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【Unique Online】  作者: 地味な男
第一章 第一層攻略編
3/31

第3話 衝撃

「何で俺達……ギルドに居るんだ?」

 誰かに向かって言った訳でもなく、俺は呟き、カインとアスカを見た。

 カインとアスカも、何が起こったのか理解出来ていないらしく、首を傾げている。

 俺達が光に包まれ、瞼を開いた時、俺達はギルドに居た。

 どうやらそれは俺達三人だけではないらしく、他のプレイヤー達も同じ現象に遭遇したらしい。

 所々からそんな話が聞こえてきたから、恐らく俺の推測は間違っていないはずだ。

 何気なく、俺はメニューを呼び出し、現在の時間を確認した。

「十時五十九分……か」

 そう呟いた時、メニューの時計が十一時になった。

 すると、何処からともなく聴いたことのない音楽が流れ始めた。

 何だこれは。

 暫くすると、周囲からポリゴンが出現。ギルド室内の上空に収束し、人間の形状になった。と思ったら、ポリゴンの塊は実体化。一人の仮面を被った人間が現れた。

 仮面を被っている影響で性別は分からない。服装は白衣を赤黒く染め上げたようなもので、実に不気味だ。

 仮面を被った誰かは、唐突に話し出した。

「皆は知っているかもしれないが、この『Unique Online』はログアウト不可能だ」

 声の高さからして、男性だろうか。

「そして、このゲームの戦闘中におけるゲームオーバーは、本当の死を意味する。つまり……」 仮面の男は周囲を見渡し、再度口を開く。

「このゲームはデスゲームになった訳だ」

 デスゲーム。

 又の名を、デスマッチ。

 それは一度HPが尽きると、もう二度と復活出来ないルールだ。が、今この仮面の男が言っているのは、又違うものである。

 HPがゼロになった時、自分の現実にある肉体も死ぬ。

 それを含め、この『Unique Online』は只のゲームから、己の命を懸けた現実になったのだ。

 ギルド内に居る人々はそれを悟ったのか、それとも理解出来ずに呆然としているのか。どちらかは分からないが、皆、黙り込んでしまっている。

「そして、このゲーム内に存在する、全ての蘇生アイテムは消滅した。例えあったとしても、使用不可能である」

 その言葉を聞いたプレイヤー達は、驚愕に目を見開く。

「尚、専用機種が無理矢理はずされようとされた場合、例えHPがゼロでなくとも、そのプレイヤーはゲームオーバーとなり、死亡する」

 その時、俺の隣に居た男性のプレイヤーが、その場に座り込んだ。彼の表情は、絶望に染まっている。

「しかし、ログアウト出来る方法がない訳ではない」

 助かる方法があると聞いても、プレイヤー達は何も言わない。

「第20層のラストクエストをクリアすれば、ゲーム内に存在する全てのプレイヤーは強制的にログアウトさせられる。私からの説明はこれだけだ。頑張ってくれ」

 無責任にも程がある発言を最後に、仮面の男はポリゴンとなって爆散し、姿を消した。

「ふ……ふざけんな!」

 仮面の男が姿を消した直後、男性が叫んだ。

 それを切っ掛けに、ギルド内に居た人々も、一斉に口を開く。

 解放を願う者。仮面の男への避難を言う者。泣き崩れる者。絶望し、立ったままで居る者。

 アスカも取り乱した一人だったが、何故か俺とカインは平気だった。

「カイン。とりあえず、アスカを連れてギルドを出よう」

「わ、分かった。まずは、アスカを落ち着かせないとな」

 そう言って、俺とカインはアスカを連れて外へ出た。




 ---




「ごめんね。取り乱しちゃって……」

 あの後、俺とカインが必死にアスカを正気に戻した。そして現在に至る。

 ちなみに、俺達は道の隅の方にあるテーブルに腰掛けている。

「いや、謝る必要はねえよ。なあアレン」

「ああ。あんな事を言われたら、取り乱して当たり前だろ」

「つーか、何で俺とアレンは平気なんだろうな」

 カインは苦笑しながら言った。

 カインの言う通り、どうして俺とカインが取り乱さなかったかは分からない。いや、本当は分かっているのかもしれない。

「もしかしたら俺とカインは、こんな事が起こる事を、望んでたのかもな」

「あーー、そうかもな」

 何故望んでいたかは分からない。だが、その事にカインは納得している様だ。

 いや、そんな事よりも。

「これから……どうすれば良いんだろ……」

「…………」

「…………」

 俺の言葉に、二人は黙った。

 取り乱さなかった俺とカインも、取り乱したアスカも。何だかんだ言っても、不安なものは不安なのだ。

