ー第4節 給湯室に入れず茶葉もないユイ。倒れる彼らを見る事しかできず「私にはITスキルもない。お茶さえ淹れられない私は無能だ」と絶望し、再び負の感情に飲み込まれそうになる。
第4節 給湯室に入れず茶葉もないユイ。倒れる彼らを見る事しかできず「私にはITスキルもない。お茶さえ淹れられない私は無能だ」と絶望し、再び負の感情に飲み込まれそうになる。
オフィスが絶望のどん底に突き落とされる中、ユイはフロアの隅の柱の陰で、その惨状をただ見つめていることしかできなかった。
ハルトが血を吐いて倒れ、産業医たちが必死に蘇生を試みている。あちこちで社員たちが意識を失い、パソコンの画面にはサイバー攻撃によるエラーメッセージが赤い血のように点滅し続けている。
「……どうして、こんなことに……」
ユイは両手で顔を覆い、ガタガタと震えた。
私に、何ができる?
自問自答しても、答えは残酷なほどに明白だった。
私には、ハッカーの攻撃を阻止する高度なITスキルも、プログラミング能力もない。
フェイクニュースを論破し、クライアントを説得するための語学力も、経営の専門知識もない。
倒れた人たちを救うための、医療の技術も資格もない。
能力至上主義のこの会社で、私が唯一できたことは、ただ「誰かのためにお茶を淹れること」だけだった。
けれど、今の私には給湯室の鍵がない。お湯を沸かすことも、茶葉を取り出すこともできないのだ。
「私には、本当に何もない……。ただの専門スキルゼロの、底辺の派遣社員……」
ユイの目から、大粒の涙が溢れ落ちた。
あの毛むくじゃらの存在、『おつまみ』によって浄化されたはずの心が、再び真っ暗な絶望と自己否定の闇に飲み込まれそうになっていた。
命のバトンを受け継いで、今ここに存在していることの尊さ。
現世での至高の境地。
そんなことを言われても、現実はあまりにも過酷で、無慈悲だ。私に特別な能力がないせいで、目の前で苦しんでいる人たちを、ただ見殺しにするしかないなんて。
(やっぱり、私なんて生まれてこない方がよかったんだわ。こんなに無力で、誰の役にも立てないなら……。いっそ、こんな苦しい世界から消えてしまいたい……!)
ユイの心の奥底に、再び「死への逃避」と「自己否定の念」という、重く冷たいドロドロとした感情が渦巻き始める。
彼女は自分の無力さに打ちひしがれ、冷たい床に崩れ落ちそうになった。
しかし、その時だった。




