第1話 初ログイン
西暦二〇八〇年四月十四日。
この日、日本の東京で初めてVRMMORPGが、五千個限定で発売された。
そのゲームが発売されたと同時に完売。一時間もかからなかった。
そしてその日の午前十一時。
VRMMOに、何かが起こる。
---二月十日---
「VRMMO?」
『ん?翔馬は知らねえのか?』
「聞いたことはあるけど……よく知らないな」
俺こと高木翔馬は幼なじみである桐谷宗と、自分のベッドに腰掛けながら通話している。そしてその内容は、VRMMOと呼ばれるものについてだった。
「で?何なんだよ、そのVRMMPって」
『VRMMPじゃねえよVRMMOだよ!お前わざとだろ!!』
「バレた?」
『お前なぁ……。まあいいや。そのVRMMOってのは、最新型のゲームだ』
「へえ。どんなゲームなんだ?」
『自分がゲームの世界に入って敵と戦えるんだ』
「それは面白そうだな」
『だろ!?しかもこのゲームh--』
----ブチ。
俺はこのまま通話を繋いでいたら、間違いなく宗が専門的な話を熱く語ってくると判断。通話を無理矢理切った。
そして、天井を見てVRMMOについて考えた。
しかし、ゲームの中に入れる……か。
「やってみようかな……」
そう呟いたとき、俺の携帯電話の着信音が鳴った。
相手は宗だ。
俺は携帯電話を開き、通話ボタンを押して耳に当てた。
「何だよ」
『何だよじゃねえよ!話が終わってねえのに勝手に通話切るな!!』
どうも、俺が無理矢理通話を切ったことが気に食わなかったらしい。
「まあまあ、そう怒るなって。宗の話を聞いて、俺もそのVRMMOをしたくなったからさ」
『そうか!なら、店に予約入れとかないとな!』
「ちょっと待て」
『何だ?』
「そのVRMMOって、いくらするんだ?」
なんだかんだ言って、結局気になるところはそこだ。
『ソフトと専用機種が必要になるから……大体一万五千円くらいだな』
「約一万五千円か……」
俺の現在の小遣いは……確か二万五千円くらいだったな。
まあ、いけるか。
「よし、俺も買うか」
『そうかそうか!よし、今から予約……あ』
「どうした?」
『美野里も誘おうぜ』
「美野里を!?」
岸本美野里。
俺の二人目の幼なじみだ。
彼女は容姿端麗、成績優秀--体育を除く--な少女で、さらに勉強熱心。それ故、美野里はゲームをしたことはあまりなく、現在では無縁と言っても過言ではない。
そんな彼女を、宗はゲームに誘おうと言っているのだ。
正直、無理だと思う。断られるだろと思う。
それを口にすると、宗が『その時はその時だ』と言って通話を切った。
俺も通話を切り、携帯電話をベッドに置いた。
「多分……無理だろうな」
あのゲームとは無縁とも言われている美野里が、最新型のゲームをするところなんて……
「想像出来ない……」
俺と宗の通話が終わってから、二分弱が経った頃、俺の携帯電話の着信音が鳴った。
相手は……宗だ。
あまりにも早いとは思うが、とりあえず電話に出る。
「どうだった?」
--断られたと思うけれど。
『即答でやるって答えてた』
宗の声を聞いただけでも、驚いている様子が分かる。
「……マジかよ」
『なんか、『私だけ仲間外れとか嫌だ』って言ってたぜ』
まあ、ゲームをする理由は人それぞれだよな。
『と、とりあえず、俺と翔馬と美野里の三人で予約入れとくぜ。発売日が楽しみだな~』
「発売日っていつなんだ?」
『ん?そう言えば言ってなかったな。四月十四日だぜ』
「了解」
その言葉を最後に、俺は通話を切った。
しかし、美野里がゲームをする日が来るとはな……。
--四月十四日--
俺達三人は今、朝九時から開店した店のレジに並んでいる。
レジには結構な列が出来ていて、その人たち全員がVRMMOを買うのだろうと宗が呟いていた。
レジは宗、美野里、俺の順番で並んでいる。
茶色一色に染めた髪をスポーツがりにし、髪と同じ茶色の瞳を持った少年。それが宗だ。彼は運動神経は良い--故に体育の成績だけは優秀--が、基本的に脳筋だ。体は筋肉質で、この三人の中で、一番身長が高い。
美野里は漆黒で艶々している髪を肩辺りまで伸ばし、暗い茶色の瞳をしている。体のバランスが良く、この三人の中では一番身長が低い。