 それは、これから先、何が起こって何がどうなるのか。自分が死んでしまうんじゃないだろうか。本当に第20層のラストクエストをクリア出来るのか。

 いや、もっと単純な事だ。

 --俺達はログアウト出来るのだろうか。

 --生きて、現実世界に帰る事が出来るのだろうか。

 そんな不安が、俺達の心の中にある。

「まあ、やるしかないんじゃね?」

 カインが頭の後ろで手を組んで背もたれに体重を預け、そう言った。

「やるって……何を?」

 不安そうな表情で、アスカがカインに訊いた。

「そんなもん、ゲームクリアに決まってんだろ」

 カインの言葉を聞いたアスカが、勢いよく立ち上がって猛反対をする。

「駄目だよ!」

 ガタッと、先程までアスカが座っていた椅子が倒れた。

「何でそう思うんだ?」

「だって……だって、死ぬかもしれないんだよ!私は……死ぬのが怖いよ!」

「…………」

 アスカの言葉に、カインは黙り込んだ。

 カインも、アスカと同じ様に死ぬ事は怖いはずだ。だが、カインにはカインなりの考えがあるはずだ。だけど、カインはバカだ。それを言葉にするのは難しいだろう。

 ならば、誰が言うのか。

「カイン。俺もやるよ、そのゲームクリア」

 俺は立ち上がらず、顔を正面に向け、そう言った。

「どうして!?アレンも怖くないの!?」

「怖いさ」

 俺は俯きがちに言い放った。

「俺だって、カインだって、他のプレイヤー達だって、怖いはずだ。だけどな」

 俺は立ち上がり、アスカの目をしっかりと見た。

 自分の思いを伝える時は、相手の目を見て話すのが一番なのだ。

「誰かがやらないと、このデスゲームは終わらない。終わらせる為には、誰かがやらなくちゃいけない。俺とカインは、その誰かになろうとしてる。これは半端な覚悟じゃない」

 カインを見ると、彼も頷いていた。

 やっぱり、カインは上手く言葉に出来なかっただけなのだろう。

「まあ、俺もアレンと同じ様な考えだ。だから俺とアレンは行こうと思う。で、アスカはどうするんだ?」

 俺とカインは決めた。次に決めるのは、アスカだ。

「俺とカインは何も言わない。アスカのやりたい事をすればいい」

 アスカは俯いた。

 一体、何分経っただろうか。

 アスカは顔を上げた。

「私も戦う。アレンと、カインと一緒に。二人より、三人で戦った方が良いでしょ?」

「アスカ……」

「アスカがそうしたいならそうしろ。俺達は、お互いの背中をお互いに預けるんだ」

 俺達は頷いた。

 その時。

 また、俺達の体が光に包まれた。

 次は何なんだ!?

 俺達が混乱していると、徐々に光が弱まっていく。

 完全に光が消え、俺達は驚愕した。

「アスカ……カイン……その顔……」

「アレンも……」

「ど……どうなってんだ?」

 俺達がアバター設定の時に作った顔が、現実の顔に変わっている。体も現実の体になったようだが、俺達は現実の体を設定。はっきり言って変化はない。




 ---数分後---




 落ち着いた俺達は、今の現状を整理した。


・このゲーム、『Unique Online』は、ログアウト不可能のデスゲームになった。

・ゲームオーバー=本当の死。

・何故か俺達の顔が現実の顔になった。


 それを口にした。

「何つーか、さ。最後のはどうなってんだ?」

 カインは後頭部をかきながら、そう言った。

 その事はおおよその推測は出来る。

「多分、あの専用機種が影響してるんだと俺は思う」

「専用……機種?あ、あのヘルメットのこと?」

「そうそう」

「その専用機種がどうかしたのか?」

 アスカの質問に答えていると、カインが質問してきた。

「あの専用機種は、俺達の顔を完全に覆ってる。覆ってるなら、現実の顔を再現出来ても、何も可笑しくない」

「な……なるほど……」

 分かっているとは思えないが、一応信じておこう。

「なあ、さっぱり分かんねえんだけど、説明してくんない?」

「えっとね、要するn--」

「謝れ!一瞬でもお前を信じた俺に謝れ!」

 俺が信じた矢先、カインはひそひそ声でアスカに再度の説明を要求していた。

 そんなことをしているカインに、俺は怒鳴った。

「悪かった悪かった。冗談だっtんが!」

 笑いながら謝るカインの頭に、思いっきり拳骨を落とした。

「とりあえず、あそこで悶えてる脳筋(バカ)は放置して、二人で話そう」

「う……うん」

 カインを心配そうに見ながら答えていたが、彼は自業自得なのだ。あいつが悪い。

「まず、HPやMPを回復させよう。それからギルドに入る」

「何でギルドに入るの?」

「取扱説明書には確か、『ラストクエストには出現条件があり、それを満たさない限り、ラストクエストは出現しない』って書いてあったはずだ。なら、やることは必然的に一つになる」

