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【Unique Online】  作者: 地味な男
第二章 第二層攻略編
17/31

第17話 第二層の――

 翌日。

 朝食を済ませた俺たちは、昨日のバーテンディについて話していた。

「確か、昨日バーテンディと戦った場所って、北の海だよね?」

「そうだったな」

 アスカの質問に、カインが頷いた。

「補足するなら、北の海の西より……つまり、西北西辺りだな」

 俺の補足に、カインが反応する。

「つー事はあれか?バーテンディは、西の海近辺でしか、エンカウントできないって事か?」

「俺の推測が正しかったら、恐らくそのはずだ」

 前にも言った通り、これは単なる予測に過ぎないのだが、西の海は第二層のラストクエストの舞台である可能性が高い。故に、西の海近辺では、高レベルモンスターが出現する確率が高かったり、珍しいモンスターとエンカウントしたりする。

 それに、昨日戦ったバーテンディのレベルは18だったのだ。先ほど言った予測が正しい可能性は、かなり高い。

「バーテンディが西の海で出現するなら、今日は私たちは、西の海近辺に行くの?」

「そう言う事になるな」

 アスカの質問に俺が頷いた。

 突如、カインが立ち上がった。

「どうした?」

「じゃあ、早速行こうぜ!早くレベルも上げなくちゃいかねえしな!」

「その前にお前は落ち着け」

 何故かテンションが高いカインを何とか落ち着かせ、話を戻す。

「で、今日の予定だが、アスカの言った通り、西の海近辺でレベル上げ及び、『バーテンディの碧玉』入手を中心に活動しよう」

 カインとアスカが頷く。

「……と、その前に」

「何なのアレン?」

「どうかしたのか?」

「まずは、ギルドに寄ろう」




 ―――




 あの会話の後、俺たち三人は今、ギルドにいる。

「何で毎日毎日ギルドに行かなきゃならねえんだよ?」

「あのなぁカイン。ギルドって言うのは、言わば情報屋みたいなもんだ。ここで、色んな情報を得られる。だから来るんだ」

 カインが面倒臭そうに呟くので、割と真面目に説明する。

「あ、そうなのか。確かに、よく考えたら、ギルドに行かなきゃ出現条件がどうなってんのかも分からねえもんな」

「だろ?」

 カインを納得させたところで、出現条件を確認した。

 『アルビエラの角』と『シェルの真珠』はコンプリートされてクリア。モンスターを千体倒すのは、すでにクリアされている。残るは『バーテンディの碧玉』なのだが……。

「まさか、まだ一個だけとはな……」

「うん。流石にもう一つくらい納品されても良いんじゃないかな……」

 アスカの言葉に、俺とカインは頷いた。

 一通り見た所で、俺たちは北の海へ足を運んだ。




 ―――




 北の海に到着した物の、プレイヤーの数はあまり多くなかった。

 やはり、『バーテンディが西の海付近で出現する』と言う情報がもうすでに出回ったか。それとも、否か。

 まあ、どちらにせよ、俺たちがする事は変わらない。それに、西の海付近へ行けば、分かる事だ。

 レベルを上げつつ、バーテンディとエンカウントしたのなら、絶対的な不利な場合でなければ必ず倒す。そして、『バーテンディの碧玉』を手に入れてギルドに納品する。

 それが、俺たちが決めた、今日一日のスケジュールみたいなもの――予定と言った方が良いかもしれないが、気にしないで置こう――だ。

 そのスケジュール――予定を遂行するべく、西の海付近へ、泳いで向かった。




 ―――




 結論的に言えば、『バーテンディは西の海付近で出現する』という情報は、出回っていないようだった。何故なら、今俺たちが居る場所――西の海付近には、プレイヤーの姿が皆無だったからだ。

