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何も見ていない街  作者: TOMMY


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2/8

鬼退治

しわの影が濃い老婆は、腰を深く折り曲げながら街中をゆっくりと歩き回っていた。過ぎ行く人間の顔を見つめ、何かを吟味していた。


すると、足取りは少しだけ早くなり、一直線に歩を進める。そしてある青年を呼び止めた。


「もし、お若いの、少しだけ、手伝ってくれんかね」


青年は無表情のまま、老婆の元へ歩み寄る。

老婆はゆたりとした奇妙な動きで、人間たちから見えない角度に身を整える。そして隙間だらけの黄色い歯を覗かせた。


「鬼じゃあ、鬼。この街に鬼が出たんじゃあ」


青年は訝しげに老婆を見つめる。

すると老婆は、青年に向けて左手を差し出した。

掌には、乾いて軽い豆がいくつか転がっていた。

「この豆を持って、鬼を退治しとくれんかね」


青年は一瞬だけ豆に目を落とし、次の瞬間、露骨な笑みを浮かべた。

「へぇ、そうですか。その鬼とやらは、どんな容姿でしたか?」


そう言って、青年は路地裏に向けて歩き出す。

老婆は小さく笑い、その後を追った。

折れ曲がった腰に据えた右手の内で、何かが鈍く光った気がした。


二人の足音は、重々しく路地裏に吸い込まれていく。

暗がりの奥で、青年の表情は、再び何も映さなくなった。


その路地裏からは、いつまで経っても、誰も帰ってこなかった。


街の老人たちは、街の人間を静かに見つめていた。

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