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天使の翼を喰らう者

この作品は処女作であり,久しぶりの次話投稿です。


文章スタイルが変わったり,内容が矛盾しているかもしれません。



私はリンデ・エスカレーネ。


かつての英雄ダルトス・エスカレーネとイリア・エスカレーネの間で誕生した異種。


私は天使を狩っている。


狩って,狩って,狩りまくって,翼を貪っている。


私の異種の能力〈翼喰らい〉は天使の翼を吸収することで際限なくエーテル力を高めていく。


今や中級天使ですらも雑兵でしかない。


けど,足りない。


まだ,足りない。


まだ,私の力ではあの〈黄昏の翼〉には遠く及ばない。


人類軍最強の三聖者にして,リーダーだったお父さんを無惨に殺した〈黄昏の翼〉。


あの黄昏の翼を殺さない限り,私は前に進めない。


「この出来損ないが!」


振り向かなくても分かる。


下級天使が剣を振りかぶってるのだ。


私は自動機械のように振り向き様に剣を薙ぎ払い,返り血を浴びる。


「手応えがない。まるで紙を切っているみたい…」


剣を振るい,血を払う。


今日の天使狩りはここまで。


私はアジトに戻っていく。








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー







「相変わらず,派手にやったようだな。血塗れのリンデ」


私を出迎えたのはアデル。


アデル・エスカレーネ。


私と同じ故郷出身であり,兄のような存在。


消滅したミッドガルドを出てから,私を影で支えてくれた唯一無二のパートナー。


「何度言ったら分かる。血を早々に洗い流せ。あまり血の匂いが染みついていると相手に無用な警戒心を抱かせることに繋がる…」


「もう遅いよ,アデル。私にとって血の匂いは体の一部。私に体の一部を引きちぎれって言うの?」


アデルは嫌みなほどにいつも冷静だった。


顔立ちは下手な女よりもよっぽど美人だからこそ,尚更嫌みなように見えてくる。


だから,私はついアデルに反発してしまう。


「分かっているのか?お前は俺達〈翼断つ者〉の旗頭だ。立場をもう少し理解しろ…」


「だったら,アデルがリーダーになればいいよ。私の取り柄は天使を狩ることだけなのだから…」


ミッドガルドにいた頃はアデルに素直に従っていたのに。


どこですれ違ってしまったのだろうか。


「どうやら,慢心しているようだな,リンデ。表に出ろ,修正してやる」


「望む所よ。今度こそアデルを地面に寝かせてあげる」


私とアデルは表に出ようとする。


「おいおい,またお二人さんで熱いデートかい?今度はどちらが押し倒されるやら?」


「俺は今度こそリンデがアデルを押し倒すのに賭けるぜ」


「私はアデルが押し倒すのに賭けるよ。やはり男が女をリードしないといけないでしょう」


ギャラリーが好き放題に言っている。


けど,私にとっては些細な雑音でしかない。


今度こそアデルに勝ってみせる。








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー








「さあ,遠慮はいらん。どこからでも来い,リンデ…」


アデルは剣を構えること無く,ただ手に持っているだけの体勢だった。


リンデは動こうとしない。


いや,動けなかったのだ。


(隙がない!まるで空気のように何も感じられない…)


リンデの額に汗が流れてくる。


リンデとアデルは幾度も訓練で剣を交えていた。


リンデの戦績は全戦全敗。


アデルに一度も勝ててない。


力とスピードは数え切れないほどの翼を貪り,力を増したリンデの方に分があるはずだった。


けれど,リンデはアデルに勝てないのだ。


「どうした,怖じ気づいたのか?」


「くっ!嘗めるなっ!」


リンデが風の刃の如く,アデルに斬りかかっていく。


上級天使でさえ,視認することが困難だろう。


だが,アデルは草を払うかのように剣を振り,リンデの斬撃を受け流す。


「…っ!」


リンデにとっては渾身の一撃だったのかもしれない。


だから,受け流されるとは思っていなかったのだろう。


僅かにリンデの動きが硬直する。


それをアデルが見逃すはずがなかった。


かきんっ!


リンデの剣を空高く投げ出され,空しく地面に落ちていく。


「まだまだだな…」


アデルの剣が気だるげにリンデの首筋を撫でていく。


「それはこっちの台詞よ!」


リンデはアデルに体当たりを仕掛けようとしてくる。


戦場では例え,武器が無くても己の身一つあれば,いくらでも戦っていける。


勝敗は生きるか死ぬかの問題だ。


「甘いな…」


アデルはリンデのタックルを体を逸らすだけで避け,手でとんとリンデの体を押す。


びたーん!


リンデはアデルに体を押されて勢いを殺すことが出来ず,そのまま地面に転倒していった。


「ふっ,地面に寝るのはリンデだったみたいだな…」


「ち,畜生!少しは手加減しろ!」


リンデは思わず,昔みたいにアデルに罵声を浴びせていた。


そのリンデにアデルはますます意地悪な笑みを浮かべて見下ろしてくる。


「ふふっ,反省しろよ,リンデ…」


アデルは笑いながら立ち去っていく。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー








また負けてしまった。


なぜ勝てない。


私は力やスピードではアデルに勝っているはず。


どうしてなんだ。


ムシャクシャしたときには天使狩りがいい。


早くどこかで天使を狩りたい。


狩っていって強くなりたい。


早くアデルに認めてもらいたい。


私はミッドガルドから出てから,アデルに影に日向に支えられてきた。


その頃の私とアデルの生活は何振り構わないほどの道のりだった。


『お前には翼喰らいの能力があるらしい。強くなりたければ,使いこなせ。自分を見失うな』


アデルは当時右も左も知らない私に学問,剣技,処世術,戦略,戦術など生きるために必要なものを徹底的に叩き込まれた。


まさに地獄の特訓だったと言っていい。


私は何度頭の中でアデルを殺していったか数知れない。


けど,その地獄の特訓があったからこそ私は地獄の戦場で生き抜いていけた。


そのことに対しては悔しいけど,感謝するしかない。


今の私があるのはアデルのお陰なのだから。


だからこそ,アデルに認めてもらいたい。


成長した自分を見せていきたい。


「ボクは,私は強くなる…」


気を抜いてしまうとつい“ボク”と言ってしまう。


これだけは絶対にアデルに聞かせてはいけない。


絶対にアデルは笑ってくる。


昔の自分はもう死んだのだ。


私はリンデ・エスカレーネ。


天使を狩る者。


天使の翼を喰らう者。


黄昏の翼を追う者。


それが私。

ハーレム作品も執筆中ですけど,たまには重厚な物語もいいですね。


この作品が重厚かどうかは別として…。


御感想お待ちしています。

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