愛死テル。
カタカタと窓を強請る風が怖くなってきて、私は彼にしがみついた。
彼の名前は平野大輔。
平凡な名前なのにどうしてこうも好きになってしまうのだろう。
私は彼のたくましい腕にしっかりとだきついて、風が止むのを待った。
彼と一緒だったらなにも怖くない。
いつでも私を守ってくれる、そんな彼に私は心底惚れていた。
そんなにこの風が怖い?
優しい彼は聞いてくる。
私はうなずいてさらに彼に近づく。
あぁ、本当に優しい人。
世界中が彼と私の二人だけだったらいいのに。
そういうと彼は微笑んでくれた。
君はなんでそんなに好きなんだい?
なんでかって?
そんなのあたりまえじゃない。
あなたが平野大輔だったからよ。
あなたが優しいからよ。
あなたが私に微笑んでくれるからよ。
あなたがこの世界に存在しているからよ。
あなたがこうして私のそばに居てくれるからよ。
あなたが私を愛してくれるからよ。
とびっきりの笑顔があなたと私を包んでいく。
でもひとつだけ足りないものがあるの。
あなたがもう死んでいることよ。