漆黒の髪と同じ色の瞳を持つ少年が、俺である。成績や運動神経も全国平均より少し上くらいの、何処にでも居るような普通の高校生だ。身長は宗と美野里の中間辺りだ。
はっきり言って、俺の外見は地味だ。
美野里はどちらかと言うと美人で、宗はイケメン。俺は地味だが、二人と居ると余計地味に見える。
……とまあ、これが俺達三人のそれぞれの外見だ。
「あの『Unique Online』ってゲーム、どんな内容なんだろうね」
レジの方を見ながら、美野里がそう言った。
「さーな。俺もした訳じゃないから何とも言えないけど、多分面白いと思うぜ」
宗が少し顔だけを後ろに向け、美野里に言った。
「翔馬はどう思う?」
「そうだな……面白いと思っておこくとするか」
変に期待していると、実際にプレイした時の感動が薄れてしまうからな。ちょっと期待するくらいが丁度良い。
「そう言えば、美野里は最近ゲームとかしてるのか?」
「全くしてないよ。だから、ゲームをするのはかなり久し振りだよ」
宗の疑問に、美野里が答えた。
これは俺も気になっていたことだから、解明出来て良かったと思う。
……まあ、解明したのは宗だが。
そんな雑談をしていると、いつの間にか宗の番になり、俺達三人はゲームを購入。店の外へ出た。
「これ……滅茶苦茶でかいけど、何が入ってるんだろ?」
「『Unique Online』のソフト自体は大きくないぜ。だとしたら、専用の機種がでかいんだろ。あれ、確かヘルメット型って聞いたし」
「ヘルメット型?それなら大きいはずだよ」
美野里が自分の紙袋の中を覗き込み、一人で納得している。
支払った金額の内、三分の二はこの専用機種の金額だ。
「さてと。ゲームにログインしたら、どこかで待ち合わせでもしようぜ」
「どこにするんだ?」
「そりゃあ、ゲームにログインして最初に出た場所の近くで良いんじゃねえか?」
こんなにあやふやだと、会える気がしないのは俺だけだろうか。
「とりあえず、家に帰ろう。その後、すぐにログインだ!」
「そうだな」
「早くやってみたいしね!」
二人に比べて俺のテンションは低く見えるかもしれないが、勘違いしないで欲しい。
……俺はゲーム好きの宗よりも楽しみで仕方ない!
と言うわけで、俺達三人はそれぞれの自宅へ帰った。
--午前九時三十分・翔馬の部屋--
部屋に入るなり、俺は紙袋から『Unique Online』のソフトが入った箱と、ヘルメット型の専用機種が入った箱を取り出した。
最初に専用機種を箱から取り出し、それを見た。
ヘルメット型の専用機種には一つのランプがあり、ソフトを入れるための場所があった。
次に取扱説明書を取り出して、その表紙をめくった。
「コンセントを繋いで、これを被って……」
取扱説明書を読みながら、とりあえずヘルメット型の専用機種を被ってみる。
「で、此処のスイッチを……押すと」
電源のスイッチを押した。
ソフトを入れていないため、勿論電源は入らない。
「これは良いとして、次はソフトの方だな」
専用機種のコンセントを抜き、それをベッドの片隅に置く。
そしてソフトとその取扱説明書を取り出した。
ソフトはCDの様になっていて、データがある面を覆う様に透明なカバーが付いている。そのカバーは一部だけなく、恐らくそこからデータを読み込むのだろう。
それを自分の机に置き、ソフトの取扱説明書の表紙をめくった。
「えーと。このゲームは完全レベル制て、戦闘中に発生する痛みは不快感を感じるだけなのか。このゲームには『剣士』、『銃士』、『魔導士』の三つの職業がある。で、魔法を使えるのは『魔導士』だけなのか」
魔法はRPGの王道的存在だが、このゲームには使えるプレイヤーと使えないプレイヤーが出てくるのか。
俺は魔法を使ってみたいと思うが、やっぱり俺は剣を使ってみたいと思う。だから、俺は『剣士』を選択しよう。
ページをめくった。
「このゲームには『炎』、『水』、『雷』、『土』、『風』の五つの属性があって、一人一つしか選べないと」
さらに、属性には相性がある。
・炎属性は風属性に強く、水属性に弱い。
・水属性は炎属性に強く、雷属性に弱い。
