審判,そして…
はじめまして,健康に生きる尾床です。初めての連載小説です。これは作者の妄想と自己満足,ご都合主義によるもので文章初心者の駄文です。それでも良ければ,どうぞご覧になって下さい。
時は20××年,人類は戦争を繰り返し,星を荒廃させ,数多の絶滅種を出していた。
生態系が崩壊し,もはや星は緩慢なる滅びをまつのみだった。
そして,ついに人類が生み出した大量殺戮兵器により,星が滅びようとしたときであった…。
『モハヤ人にコノ世界ヲ委ネテオケヌ』
天より玲瓏なる声が世界に響き渡っていく…。
死の灰により閉ざされた空から一条の光が差し,翼有る者が降り立っていく。
神々しき白き翼を纏い,神の命により麗しき姿を世界に晒していく。
それは〈天使〉とよばれる存在。
それは〈執行者〉とよばれる存在。
『裁キヲ受ケヨ,愚カナル種』
『世界ハ我等ノモノトナル…』
人類にとって〈天使〉とは自らを滅ぼす悪魔の如くの存在だった。
天から地に降り立つ〈天使〉は〈エーテル〉と呼ばれる超常的な力により次々とヒトを狩り始めていく。
〈エーテル〉は〈天使〉の呼応により,森羅万象全てを操り,時には敵を切り刻む剣となり,時にはいかなる刃をも通さぬ盾となり,神の力を振るっていくのだった。
〈天使〉の神がかった力の前では人類が幾千の歳月をかけて築き上げた文明もまた無意味なものであった。
人類が支配していた世界は〈天使〉によって斯くも空しく蹂躙されていくのだった。
そして,〈天使〉は全人類の7割を死滅させ,〈絶対統制〉により管理される存在と成り下がる。
すなわちヒトは天使の家畜となった。
天使の玩具となって嬲り殺されるモノもいれば,娯楽で殺し合いをさせられるモノもいれば,サンプルとして生きたまま解剖させられるモノもいた。
かつて世界の支配者だった人類は斯くも惨めな責めを負うことになる。
これは天の裁きだと打ち拉がれる者がいた。
これが神が定めた運命だと諦める者がいた。
しかし……。
再び世界を人類の下へと取り戻そうと叫ぶ者がいた…。
「この星は俺たちのものだ!」
「トリなんぞの家畜なんて真っ平だ!」
「我等が生きる天地を取り戻そうぞ!」
ついに人類は天使に牙を向けた。
これが〈第一次聖戦〉が始まりだった。
人類は叡智の限りを尽くし,科学の力を持って,エーテルを駆使する強大な天使兵に立ち向かっていっtた。
そして,幾多もの犠牲を払い,ついには,天使兵を捕虜にすることに成功するのだった。
直ちに天使の生態を研究し,天使の持つ未知なる力〈エーテル〉を解析していくのだった。
エーテルの力によって殺された兵士と天使の解剖により,天使の血肉そのものがエーテルの成分であることを発見するのだった。
人類は天使の血肉を鉄とともに溶かし,エーテルの力が宿った兵器〈エンジェリウム〉を生み出していき,さらに血肉を兵士の身体に移植し,人体強化させ,エーテルを扱う力を持たせる兵士をも生み出していった。
これを機に人類軍の反撃は始まっていく。
破竹の勢いで天使兵を殲滅させ,家畜となっていた同志を解放していく。
一方,天使軍は自らよりも遙かに劣る生物であるヒトのまさかの反撃に戸惑い,成す術も無く蹂躙されていった。
単純に強大な力を振るえば狩れるはずのヒトが天使兵に匹敵する力を持ち,尚かつ戦術と戦略を駆使していく状況に対応しきれないのだった。
瞬く間に人類軍の勢力圏が拡大していき,天使軍に対し優位の戦況に持っていくのだった。
しかし,人類軍は知らなかった。
天使軍が本気でないことに…。
天使には,下級天使,中級天使,そして,上級天使による階級で構成されていた。