「一人くらい居ても思ったんだけど……まさか、誰も居ないとはな」

「うん、予想外だよ」

「んなことより、早くバーテンディを探そうぜ!!」

 ――どうしてカインは、いつもこんなに気楽なんだろう。

 そう思いながら、「ああ、そうだな」と答えた。

 探索を始めてから、十分ほどが経った。

 様々なモンスターとエンカウントし、その度にモンスターを蹴散らし、ポリゴンに変え続けてきた結果、俺たちのレベルは20に上がった。漸く適正レベルである。

 目標である適正レベル、20間で上げる事ができた。次はバーテンディなのだが……未だに、バーテンディとはエンカウントできていない。

 ――早く出て来ないかな……。

 そう言うかのようにため息をついた。

 と、その時。

「アレン!バーテンディとエンカウントとしたぞ!!」

「マジで!?」

 カインの呼びかけに、驚きを隠そうともせず、カインが見る方向を見ながら、そう答える。

 その先には、黄緑色の小さな竜が居た。


名前・バーテンディ

属性・水

Lv・18


「やっと、だな」

「ったく、探させやがって。アレン。サクッと終わらせるぜ」

「ああ」

 俺とカインはそれぞれの武器を鞘から抜き去り、バーテンディを睨み付ける。

 後ろでは、アスカがいつでも魔法を発動できるようにスタンバイしている。非常に心強いものだ。

 バーテンディとの距離は、大体五メートルほどか。

 小声で、カインとアスカに作戦を言い渡す。

「アスカ。『氷守壁』を俺とカインのすぐ後ろに作ってくれ」

「どうして?」

 アスカが聞いてきた。

「水泳のスタートの要領で、一気に距離を縮める」

「そこからどうすんだ?」

 次はカインだ。

「俺がまず先に飛び出す。その後すぐにカインも飛び出せ。できる限り、バーテンディに気付かれないように」

「おう。それで?」

「バーテンディが俺を見た瞬間、カインはバーテンディの頭を切り落としてくれ。これが失敗に終わったら、正攻法で行く」

「はいよ!」

「わかったよ!」

 心強い返事が返ってきた直後、俺の背中のすぐ後ろに、『氷守壁』が現れた。

 それを確認した俺は両足を後ろに上げ、両足でアスカが作った氷守壁を蹴った。平泳ぎのスタートと同様に水中を進んでいく。カインも、俺の後に続く。

 バーテンディとの距離は五メートルだ。余裕で縮められる。運動神経が良いカインも、難なくこなせるだろう。

 そんな事を頭の片隅で考えながら、バーテンディに肉薄。双方の剣をバーテンディにぶつける事で、わざと軌道を強制的に変更。俺はバーテンディから見て、右の方向へずれていく。

 そんな俺を見ていたバーテンディを見て、俺は口の両端を吊り上げた。

 と、次の瞬間。

 ズバァッという、何かが切断された音がした。

 そして、バーテンディの頭が首から斬り離され、海底へと落下していった。

 まあ、落下していく途中でバーテンディはポリゴン化して消滅したが。

「何つーか……呆気なかったな」

 悪刀を鞘に収めながら、カインが呟いた。

「まあ、レベルの差が2もあったし、何より、首を跳ねただからだろうな」

「そうなのか?」

「ああ」

 これは、先日の『シェルの真珠』集めの時に気付いたのだが。どうも、モンスターは頭を胴体から斬り離された場合、例えHPが全快であったとしても、絶対にHPが0になる。

 まあ、首がなくてそれができないモンスターも居るのだが。

 それを言うと、聞いていたカインは腕を組んで何度も頷いていた。「なるほどなるほど」とぶつぶつ言っている。

 本当に分かっているのかと心配になる俺は、誰にも責められる事はないはずだ。

「ねえねえ、『バーテンディの碧玉』はドロップしたの?」

 アスカが割り込んできた。

「ああ、ちょっと待ってろよ……」

 そう言いながら、バーテンディの首を斬り落としたカインがメニューを開く。

 アイテム欄をタッチし、暫くすると、カインが「あったあった」と言った。

「じゃあ、最低でも、『バーテンディの碧玉』は二個集まったね」

「まあ、そう言う事になるな」

 嬉しそうなアスカに、俺はそう答えた。

「これからどうするんだ?」

 メニューを閉じたカインが、そう尋ねてきた。

「そうだな……」

 レベルは適正レベルである20まで上げる事はできた。つまり、一つ目の目標は達成できたわけだ。

 ならば、やる事は一つだ。

「昼になるまで、『バーテンディの碧玉』集めだな。最低でも、後三個くらいは集めるつもりでな」

「そうなるよね。私たちがここに来て結構時間が経つけど、ほとんど誰も居ないし」

 それはそれで不思議だが、別に気にする事はないだろう。どうせ、違う場所で『バーテンディの碧玉』集めをしているはずだ。

 ……俺の予想が正しければ、の話だが。

「さて。バーテンディ狩りと行きますか」

「そうだね」

「よっしゃ、やるぞ!!」

 それぞれ元気よく返答したのを確認し、俺たちは暫くバーテンディ狩りに(いそ)しんだ。




 ―――




「あらよっと!」

 ――ズバン!