・雷属性は水属性に強く、土属性に弱い。
・土属性は雷属性に強く、風属性に弱い。
・風属性は土属性に強く、炎属性に弱い。
と、取扱説明書に記されている。
別に何属性でも良い気がするが、此処は気に入った属性を選ぶとしよう。
「雷属性に決定だな」
雷ってカッコいいじゃん。
次のページをめくる。
一番左上に『剣士を選んだら』と書かれているため、恐らく『剣士』の説明なのだろう。
「……へえ、武器を選ぶのか」
『剣士』は武器を装備し、フィールドのモンスターと接近戦を行う。
戦闘で使用する武器は、『大剣』、『太刀』、『片手用長剣』、『細剣』、『槍』の五種類から選ぶ。
『大剣』と『太刀』は扱い難そうだし、『細剣』と『槍』も何だか今一。消去法で残ったのは、『片手用長剣』。
よし、これにしよう。
そのページの残りには『銃士』と『魔導士』の説明が書かれているが、俺には関係ないと思い、スルー。
次のページへ。
「次は……ゲームクリアの条件か」
このゲーム、『Unique Online』の舞台となるのは、『古代城・シークレアス』。
シークレアスは全部で20層あり、それぞれの層に普通のクエストとは別の『ラストクエスト』--これのクエストをクリアしたからと言って、その層に行けなくなる訳ではない--と言うクエストがある。しかしそのクエストには出現条件があり、その条件を満たさない限り、ラストクエストをクリアするどころか、実行することも出来ない。
そのラストクエストをクリアすると、次の層への扉が開き、次の層へ行くことが出来る。
そして、第20層のラストクエストをクリアしたとき、ゲームクリアになる。
そして、ラストクエストは絶対に一人ではクリア出来ない。
「此処まで書くってことは、相当難易度が高いんだろうな……」
そう呟きながら、ページをめくった。
「次はこのゲームの特徴か」
このゲームには『ユニークスキル』と言うものがある。
そのユニークスキルは、ゲーム内でたった一人しか持っていないスキルのことを言う。
そのスキルを、プレイヤー全員が持っているのだ。
唯一の能力。 それこそが、この『Unique Online』の最大の醍醐味であり、ゲームの題名の由来でもある。
「そんな設定もあるのか」
そのことに感心しながら、ページをめくり、奇妙な一文を見つけた。
「ん?『最後に自分の体を触る』?」
何か変だなぁと思いながらも、書かれている通りに行った。
そして取扱説明書を箱の中にしまい、ソフトを掴んでヘルメット型の専用機種にセットし、コンセントを繋いだ。
専用機種を被り、ベッドに横たわる。
電源スイッチを入れ、目を閉じた。
---
目を開くと、そこは見たことのない、黒い壁に覆われた少し広めの空間だった。
その空間の所々に緑色の光が移動しており、此処がゲームの世界だと知る。
俺の今の服装は、このゲームの電源を入れたときと全く同じ服装だった。
よく見ると、編み目のようなものもリアルに再現されている。
最新型のゲームはすごいと感じた。
『アバター設定を行います』
そうしていると、何処からともなくアナウンスの声が聞こえてきた。
その声は機械的ではなく、本物の人間の声で話しているように聞こえた。声は少し高く、女性だろう。
『アバターの名前を入力して下さい』
アナウンスがそう言った直後、俺の鳩尾の手前辺りに緑色に光るキーボードが出現した。そのキーボードに書かれている文字はカタカナだ。
「名前か。考えてなかったな……」
悩むこと数分。
アバターの名前は『アレン』に決定した。
『次に、職業を選んで下さい』
キーボードが一瞬だけポリゴンになったと思った瞬間、実体化。文字が表示されていた場所には、『剣士』、『銃士』、『魔導士』の三つが表示されている。
俺は迷わず『剣士』タッチすることで、職業を選択した。
同じ様なことを繰り返し、武器の選択になったとき。気になるものが視界に入った。
それは、武器を選択するときだ。
「ん?『双剣』って何なんだ?」
上の段に『大剣』、『太刀』、『片手用長剣』が表示され、下の段に『細剣』、『槍』が表示されている。『双剣』は、『槍』の横だった。
もう一度言おう。
『双剣』って何なんだ?
