3.殺し合いの見学
残酷な現実を突きつけられた翡翠たち。
そんな中、彼女たちのした選択とは…
※この作品には、残酷・暴力描写があります。
翡翠は、一晩寝れずに、ベッドの上で過ごしていた。
部屋に備え付けられている時計が、朝の8時を指している。
窓がないため、時計がなければ、朝なのか夜なのか、何日経ったのかさえ、わからない。
“あなたたちには、殺し合いをしてもらいます”
あの女の言葉が、頭にずっとこびりついている。
もしかしたら、一緒に育ってきた家族と殺しあわないといけないかもしれない。そんなこと、できるわけがない。
「どうしよ…」
私が呟くと、ドアにある隙間から一通の手紙が届いた。
「なにこれ…?」
私はおそるおそる手紙を開けた。すると中には、赤いボタンがついた四角い機械と、小さなメモが入っていた。
メモにはこう書かれていた。
【ここで行われる試合を見学することができます。見学希望の場合、このボタンを押してください。】
見学。家族と別の施設の子が殺し合うのを見学したいかどうか、と言うことだ。
私はそのメモを握りつぶした。そして考えた。
見学なんて、行きたくない。でも、そんなこと言ってる場合じゃない。綺麗事もプライドも捨てないと。
ごちゃごちゃ考えた末、私はボタンを押した。もしかしたら、真夜や慈愛たちも来ているかもしれない。その希望に賭けたのだ。
それに、行きたくないのも本音だけど、どんな試合なのか知っておく必要があると思ったのだ。
あれから何時間経ったのか、時計の針は17時を指していた。
試合の緊張感も、見学の恐怖も薄まることなく1日を終えるのだろうか。苦痛でしかない。
そんなことを考えていると、ドアが勢いよく開いた。
私は驚いてベッドから飛び起きた。
「見学に行きますよ」
昨日の女警備員だ。その後ろには、真夜と慈愛、そして柊がいた。
「翡翠もだったんだね」
慈愛がいつもの笑顔で私に言った。
私は静かに頷いた。
体が震える。
そんな私を見ていたのか、真夜が私の隣に来て一緒に歩いた。
慈愛と柊は、いつも通り堂々と歩いている。
でも、みんな何も喋らない。沈黙のまま歩いている。
女警備員の後ろについて歩くと、透明な通路に差し掛かった。そのまま進むと、会場の後ろの方に、透明な大きい箱のようなものがあった。
女警備員は、私たち4人をその中に入らせた。
「では、第一試合が終わり次第迎えに来ます」
女警備員は相も変わらず、笑顔のまま出て行った。
「あそこのステージで戦うのかな?」
慈愛は腕を組みながらそう言った。
ステージ。観客席が階段状になっているため、ステージは、1番下の段にある。
どこの席からも、よく見える構造になっている。
「多分な。…ほんとクソだな。演劇でもするのかってくらい広い」
真夜が嫌味のように言った。
確かに、広い。
広いし、見せ物感があって気に食わない。
「おい。なんだよあの客席」
柊がキレ気味に言った。
客席。演劇をするような会場で、赤いシートの、高価そうな椅子が上から下までずらっと並んでいる。
「カメラもあるけど、テレビではなさそうだね。配信かな。」
慈愛は、相変わらず落ち着いている。
怖いくらいだ。
しばらくすると、観客らしき人たちがぞろぞろと会場にやってきた。
ステージに最も近い椅子に、偉そうなおじさんやおばさんが座り始めた。指定席なのだろう。
後ろの方には、金持ちそうな人や、見たことがあるような、政治家たちも座り始めている。
「…政治家がいるってことは、違法娯楽ではなさそうだな」
真夜も、慈愛も柊も気づいてる。
まもなく18時になる。
警備員が2人の男を無理やりステージに上げた。
1人は初めて見る顔だ。ガタイが良くて長身の男。
そしてもう1人は…。
「たいし…!」
大事だ。
私たちと同じ施設で育った、家族だ。
「たいし?!おい!!たいし逃げろ!!」
柊がステージに向かって叫んだ。でも防音なのか、声が届かない。
たいしは昔から身体が弱かった。喧嘩なんて経験もないし、運動すら苦手だったのに、勝てるわけがない。
人とあまり関わらない柊が気にかけるほどだ。なんとかして止めたいのに。
時計の針が18時を指した。
「皆様お集まりいただきありがとうございまぁす!」
会場に、透明な箱に、陽気な声が響く。
おそらく司会者だ。
「初日にこんなにお集まりいただけるとは…!満席です!」
「はやくしろ!」
「無駄話するな!」
客席からは、罵声が司会者に浴びせられている。
司会者は苦笑いをしながら続けた。
「第一試合は、A施設から“大事”。B施設からは“従牙”です!さて…」
司会者の声色、雰囲気が一変した。
「今宵も、皆様にとって濃い夜になることを祈っております」
第3話、読んでいただきありがとうございます!
殺し合いの見学ができることになり、会場や戦いの雰囲気を目の当たりにした翡翠たち。
そんな中、同じ施設の仲間であり、家族である“大事”が、別施設の人と殺し合うことになってしまう。
このあと、さらなる悲劇が翡翠たちを襲う…
次話も、読んでいただけると幸いです!
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