第19話 四人組
扉が解放され、メンバーを決めた。
その結果、アスカとヘディを含む四人が左の道へ。俺とカインを含む四人が真ん中の道へ。残り四人が、右の道へ進むことになった。
俺たちはそれぞれの言葉を交わし、それぞれの道へと進んでいった。
――真ん中の道の奥――
真ん中の道――海暴竜がいると言う場所は何というか、神秘的な場所だった。
四方は所々にコケが生えた岩に囲まれ、見た事のない植物が、その岩の付近に生えている。地面は少し湿っており、涼しい。体感気温は、大体二十六度くらいか。
陸地を進んだ先には、海面がある。そこからは、僅かだが、磯の香りがした。
海の磯の香りまで再現しているなんて、本当にクオリティの高いゲームだと、改めて思った。
さて、この度、最初から海暴竜と戦うことになったプレイヤーを紹介しよう。
俺ことアレンと、俺の幼なじみであるカイン。そして、細剣使いとハンドガン――グレムのような二丁拳銃使いではないので、一丁しか装備していない――使い。以上の四人だ。
ちなみに、細剣使いと銃士の名前は覚えてません。忘れました。
俺たち四人は海暴竜がいるらしい場所の真ん中で、海暴竜のお出ましを待っていた。
各々が武器を構える。
俺たち四人の役割は至って簡単なものだ。
俺たち四人を除く八人のプレイヤーが、左右の道の先にいるモンスターを倒すまで持ち堪える。そして、左右のモンスターを倒したという報告が入り次第、反撃に出て、その後残り八人と合流。そのまま海暴竜を倒すと言うものだ。
「カイン。お前は確か、炎属性だったな」
俺の問いに、カインは顔の向きを変えず、「ああ」とだけ答えた。俺も、顔の向きを変えずに、再び問う。
「恐らく、海暴竜ってのは、水属性だ。つまり、カインの弱点の属性だ。だから――」
「断る」
俺が言い終わる前に、カインは拒否した。
「アレンの言いたい事は分かるぜ。『お前は後ろに下がってろ』って言いてえんだろ?」
俺は無言で頷いた。
「俺はさ。大切な幼なじみが命懸けて戦ってんのに、自分だけ戦わないのは嫌なんだよ」
――戦える力があるんだからな。
カインはそう付け加えた。
カインは、一度決めたら突き通そうとする奴だ。それをよく知っているからこそ、俺はもう説得はやめた。
「カインがそうしたいんなら、そうすれば良い。だけど、やばいと思ったら、迷わずすぐに引け。分かったな?」
「分かってるっての。俺だって、死ぬのはごめんだからな」
――それなら良いんだけどな。
そう言おうとした俺は、あまりにも突然すぎる展開により、言う事ができなかった。
あまりにも突然すぎる展開。それを簡単に言えば、海面から、巨大な一本の柱が立った。
その柱はとてつもない大きさで、海水が水しぶきとなって周囲に飛び散る。
その柱は暫く水しぶきをまき散らし続けた。突如、その柱は、全ての水分を周囲に吹き飛ばすことで消滅した。
中からは、一体のモンスターが出てきた。
「な、何だ……あれ……」
一番後ろに立っていたハンドガン使いが、呻くようにそう呟いた。
直後。
口を天井に向け、人間には絶対に再現できないような声で、哮った。
その姿は、まさに竜だった。
――左の道の奥――
全身を覆う鱗は青白くて腹の部分は白く、鱗との境目はグラデーション。尻尾はとても長く、その先は、鮫を思わせる鰭のようなものがある。少し長めの首の先にある顔の側面には鰓があり、口には鋭利な牙が何本も生えている。背中には、大きく立派な背鰭が生えている。
一言で言うなら、手足の生えた鮫だ。
その名を、ブラディオン。
レベルは22で、属性は見た通りの水属性だ。
このブラディオンを倒すことになったのは、この四人。
魔導士のアスカと、片手用直剣使いのヘディ。そして、大剣使いと魔導士だ。
ブラディオンが出現してから、暫く睨み合いは続き、緊張感に包まれた場は静かになる。が、その静けさを破ったのは、大剣使いだった。
大剣を掲げて刀身をアレンと同じ雷で包み込み、一気にブラディオンとの距離を詰め、ブラディオンの右手に肉薄。充分に近づいたところで、大剣使いは、剣技を発動する。
