第2章 第1節 過労で倒れかけた社長ハルト。ユイのほうじ茶を飲んだ瞬間、体内の疲労と重圧が消え去る。彼は奇跡のブレンドティーを生み出した謎の専門家を血眼になって探し始める!
第2章 冷酷社長とすれ違いの霊薬
第1節 過労で倒れかけた社長ハルト。ユイのほうじ茶を飲んだ瞬間、体内の疲労と重圧が消え去る。彼は奇跡のブレンドティーを生み出した謎の専門家を血眼になって探し始める!
グランドクロス商事の若きトップ、ハルトは、給湯室の丸椅子に座ったまま、手の中の安っぽい湯呑みを信じられないものを見るような目で見つめていた。
たった一口。熱いほうじ茶が食道を通り、胃の腑に落ちた瞬間だった。
彼の全身を苛んでいた激しい偏頭痛、胃の裏を刃物でえぐられるようなキリキリとした痛み、そして何より、鉛のように重くのしかかっていた脳の疲労感が、一陣の清風に吹き飛ばされるかのように跡形もなく消え去ったのだ。
「なんだ、これは……!? まさか、違法な興奮剤か何かか……!?」
ハルトは思わず声に出して呟いた。しかし、すぐにその推測を打ち消す。興奮剤のような無理やり神経を逆撫でする不快感は一切ない。むしろ、深い森の奥の清流に身を浸しているかのような、圧倒的で深い安らぎと静寂が心身を包み込んでいた。
視界にかかっていた霞が嘘のように晴れ渡る。乱れていた呼吸は整い、思考のスピードが限界を突破してクリアになっていく。長年の睡眠不足と過大なストレスによって機能不全に陥っていた脳の処理能力が、かつてないほどの最高値まで跳ね上がっているのがわかった。
「信じられない……。一流の産業医や世界最高峰のメンタルトレーナーを何人も雇っても、全く改善しなかった俺の不眠と過労が、たった一杯の茶で……!?」
ハルトは勢いよく立ち上がった。先ほどまで立っていることすら困難だった体が、羽のように軽い。
彼はハッとして、お茶を差し出した人物を探した。先ほどまで目の前にいたはずの、地味な制服を着た派遣社員の女性の姿は、すでにどこにもなかった。
「あいつが、これを……? いや、あり得ない」
能力至上主義の頂点に君臨するハルトの思考は、すぐに極めて現実的な仮説を導き出した。
あの魔力や特別なオーラを一切持たない凡庸な派遣社員に、こんな奇跡の薬効を生み出せるはずがない。おそらく彼女はただの「運び手」だ。あの茶葉は、どこかの天才的な調合師か、あるいは脳科学と東洋医学を極めた未知の専門家が、極秘裏に開発した究極のブレンドティーに違いない。
「秘書を呼べ!」
ハルトは社長室に戻るなり、インターホンを叩き切るような勢いで叫んだ。
「今すぐ、先ほど給湯室にいた女子社員を割り出せ。そして、あの茶葉を調合した専門家――世界最高峰のメンタルトレーナーを何としてでも探し出せ! 我が社の全てのネットワークを使ってでもだ!」
血走った目で命令を下す冷酷社長の姿に、秘書は震え上がりながら「は、はいっ!」と駆け出していった。ハルトの頭の中は、あの奇跡の霊薬を独占したいという強烈な執着で完全に支配されていた。




