ー第2節 ユイのほうじ茶を飲んだ第七チームの面々は、突如として潜在能力が限界突破する。彼らは絶対に不可能と言われていた海外の超大口契約を次々と勝ち取り、社内は騒然となる。
第2節 ユイのほうじ茶を飲んだ第七チームの面々は、突如として潜在能力が限界突破する。彼らは絶対に不可能と言われていた海外の超大口契約を次々と勝ち取り、社内は騒然となる。
部長の説教が終わり、第七チームのリーダーである田中は、絶望的な面持ちで自分のデスクに崩れ落ちた。
「……もうダメだ。あの海外の巨大案件なんて、うちのチームの語学力と交渉力じゃ、絶対にひっくり返せない。本当に、辞表を書くしかないのか……」
部下たちも一様に下を向き、重い沈黙が落ちる。
ふと、田中の視界に、先ほどユイが置いていってくれた紙コップが入った。湯気とともに、香ばしいほうじ茶の香りが漂ってくる。
「……せめて、お茶くらい飲ませてくれ」
田中は乾ききった喉を潤すように、そのほうじ茶を一口、飲み込んだ。部下たちもそれに倣い、黙ってお茶を口にする。
――次の瞬間。
田中の身体の中で、何かが弾けた。
「……な、なんだこれは……!?」
田中はカッと目を見開いた。連日の徹夜で泥のように重かった脳内が、一瞬にしてクリアに晴れ渡っていく。眼球の奥の鈍痛が消え去り、視界が恐ろしく鮮明になった。
それは田中だけではなかった。お茶を飲んだ第七チームのメンバー全員が、一斉に顔を上げ、信じられないという表情でお互いを見つめ合った。
「リーダー……俺、今、めちゃくちゃ頭が冴え渡ってます」
「私もです。さっきまで分からなかった海外案件の複雑なデータ分析が、まるでパズルが解けるように頭の中で組み上がっていくのが分かります……!」
彼らの脳内に蓄積されていた疲労物質は完全に浄化され、さらにユイの祈りによって、彼らが本来持っていた潜在能力が限界を突破し、いわゆる『ゾーン状態』に突入していたのだ。
「いける……! 今なら、どんな交渉でも勝てる気がする! お前ら、すぐに海外のクライアントにオンライン会議を申し込め! 俺が直接プレゼンする!」
田中は弾かれたように立ち上がり、ヘッドセットを装着した。
そこからの第七チームの動きは、まさに神がかり的だった。
普段は英語の資料を読むのにも苦労していた田中が、ネイティブすら舌を巻く完璧な発音と流暢な言語で、難攻不落と言われた海外のCEOを相手に堂々とネゴシエーションを行い始めたのだ。部下たちも、瞬時に市場の変動を予測し、相手が喉から手が出るほど欲しがる完璧なデータを次々とモニターに提示していく。
「素晴らしい提案だ、ミスター・タナカ! すぐに契約書にサインしよう!」
モニターの向こうで、海外のCEOが興奮気味に叫んだ。
なんと、わずか数十分の間に、絶対に不可能と言われていた数百億円規模の超大口契約が成立してしまったのである。さらに彼らはその勢いを止めることなく、次から次へと保留になっていた難案件に電話をかけ、魔法にかかったかのように全ての商談を勝ち取っていった。
「お、おい……第七チームが、一日で今年度の目標額を三年分も達成したぞ……!?」
フロア中の社員たちが、信じられないものを見る目で彼らを取り囲んでいた。
奇跡の大逆転劇。当の田中たちは、確信していた。
「あのユイさんが淹れてくれたお茶を飲んでからだ。あのお茶が、俺たちの眠っていた力を引き出してくれたんだ……!」