今まで人類軍に投入していた天使兵はいわば下級天使,雑兵に過ぎなかったのだ。
人類軍の想定外の猛威に天使軍最高統治機関〈大天使法院〉は人類を危険レベル1からレベル2へと繰り上げ,中級天使を投入,さらに上級天使を司令官として派遣することを決定するのだった。
「劣種如キガ…」
「我等神ノ御使イニ逆ラウ身ノ程知ラズヨ!」
「天ノ裁キニテ悔イルガヨイゾ!」
この機に人類軍は再び劣勢に追い遣られる。
天使の力を得た人類といえど,所詮は借り物の力。
戦闘力でいえば,辛うじて下級天使に及ぶ程度。
その上位たる中級天使の戦闘力の前に成す術も無かった。
さらには上級天使等の指揮による戦略,戦術により人類軍は翻弄されていくのだった。
そして,勢力圏は天使軍に再び取られていき,人類軍は敗退を余儀なくされていった。
人類は改めて天使軍の強大さを思い知ることになった。
こうして,〈第一次聖戦〉は天使軍の勝利でもって幕を閉じた。
人類は再び天使の管理下に置かれるのだった…。
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天使の管理下に置かれた人類はゲリラ的に天使に抵抗しながらも天使という存在と関わることになる。
そして,高い知性と力を誇る天使にも人と同じ心があることを知ることになった。
これが後の〈第二次聖戦〉の遠因となっていく…。
天使の中でも気まぐれに人と交流を取る者がいた。
異性であれば,契りを結ぶこともあった。
天使とヒトの間で産まれた存在しないはずの子供〈異種〉。
彼らは天使が行使するエーテルの他に固有能力を持っていた。
その力は身体を炎と化す者,欠損した四肢を再生させる治癒能力,物質を別の物質に変換させる錬金術等の異能があった。
特に恐るべきは他者のエーテルを吸収して自らの力に変換する能力である。
この力により,中級天使,さらには上級天使に匹敵する戦闘力を持つ〈異種〉が出てくるのだった。
それに目をつけたのが当時の人類軍首脳だった。
彼らは異種を徴兵し,対天使用切り札の特殊部隊を編成していった。
さらに長きに渡る人類との交流により,天使軍の中で人類の擁護派と排除派と二つの派閥に分かれ,熾烈な政戦を繰り広げていた。
そして,擁護派は天使軍から離反し,人類軍の味方となったのだ。
擁護派のほとんどはヒトと契りを結んでいたことが要因だった。
これには大天使法院は激怒し,再度天使軍を差し向けるのだった。
〈第二次聖戦〉の始まりとなる。
〈異種〉の特殊部隊と擁護派の天使軍を味方につけた人類軍は第一次聖戦とは比較にならないほどの戦力を誇っていた。
大天使法院は人類軍に対する危険度レベル2からレベル3に繰り上げ,上級天使をも総動員させ,戦果を拡大化させていく。
戦争の最中,両軍には英雄と呼べる存在が出現する。
天使軍には最高司令官にして智将の上級天使と前線指揮官であり猛将の上級天使で構成される〈双翼〉。
人類軍には異種特殊部隊〈神殺し〉隊長・副隊長の双子と擁護派筆頭上級天使で構成される〈三聖者〉。
英雄率いる両軍の戦いは苛烈に極まり,多大なる犠牲を支払うこととなった。
決着が着かないまま膠着状態となっていた。
しかし,大天使法院よりもさらに上位,すなわち天使軍の頂点に立つ神なる存在〈ロード〉はこの事態を打破するべく,密かに特殊部隊を編成しつつ機会を伺っていたのだった。
そして,物語の舞台は異種の里〈ミッドガルド〉に移る。
ミッドガルドに住む異種の少女〈リンデ・エスカレーネ〉。
彼女こそがやがて世界の行く末を左右する鍵となり,逃れられない残酷な運命に立ち向かうこととなる。