ー第3節 ハルトも最前線で限界を超え働き続けるが、極度のプレッシャーと過労の蓄積によりついに血を吐き倒れてしまう。一流の産業医やエリート社員たちが必死に救護にあたるが……!
第3節 ハルトも最前線で限界を超え働き続けるが、極度のプレッシャーと過労の蓄積によりついに血を吐き倒れてしまう。一流の産業医やエリート社員たちが必死に救護にあたるが……!
「しっかりしろ! 救急車を呼べ!」
倒れた社員を抱き起こす怒号が飛び交う中、ハルトは社長室にこもり、陣頭指揮を執り続けていた。
彼は複数のモニターを睨みつけながら、海外のエンジニアチームとリアルタイムで通信し、暗号化されたデータの解除コードを自らの手で解析していた。さらに、各部署からの絶え間ない報告を処理し、瞬時に的確な決断を下していく。
その常人離れした処理能力と精神力は、まさに能力至上主義の頂点に立つ者にふさわしいものだった。
しかし、ハルトの肉体もまた、生身の人間のものでしかなかった。
あのユイの淹れた『神の霊薬』を飲んで一時的に脳疲労が回復したとはいえ、それは根本的な休息をとったわけではない。むしろ、限界を超えてエンジンをフル回転させ続けたことで、彼の身体にかかる負荷は想像を絶するものになっていた。
丸三日、一睡もせずに極度のプレッシャーと戦い続けたハルトの顔色は、死人のように青白く、呼吸は浅く不規則になっていた。
「……あと少しだ。ここでファイアウォールを再起動できれば、奴らの攻撃を遮断できる……!」
エンターキーを叩こうと指を振り下ろした瞬間だった。
ドクン、と。ハルトの心臓が、異常な音を立てて大きく跳ねた。
「がっ……!?」
視界が急激に黒く塗りつぶされていく。全身の血が逆流するような強烈な吐き気と、胸を内側から引き裂かれるような激痛がハルトを襲った。
「しゃ、社長!?」
異変に気づいた秘書が駆け寄るよりも早く、ハルトの身体は限界を迎え、デスクに突っ伏すようにして崩れ落ちた。
「ゴホッ……! ああっ……!」
ハルトの口から、鮮血が床に吐き出された。過労の蓄積と精神的重圧が、ついに彼の内臓にまで深刻なダメージを与えたのだ。
「社長が倒れたぞ! 誰か、早く産業医を呼んでくれ!!」
オフィスはパニックに陥った。
すぐに会社専属の一流の産業医と、医療知識を持つエリート社員たちが駆けつけ、床に倒れたハルトの救護にあたった。
「血圧低下! 脈拍が異常に早い! 極度の過労による心不全の疑いがあります! 強心剤を注射しろ!」
産業医が必死に処置を行うが、ハルトの意識は戻らず、顔色はどんどん土気色に変わっていく。
「ダメです……! 心身へのダメージが深すぎて、通常の医療処置では全く回復の兆しが見られません! このままでは、命が……!」
その言葉に、周囲の社員たちは絶望の表情を浮かべた。
会社の絶対的な柱であるハルトが倒れれば、グランドクロス商事は完全に崩壊する。サイバー攻撃を防ぐ手立ても、フェイクニュースに対抗する術も失われ、彼らが信奉してきた「能力」や「実績」の全てが、砂の城のように崩れ去ろうとしていた。




