ー第4節 見下していたユイがチヤホヤされ、社長からも熱視線を向けられる事にお局の冴島ら高学歴女子社員は激怒。権力を乱用し、ユイから給湯室の鍵を奪って立ち入りを禁止する。
第4節 見下していたユイがチヤホヤされ、社長からも熱視線を向けられる事にお局の冴島ら高学歴女子社員は激怒。権力を乱用し、ユイから給湯室の鍵を奪って立ち入りを禁止する。
エリート社員や役員たちが給湯室の前に列をなし、ユイを「女神」と崇めてチヤホヤする異常な光景。それを遠くから、ギリギリと奥歯を鳴らして睨みつける者たちがいた。
営業部のお局である冴島をはじめとする、能力至上主義を体現する高学歴の女子社員グループである。
「……信じられない。なんで、語学力もITスキルもない、ただの専門スキルゼロの派遣社員が、あんなにチヤホヤされてるのよ!」
冴島は、自分が手に入れたかった社内での称賛と注目が、最も見下していた存在に奪われたことで、腸が煮えくり返るような屈辱を感じていた。
さらに彼女の嫉妬に火を注いだのは、社長のハルトの存在だった。
冷酷無比で、これまでどんな優秀な女性社員がアプローチしても氷のような視線で切り捨ててきたあのハルトが、ユイの姿を見つけるたびに足を止め、「ユイ、今日の君の淹れた茶も最高だった。早く俺専属にならないか」と、周囲から見れば甘く熱烈な口説き文句(本人は純粋に霊薬のスカウトをしているだけなのだが)を投げかけているのだ。
「能力もないくせに、男に媚びを売って給湯室で怪しいお茶を配ってるなんて……絶対に許せないわ! あんな底辺の女、この会社から叩き出してやる!」
嫉妬と憎悪で理性を失った冴島は、自身の派閥に属する総務部長を丸め込み、職権を最大限に乱用する行動に出た。
その日の午後、ユイは総務部の会議室に呼び出された。
「ユイさん。あなたが最近、給湯室に居座って社員たちにお茶を配り歩いているという報告を受けています。これは重大な業務規程違反よ」
腕を組み、見下すように冷笑を浮かべる冴島の横で、総務部長が威圧的に言い放った。
「現在、我が社はペーパーレス化や業務効率化を推進している。自動サーバーがある現代において、手動でお茶を淹れるなどという行為は、社員の労働時間を奪う『無駄な行為』に他ならない」
「そんな……! 私はただ、皆さんが疲れているみたいだったから……」
「言い訳は聞かないわ」
冴島はユイの手から、給湯室の管理用マスターキーを強引にひったくった。
「決定事項よ。今後、能力を持たない派遣社員の給湯室への立ち入りと、お茶汲みなどの非効率な業務を一切禁止するわ。もし一度でも給湯室に入ったら、即刻クビにするからそのつもりでね」
それは、能力という絶対的な物差しを使った、陰湿で理不尽な権力の暴力だった。
鍵を奪われたユイの手は、空しく宙をさまよった。それは単に物理的な鍵を奪われたというだけでなく、ユイがこの会社で見つけた「誰かのために尽くすことができる、唯一の居場所」を奪い取られたことを意味していた。




