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ー第5節 解決後、ハルトは全社員の前でユイを抱きしめ「君がいないと生きられない」と溺愛宣言。最後まで無自覚なユイは社長室付き特別癒やし担当となり、平和で幸せな日々を送る。

第5節 解決後、ハルトは全社員の前でユイを抱きしめ「君がいないと生きられない」と溺愛宣言。最後まで無自覚なユイは社長室付き特別癒やし担当となり、平和で幸せな日々を送る。


 能力至上主義の悪しき象徴たちが排除され、静まり返ったオフィス。

 ハルトはゆっくりと振り返り、フロアの隅でポカンとしていたユイの元へと歩み寄った。

「社長、体調は本当に大丈夫ですか……?」

 おずおずと尋ねるユイの腕を、ハルトは強引に、しかし壊れ物を扱うような優しさで引き寄せた。

「えっ……!?」

 全社員が固唾を呑んで見守る中、グランドクロス商事の冷酷社長は、底辺の派遣社員であったユイを、その広い胸の中に強く抱きしめたのである。

「ユイ。君のおかげで、俺は命を救われ、この会社も救われた。君の淹れてくれた水は、世界中のどんな薬よりも、どんな魔法よりも、俺の心を震わせた」

「水……? ああ、ただの自販機のミネラルウォーターですよ? 百円の。たまたま社長の自然治癒力がすごかっただけで……」

「まだそんなことを言っているのか」

 ハルトは苦笑し、ユイの耳元で甘く、独占欲に満ちた声を囁いた。

「俺の心は、もう君がいないと動かない。ITスキルも、語学力も、プレゼン能力もいらない。君のその『誰かを癒やそうとする純粋な心』だけが、俺の人生には絶対に必要なんだ」

「しゃ、社長……? 近いです、みんな見てます……!」

 顔を真っ赤にしてパニックになるユイを逃がさぬよう、ハルトはさらに腕の力を強めた。

「俺のそばで、一生俺のためだけにお茶を淹れてくれ。いや、お茶じゃなくてもいい。ただの水道水でも、君が淹れてくれるならそれが俺にとっての究極の霊薬だ」

 それは、全社員の面前で行われた、紛れもない溺愛のプロポーズ宣言だった。

「ええっ!? だから、ただの水ですよ!? 社長、過労が治ったと思ったら、今度は頭がおかしくなっちゃったんですか!?」

 最後まで無自覚なまま、ジタバタと暴れるユイ。そのあまりにも微笑ましい光景に、地獄のような数日間を乗り越えた社員たちの間から、ドッと温かい笑い声が湧き上がった。


 ――数カ月後。

 グランドクロス商事の社風は、劇的な変化を遂げていた。過度な能力至上主義や、足の引っ張り合い、派閥争いは完全に一掃された。社員の健康とメンタルケアが最優先され、誰もが互いを思いやりながら働く、超ホワイト企業へと生まれ変わったのである。

「ユイ。少し肩が凝った。お茶を淹れてくれないか」

「はいはい、社長。今日は特別にカモミールティーですよ」

 最上階の豪華な社長室。

 そこには、ハルトの隣にデスクを並べ、「社長室付き・特別癒やし担当」という前代未聞の役職に就いたユイの姿があった。実質的な婚約者ポジションである彼女の左手には、眩いばかりのダイヤモンドの指輪が光っている。

 地位や能力でマウントを取り合う虚しい日々は、もう終わった。

 ユイはソファでくつろぐハルトの隣に座り、二人で温かいお茶をすする。

 特別な能力なんて、なくてもいい。誰かを想い、癒やし、共に笑い合えるこの穏やかな時間こそが、ユイにとっての『現世での至高の境地』なのだから。

 窓から差し込む優しい陽だまりの中で、ユイは心からの幸せを噛み締めるのだった。

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