確か、取扱説明書を読んだときは無かったよな?
うーん……。
まあ、考えても分からないだろうし、気を取り直して武器を選ぶか。
しかし、『双剣』か。
一刀流か、二刀流か。
そうだな、二刀流の『双剣』を選ぼう。
二本の剣を使って戦うって、何か憧れるよな。
そんな理由で、俺は『双剣』を選択した。
その後もアバター設定は続き、ようやく最後の設定になった。
『では最後に、アレンさんのユニークスキルを決めます』
アナウンスがそう言ったとき、俺の手前でルーレットが始まった。そのルーレットは上から下へ流れていて、そのスピードは速く、何が表示されているのか分からない。
『ユニークスキルはルーレットで決めます。なので、そのルーレットに一度タッチして下さい』
つまり、ユニークスキルは自分の運次第ってことか。
俺の運は普通だから、恐らく弱いスキルにはならないと思いたいな……。
そんなことを考えながら、俺はルーレットに一度タッチした。
タッチしたと同時にルーレットはストップ。真ん中に表示されたところが黄色い光で囲まれ、消滅した。
おい、ちょっと待てよ?
もしかして、さっきのが俺のユニークスキルになるのか?
一人で焦っていると、アナウンスが流れた。『アレンさんのユニークスキルは、『小さくなる』に決定しました』
無慈悲にも、俺のユニークスキルは『小さくなる』に決定した。
俺が落ち込んだように深々と溜め息をついたとき、アナウンスの声がした。
『これでアバター設定を終了します。これより、第1層のギルドへ転送します』
アナウンスが言い終わると同時に、俺の体が光に包まれた。
『では、お楽しみ下さい』
--第1層・ギルド--
俺が瞼を開くと、そこは沢山の人々が行き交う巨大な建物--ギルドだった。
ギルドは本当に大きく、このゲームを購入した五千人のプレイヤー全員が入っても大丈夫そうに見える。
ギルドが広いこと事態は別に良いのだが、そうなると問題が生じる。
「(宗と美野里に会えるのか?)」
そう思いながら周囲を見渡していると、壁に鏡が取り付けられていることに気付いた。
その鏡に映っている俺の顔は現実の顔とは違う--髪の色は現実と同じ黒--が、やはり地味--自分で地味になるように選んだ--である。服装も軽い防具を着ているだけだ。背中には二本の剣が、Xの字のように重ねられて装備されている。
それを見て、余計に不安になる。
顔も違うし人も沢山居るし、現実の名前を出すわけにもいかない。
会える気がしなくなってきたのは気の所為ではあるまい。
とりあえず、自分のステータスを見てみる。
俺の視界の右上の方に、俺のアバター名とレベル、緑色の体力ゲージと数値が表示されている。
それらをまとめてみると、こんな感じ。
名前・アレン
Lv・1
HP・165/165
「さて、どうすればいいんだろ……」
改めて現状を把握し、呟いてみたが、俺の声は現実と変わっていないことに気付いた。
そう言えば、声の設定はなかったな。
「もしかして……翔馬じゃねえか?」
聞き覚えのある声がした方向へ振り返ると、そこには金髪碧眼の少女と茶髪茶目の少年が居た。 少女の方は茶色いフード付きのコートを纏っていて、右手には木製の杖が携えてある。 少年の背中には、長めの緩やかな曲線を描いた長い剣--太刀--が携えられている。
二人を見た俺は、この二人が誰か一瞬で理解した。
「宗……美野里……」
---
「アレンも剣士にしたのかーー」
「ああ。被っちゃったな」
俺と宗ことカインはお互いの職業を教え合い、苦笑していた。
カインと美野里ことアスカの二人とパーティを組み、それぞれはそれぞれの簡単なテータスを見ることが出来るようになった。
名前・カイン
