの脳はいつまで経っても治らない。

 いや、自分で考えて自分で答えを導き出すって、小学一年生でも出来る事だと思うんだけどね。

 顎に手を当て、唸りながら一生懸命考えている。

 カインはイケメンだ。故に、そのポーズがさまになっている。

「そうか!遠くの人と会話が出来るのなら、計六本のレバーを同時に下ろせる!そう言う事か!」

 どうやら導き出せたらしい。

「カイン。まさにその通りだ。だけど、問題はそのユニークスキルを持ってるプレイヤーが居るのかどうかだ」

「すみませーん!」

 いきなり、カインが声を張り上げた。

 約六千の視線を、俺とカインの二人が受ける。

「誰か、遠くの人と会話出来るユニークスキルを持っている人は居ませんか?」

 そうと決めたらすぐに行動に移す。

 それがカインの良いところだ。

 カインの質問の意図を理解したのか、プレイヤー達はざわめき始めた。

 暫くして、一人の男性のプレイヤーが俺とカインの前に現れた。

 その男性の身長は平均的で、俺と同じくらいだろう。彼の髪はボサボサで、寝癖を治してないのかと突っ込みたくなった。軽装備で、背中には一本の巨大な剣--大剣が背負われている。

「俺のユニークスキルは『テレパシー』だ」

 居たよ。テレパシーのユニークスキル所有者マジで居たよ。驚きだよ。

「で?俺は一体何をすればいいんだ?」

 どうやら、彼は理解出来ていないらしい。

「この転移魔法陣の近くで待機していてくれ。そして、絶えずテレパシーを発動しておく。地下五階の準備が整い次第、あなたがタイミングを合わせてくれ」

 俺はなるべく簡単に説明した。

 すると彼は頷き、右手を差し出してきた。握手を望んでいるのだろうか。

 俺は彼が差し出してきた右手を右手で取り、握った。

「俺はハルト。宜しくな」

「こちらこそ。俺はアレンだ。隣の奴がカイン」

 カインは会釈を送った。




 ---




 とりあえず、俺の作戦を纏めてみよう。


・『テレパシー』のユニークスキル所有者であるハルトと、他数名--最低でも二人--が地下一階の転移魔法陣付近に待機。

・残りのプレイヤー達は、全員で地下五階を目指し、宝箱を転移魔法陣まで運ぶ。

・最後にレバーを下ろし、宝箱ごと、地下五階にいるプレイヤー達を地下一階にまで転移させる。

・最後に宝箱をギルドへ運ぶ。


 おおまかな作戦ではあるが、この作戦通りに進んでいけば、間違い無くラストクエストはクリアできる。はずだ。

 まるで伝言ゲームのように、この作戦をプレイヤー達に伝えた。

 約三千人のプレイヤー全員にこの作戦の情報が行き渡るまでに、数十分は費やした。

 まあ、確実に作戦を成功させ、ラストクエストをクリアするためだ。死者が出る事に比べれば、数十分など一分とそう変わりはない。

 情報は完全に行き渡った。

 --そろそろ行くか。

 俺がそう内心で呟いた時、誰かが俺の右肩を軽くトントンと叩いた。

 振り返ると、そこにはアスカが居た。

「どうかしたか?」

「思ったんだけどさ、このラストクエスト……絶対罠(トラップ)とか仕掛けてあるよね?」

 あーー、そう言えば。

「まあ、そうだろうな」

 その事を忘れていたとは、口が裂けても言えない。

 口にすれば、アスカによる俺へのお説教タイムが開催される可能性が高い。勿論、口にした直後に、だ。

 数ヶ月前に俺とカインは、アスカにお説教をされた。

 その時のアスカの恐ろしさは、思い出しただけでも恐ろしい。

 故に、俺とカインはもう二度とアスカを怒らせないと誓ったのだ。あんな怖い目に遭うのは、もうイヤだ。

「まあ、(トラップ)には気を付けるさ。大丈夫。全員無事に現実世界に帰ろう」

 その言葉を聞いたアスカは、安心した様子で俺から離れた。

 (トラップ)に気を付ける。

 その事を、地下一階に居る全てのプレイヤー達へ伝えた。

 地下一階にはハルトと彼のパーティメンバーである他二人。それと五人のプレイヤーが残った。地下五階を目指すプレイヤー達は、この八人を除く全てのプレイヤー達だ。

 そして、俺達は地下二階を目指し、歩き始めた。






To Be Continued.

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