「剣技発動!『一刀両断』!!」
雷で包まれた大剣が、残像を残すくらいの速度で振り下ろされる。
その斬撃は、確かにブラディオンの右手を捉えた。のだが。
「何っ!?」
ブラディオンの硬質な鱗に、大剣使いの斬撃は弾かれた。
攻撃を弾かれた大剣使いに生まれた隙を逃さず、無慈悲にブラディオンは大剣使いを右手で凪払う。
大剣使いは岩の壁に衝突し、地面に落下。彼のHPは、全体の二十%が削られていた。それに対し、ブラディオンのHPは、ほんの僅かしか変動していない。数値で表すなら、10も削れていないだろう。
攻撃力はさほど高くはないが、圧倒的過ぎる防御力を持つブラディオン。
「あんなのに、どうやって戦えって言うのよ……」
ヘディが、その場にいる全員の心を代弁するかのように、呟いた。
――右の道の奥――
六本ある足は細くて赤く、甲殻類を思わせる。背中を覆う甲羅も、足と同じ色だ。左右一本ずつある、腕に当たる部分の先端は鋏状になっている。左の鋏は小さく、右の鋏は大きい。
まさしく、蟹の超ビッグサイズ版。
その名を、ズライゴドン。
レベルは22で、水属性。ブラディオンとここまでは同じだ。
そのズライゴドンと戦うことになったのは、銃士二人と魔導士。そして槍使いの四人だ。
ズライゴドンは出現するなり、ブラディオンとは違って、四人のプレイヤーに向かって突進した。
外見は蟹なのに、横歩きではなく普通に走ってきたのは、全員が驚いた。が、そんな事に驚き続いていては、ズライゴドンを倒すことは絶対に不可能だ。
その理由は――
「先手必勝だ!タイミングを合わせて撃つぞ!!」
魔導士のタイミングに合わせ、残りの銃士二人も構える。
そして、それぞれのスキルを発動。
「銃撃技発動!『火炎弾』!!」
「銃撃技発動!『重撃の風弾』!!」
「魔法発動!『サンダー』!!」
炎の弾丸と風の弾丸が真正面から。そして、ズライゴドンの頭上から、巨大な雷が、ズライゴドンに迫る。
一足早くズライゴドンに肉薄した炎と風の弾丸は、ズライゴドンに着弾し、その肉体を、貫くかと思われた。
が。
二つの弾丸が、ズライゴドンの体を貫く事はなかった。
貫く前に、ズライゴドンの巨大で強靱な右の鋏で、弾丸が弾かれたのだ。
と、その直後に、魔導士が放ったサンダーが直撃。頭上からの攻撃は、流石に交わせなかったようだ。
サンダーが消え、ズライゴドンを見た四人は、二つのことに驚いていた。
一つ目は、尋常じゃないほどの攻撃力。
二つのスキルを同時に弾き返したのだ。そんな事は、レベルの差が高いか攻撃力が異常でなければ成功はしない。ズライゴドンと四人のレベルの差はたったの2だ。
二つ目は、防御力の低さ。
サンダーを一撃受けただけで、HPの四十%ほど減少していたのだ。
これを見て、四人は確信した。
ヒット&アウェイの戦法をすれば、勝てる相手だと。まあ、一撃でもくらったら、命に関わるダメージを受けるが。
まさに、ズライゴドンは、攻撃こそ最大の防御と言う、ごり押しのモンスターなのだ。
――真ん中の道の奥――
空中で哮る竜を見て、俺たち四人は後ずさる。
それは竜への恐怖と、海暴竜の正体への驚愕からだった。
背中を覆う鱗はまるで鎧のように光沢があり、光の加減では青にも群青色にも、水色にも見える。腹と鱗がない部分は、汚れが一切ない白だ。
手足はなく、その代わりと言っては何だが、巨大な翼のような胸鰭がある。鎧のような鱗がある背中には、細かい突起がいくつもあり、触れただけで皮膚が引き裂かれてしまいそうだ。
首は長く、その先にある頭部には、青い角が二本を持つ。大きく開かれた口は、鋭利な牙を何本も持ち、獰猛な肉食獣のようだ。尻尾は首よりも遙かに長く、まるで蛇のよう。
この姿を見て、俺はあることを思い出す。それは、誰もが一度は耳にしたことがある、あの架空上の生物。
「……リヴァイアサン……」
名前・リヴァイアサン
Lv・25
属性・水
鎧の如く頑丈な鱗を持つが故に圧倒的防御力を備え、凶暴な性格故に圧倒的攻撃力を誇る、リヴァイアサン。
その竜との戦いが、始まった。
To Be Continued.




