PART1
わたしはいつのまにか空を見上げていた。
雲ひとつない真っ青な青空が、わたしの目の前に広がっていた。
今日もいつものように授業を受けて、友達と当たり障りのない会話をして、
部活をしていない私は、放課後はすぐに学校を出る。
第一志望だった高校の受験に失敗したわたしは、家からすぐの公立高校へ進学した。
特になりたい職業があるわけではない私は、別にどんな高校でもよかった。
その第一志望の高校というのも、私のではない。中学の時の、ある程度仲が良かった友達に、
「同じ高校にいきたいなあ~」
と言われ、わたしもちょうど行きたい高校を全然言わないから親がイライラしてきていたときだったので、適当に同じ高校にしたのだ。
正直、わたしはそんな、おそろいのキーホルダーを買ったり、休日は一緒に映画を見たりという形だけの友達は、本当の友達ではないと思う。だからと言って、わたしに、本当の友達がいるかと聞かれたら、わたしは、首を横に振るだろう。
学校を出たわたしは、特に行くあてもないままぶらぶらと歩いていた。すると、私がここに生まれて、住み続けた15年間のうち、1度も見たことがない景気が広がっていた。
一瞬見たら、ただ木が生えているだけに見える。いや、もしかしたら、この場所は、誰にも見えないようになっているのかもしれない。そう思った私は、一歩また一歩と足を踏み入れて行った。
しばらく進むと、少し開けた場所に出た。中心に大きな木が立っているところから、円を描くように丸く木が生えていなかったのである。まるで、誰かが意図的に造ったような空間だった。わたしは、その空間に足を踏み入れた。ずっと歩きっぱなしだったので、木の根元に腰かけた。風が吹いているわけではないが、とたんに涼しく感じた。すると、私が来た方から音がした根で、わたしは振り向いた。
そこにい種は、幼馴染の祐介だった。
「か、かおり?」
「う、うん」
「なんでこんなところにいるの?」
「ゆ、祐介こそ。どうしてこんなところに?」
「俺は、いっつもさぁ、なんか気分が乗らないときは、ここに来るんだあ。」
「気分が乗らないときって、何の?勉強の?」
「まあ、勉強って行ったら、まあね、勉強に近いかな?」
わたしは、中学に入ってから祐介とまったく話していなかった。
だからなのか、なかなか会話が続かない。
「そういえばさ、最近全然話してなかったな。」
「うん。そうだね。」
わたしが思っていた事を言われ、ついびっくりしてしまった。
祐介は、これまでまったく話してなかったのをおくびにも出さず、わたしに、ふつうに話しかけてくれた。
わたしと祐介は、家が近所で、二人の家の近くに同じ年の子供がいなかったので、二人でいつも遊んでいた。小学校に入学してからもそれは変わらなかった。
二人で学校から帰ってきて、二人で遊んで、帰ってくるのが遅かったら、二人で怒られ・・・。
何をするにも二人だった。
でも、人になかなか話しかけれない人みしりなわたしと違って、祐介は、クラスの人気者だった。
三年生、四年生・・・と学年が上がっていくにつれて、二人で過ごす機会がなくなってしまった。
もしかしたら、わたしがその機会を壊していたのかもしれない。
でも、小学校を卒業して、今までの四年間の事を、何もなかったように接してくれる祐介は、
とても優しかった。