 気の抜けるようなカインのかけ声がした直後、バーテンディの頭が、長い首から斬り離された。

 バーテンディの頭を斬り離した悪刀を鞘に収め、カインが俺の居る場所に近づいてきた。

「いやぁ、『バーテンディの碧玉』は、やっぱりなかなか見つからねえもんだな」

 俺の近くに来るなり、溜め息混じりにそう言った

「そりゃそうだ。てか、碧玉がなかなか手に入らないんじゃなくて、バーテンディとなかなかエンカウントできないんだよ」

 カインの間違いを指摘するかのように、返答する。

 『バーテンディの碧玉』自体は、バーテンディを倒せば百パーセントの確率で入手できる。種類や獲得できるアイテムは違うが、それはどのモンスターでも同じだ。勿論、そうではないものも存在する。

 まあ、カインが言いたい事は恐らく、バーテンディとはなかなかエンカウントできないもんだな、だろう。

 先ほども言った通り、バーテンディを倒せば『バーテンディの碧玉』は必ず手に入るのだから。

 さて。

 俺がバーテンディ狩りを始めようと言いだし、それを実行してからどれほどの時間が経ったのかは計算していないので分からない。しかし、腹時計で計るのならば、今は昼時だろう。

 結構お腹が空いてきている。

「もし本当に今が昼なら、三時間くらいかけてやっと三つだぜ?どんだけバーテンディとエンカウントする確率低いんだっての」

 毒づくカインに、俺は共感を覚えた。

 カインの言う通り、もしも今が本当に昼ならば、バーテンディ狩りを開始してから三時間くらいは経っているだろう。

「カインの言いたい事は分かるけどさ。『バーテンディの碧玉』を四つも手に入れたんだから、別に良いんじゃない?それに、レベルも22に上がったんだし」

 アスカがカインに説得を開始する。

 確かに、アスカの言う通りだ。

 バーテンディ狩りを実行する上で、バーテンディ以外とのモンスターとも、勿論エンカウントする。その際、片っ端からHPを根こそぎ奪っていったので、いつの間にか俺たちのレベルは22に上がっていたのだ。

「それに。『バーテンディの碧玉』は合計四つ手に入ったんでしょ?だったら、そろそろギルドに行こうよ」

 アスカの提案に、カインが頷いた。

「その前に、どっかで食べねえか?腹が減ったぜ」

 満場一致でレストランに向かった。

 焼き魚だけは絶対に頼まないぞと、堅くてどうでも良い決心を胸に抱きながら。




 ―――




 昼食を済ませ、ギルドに向かった俺たちは、出現条件を見た。

「あ!『バーテンディの碧玉』が残り三つになってるよ!」

 一足早くギルドに向かっていたアスカが、少し離れた場所にいる俺とカインに話しかけてきた。

 アスカがいる場所に行き、出現条件を見てみると、確かに『バーテンディの碧玉』を納品しなければいけない数が残り三つになっていた。

 どうやら、運の良い誰かがバーテンディとエンカウントし、『バーテンディの碧玉』を納品したようだ。

 何はともあれ、俺たちはギルド職員に、『バーテンディの碧玉』を三つ納品した。残った一つはどうなったかというと、ギルドが買い取ってくれた。ちなみに、八千シアで売れた。結構高値である。

「これで、やっと第二層のラストクエストが出現するなぁ。長かったよなー」

「……って言っても、第二層に来てからまだ二週間も経ってないけどな」

 腕を頭の後ろで組みながら呟いたカインに、俺が言葉をかけた。

 それにしてもだ。

 第一層のラストクエスト出現には一ヶ月もかかったのに、どうして第二層のラストクエスト出現には、たった二週間足らずでいけたのだろうか。

 やっぱり、出現条件の違いだろうな。だって、第一層の時はモンスターを十万体倒せだったからな。

 ……と言う風に、自分で考えて自分で解決していると、ギルド内が光で満たされた。

 ラストクエスト出現の合図である。

「(今回も第一層の時と同じように、犠牲者なしでクリアできると良いんだけどな)」

 一瞬だけだが、何故か、胸騒ぎがした。






To Be Continued.

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