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ー第3節 第七チームの大逆転劇は裏SNSで拡散された。「女神のお茶で脳が覚醒する」と噂が広まり、己の能力を高めたいエリートや役員たちが給湯室の前に長蛇の列を作り始める。

第3節 第七チームの大逆転劇は裏SNSで拡散された。「女神のお茶で脳が覚醒する」と噂が広まり、己の能力を高めたいエリートや役員たちが給湯室の前に長蛇の列を作り始める。


 グランドクロス商事における「第七チームの奇跡」は、社内の匿名掲示板、通称『裏SNS』を通じて、瞬く間に全社員へと拡散された。


『おい、聞いたか? あの万年最下位の第七チームが、たった半日で数百億の契約をまとめて、社内のトップ成績に躍り出たらしいぞ!』

『嘘だろ!? あいつら、英語もろくに喋れなかったはずだぞ』

『それがマジなんだよ。第七の連中が言うには、「給湯室のユイさんが淹れたお茶を飲んだ瞬間、脳が覚醒してゾーンに入った」らしい』

『待てよ……そういえば、過労で倒れかけてた社長が劇的に復活したのも、ユイさんが淹れたお茶を飲んだからだって噂、なかったか?』

『マジかよ! あのお茶、飲むだけで能力が限界突破するバフアイテムなんじゃねえのか!?』

『まさに飲むパワースポットだな。ユイさんは、給湯室の女神だ!』


 この超実力主義の会社において、「飲むだけで己の能力が上がり、圧倒的な実績を出せる」というアイテムの存在は、社員たちにとって麻薬のような魅力を持っていた。出世競争に勝ち残るため、あるいはライバルを蹴落とすため、誰もがその『神の霊薬』を喉から手が出るほど欲した。

 翌日から、給湯室の前の光景は異様なものとなった。

「ユイ君! 私に一番熱いほうじ茶を淹れてくれたまえ! 今日中にまとめねばならない大型買収案件があるんだ!」

「ずるいぞ、部長! 私の方が先に来て並んでいたんです! ユイさん、私に緑茶をお願いします!」

 なんと、ユイが給湯室に入ると、そこには名だたるエリート社員たちや、普段は派遣社員になど絶対に話しかけてこない役員クラスの重役までもが、マイカップを持って長蛇の列を作っていたのである。

「えっ、ええっ……!? な、なんですかこの行列は!?」

 給湯室にやってきたユイは、目を丸くして驚いた。

 群がるエリートたちは、ユイに向かって札束を握りしめた手を差し出し、「一杯一万円払うから」「いや、私には三万円で」と血走った目で懇願してくる。

「お金なんていりませんよ! ただの会社の備品のお茶ですから! 順番に淹れますから、押さないでください!」

 ユイは困惑しながらも、持てる限りの急須とポットをフル稼働させ、せっせとお茶を淹れ続けた。

 彼女は、自分が淹れたお茶が『能力を限界突破させる霊薬』になっていることなど、微塵も気づいていない。

「それにしても……最近、皆さんやたらと喉が渇くんですね。それに目の下にはクマを作って、なんだかすごく疲れているみたい……」

 ユイは列に並ぶ社員たちの疲れ切った顔を見て、首を傾げた。

「きっと、オフィスがすごく乾燥しているせいですね。あとで総務部に加湿器を置いてもらうようにお願いしてみようかな」

 本人は一切の自覚がないまま、ユイは「皆さんの疲れが少しでも取れますように」と無邪気な祈りを込めながら、ひたすら神の霊薬を量産し続けるのだった。

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