「……その条件を満たすって事だね」

「そゆこと」

 アスカとは話しやすくて楽だ。

 俺が比べている対象は言うまでもなく、あそこで未だに悶えている脳筋(バカ)だ。

「つーか、腹減った……」

 いつの間にか復活していたカインが、俺の隣で呟いた。

「そう言えば、今は昼頃か……ちょっと早いけど、昼にするか」

「『腹が減っては戦は出来ぬ』って言うしね」

「よーし、決定だな!あそこに行こうぜ!」

 元気になったカインは、近くにあったレストランへ走り出した。

 俺とアスカはその後を追う。

 これから先のことを、不安に思いながら。




 ---午前十一字三十分---




 俺達は昼食をレストランでとった後、ギルドへ向かっている。

「にしても、あそこのレストランは美味いとは言えねえな……」

「まあ、確かにそうだったね……」

「食えただけマシだろうが……」

 ゲーム内の料理は、不味い訳ではなかった。だけど、決して美味いと言えるものでもなかった。

 要するに、微妙だ。

 更には、カインにとって悲しいこともあった。

「……てか、肉がメニューに無いレストランって、レストランじゃねえよ……」 かなり悲しそうな笑顔でそう言った。

 そんなに食いたかったのか、肉を。

「肉が無いだけでレストランそのものを否定しちゃだめだろ……」

「まあアレだよ。カインはお肉大好きだから」

「あー、そう言えばそうだったな。なら、仕方ないか」

 あまりにも衝撃的すぎる展開で忘れていたが、カインは無類の肉好きだ。こいつと焼き肉に行った場合、決して『(おご)る』などと言ってはいけない。懐が残念なことになる。

 そんな理由で納得する俺もどうかと思うが。

「それにしても、俺達って後どれくらいでレベルアップするんだろうな」

「多分だけど、後もう一体モンスターを倒せばレベルアップするんじゃねえの?」

 残念そうに俯きながら、俺の何気ない疑問に答えた。

 なるほど、後一体倒せば良い……か。

 まあ、それはフィールドへ出てからとして。

 そんな会話をしていると、いつの間にかギルドの入り口の前に到着していた。




 ---ギルド内---




 ログアウト不可能のデスゲームとなったことを報告されてから、だいたい二十分以上経過している。

 時間が経ったことが影響しているか否かは俺には分からないが、ギルド内は静かになっていた。

 何人か居なくなっている気がするが、ラストクエスト出現に向けてフィールドへ向かったのだろう。

 そんなことを考えながら歩いていると、いつの間にか掲示板の前に着ていた。

 掲示板は基本的には木製で、緑の面がある。その緑の面には、様々な大きさの紙が張り付けてあり、その中で一際大きな紙が一枚、真ん中に張り付けられている。

「えー、と。この紙に書かれてるのが、ラストクエスト出現条件なのかな……」

 アスカはその大きな紙を見ている。

「どれどれ……」

 俺はアスカの隣に歩み寄り、紙を覗き込んだ。

「出現条件は……一つだけか。フィールドのモンスターを十万体倒すぅ!?」

 思わず、素っ頓狂な声が出た。

 いや、十万体って、冗談にしか思えねえよ。

「ん?ここに『残り99983体』って書いてあるぜ?」

 逆に言えば、十七体倒されたことになる。

 しかし。

「とんでもない数だね。ラストクエスト出現って、いつになるんだろ……」

 アスカの言った後半の言葉が、俺の不安だ。

 ログアウト不可能。

 つまり、第20層のラストクエストをクリアするまで、現実には帰れない。

 俗に言う監禁状態だ。

「今こうしている間にも、誰かが俺達の行動を見てるのかな……」

「ん?どう言うことなんだよアレン」

 俺の独り言を聞き取ったカインが、俺に聞いてきた。

「いや、ゲームがあるんだから、(ゲーム)(マスター)が居るはずなんd--」

(ゲーム)(マスター)って……何?」

「てめぇ……」

「はいっ!?」

 思い切り怒鳴りつけてやろうと思ったが……まあいいや。一々そんなこと言ってたら身が持たねえ。

「ハァ……。(ゲーム)(マスター)って言うのはな……」

「いや、知らないって言ったの冗談だって。ちょっとからかってやろうと思って……て、止めて!もう殴るのぐぁはぁ!!」

 ちなみに、俺が言おうとしていたことを言ってみるとだ。

 現実にいるはずの(ゲーム)(マスター)。多分、そいつは俺達がどう過ごしているのか。それを見ているはずだ。もしかしたら、ログアウト不可能のデスゲームとなったことを知ったときの、プレイヤー達の反応を見て楽しんでいたのだろうか。

 …………。

 くそっ、考えただけで苛々してきた。

 もう考えるのは止めよう。今優先すべき事は、ゲームクリアだ。

 俺はカインの髪を掴み、引き摺りながらアスカの方へ向きを変えた。

「行こうアスカ。フィールドに行って、モンスターを倒すぞ」

「分かった。それより……」

 アスカは視線を落とした。

 アスカの視線を辿ると、俺に髪を掴まれた状態のカインが、その先にあった。

 俺はカインの髪を離し、その手を差し伸べる。

「ほら、早く立て。今からフィールドに行くぞ」

「ああ、そうだな。早速行こうぜ!」

 相変わらず、カイン(コイツ)は切り替えが早い。 その後、俺達はフィールドへ向かった。





To Be Continued.

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