Lv・1
職業・剣士
武器・太刀
HP・133/133
名前・アスカ
Lv・1
職業・魔導士
HP・196/196
MP・303/303
二人の簡単なステータスを見て、思ったこと。
「人によってHPの上限が違うんだな」
「本当だな。つーか、アスカのMP300越えだぜ」
カインはアスカのMPを見て驚いている。
「それより、カインの武器は太刀で、アレンは双剣なんだね」
「ん?双剣って何なんだ?そんな武器ってあったっけ……」
アスカの言葉を聞いたカインは、何やら考え出した。
「え?双剣って、取扱説明書には書かれてなかったの?」
アスカが俺に聞いてきた。
「そう言えば、取扱説明書には書かれてなかったから不思議に思ったけど……別に気にすることないんじゃないか?」
「いや、気にしようぜ!」
俺の発言に、カインが異論を唱えた。
「いいか?取扱説明書に書かれてないものを持ってるってことは、すごいことなんだぜ?」
「そうなのか?」
俺がカインに聞き返すと、カインは頷いた。
そうか。カイン曰く、俺はすごいものを持ってるのか。
「そう言えば、二人のユニークスキルって何なの?」
アスカの質問に俺が硬直。カインはアスカに疑問をぶつける。
「そう言うアスカのユニークスキルは何なんだ?」
「私のユニークスキルは、『特殊属性・氷』だよ。つまり、私は氷属性ってこと」
「すげえな!五属性以外の属性か!」
「へ、へえ~、そうなんだ……」
カインはアスカのユニークスキルに感動しているが、俺はそうはならない。
だって、カインのユニークスキルを言ったら、次は俺のユニークスキルを言わなくてはならなくなる。
俺のユニークスキルを二人に言ったら、少なくともカインには笑われる。爆笑されるかもしれない。
赤っ恥をかくだけなのだ。
「俺のユニークスキルは『二重能力』だぜ。これは、二つのスキルを手に入れることが出来るんだ」
「例えば?」
「アスカ、よく聞いてくれた!実は俺……魔法も使えるんだよな!」
「嘘ぉ!?」
「マジかよ……」
『Unique Online』で、魔法を使える職業は『魔導士』ただ一つ。
だが、カインは『剣士』でありながら魔導士しか使えない魔法も使えると言うのだ。
てか、色々とヤバいぞ、俺!
だって俺のユニークスキルは……。
「アレンはどうなんだ?」
「あ、私も気になる!」
何も知らない二人が、俺に二つの殺傷能力抜群の爆弾を投下した。
ああ、言うしかないのか……。俺、見せ物になるのか……。
「ねえ、どんなスキルなの?」
はあ、腹を括るか。
「俺のユニークスキルは、『小さくなる』だよ」
「…………」
「…………」
「止めて!可哀相なものを見るような視線を向けるのは止めて!」
「い、いや、そんなユニークスキルもあるんだなって思って……ね?」
アスカはカインの顔を見て笑った。
「あ、ああ。小さくなるって、どんな時に使うんだろうな」
そう言ったカインは、俺の予想を裏切って本気で考え始めた。
「で、でも!気にすることないよ。だってアレンの武器は『双剣』なんだから!」
「アスカ……」
俺を慰めてくれるアスカを涙目で見ていると、カインが何かを思いついたように話し始めた。
「考えてみたけどよ、アレンのユニークスキルは使えなiんがっ!?」
「カインは黙ってなさい」
俺が一番気にしていることを言い放ったカインの頭を、アスカが平手で叩いた。
此処がフィールドだったら、HPが10くらいは減ったな。
「そうだ。これから町の店に行こうぜ」
「店で何をするの?」
「決まってんだろ?アイテムを買いに行くんだよ」
カインを先頭に、俺達三人はギルドを出た。
To Be Continued.
--十一時まで、後一時間。