第47話:【閑話】進み出した筆、エレオノーラのざまぁ劇
「アキラ、ご機嫌なのだ? 何を書いてるのだ?」
ポチが黄金色のマヨせんをバリボリとかじりながら、机で紙に向かう晶の顔を覗き込む。
普段、設計図や数式を書くときは眉間にシワを寄せている晶が、今日は珍しく口元に薄暗い笑みを浮かべていた。
「あぁ。こちらの世界に転移する前にファンだった人たちに向けて、娯楽小説を書いているんだよ」
「ふーん? どんなお話なのだ? 美味しいお肉は出てくるのだ?」
「肉は出ないが……簡単に説明するとだな」
晶はペンの手を休めず、ポチにプロットの概要を語り出した。
セレスティア王国の公爵令嬢エレオノーラが、ニセ聖女に誑かされた無能な王太子によって、公衆の面前で婚約破棄される出だし……。
「それで、このお姫様はどうなるのだ?」
「身一つで、国から追放されるんだよ」
「なっ!? なんでなのだ! お姫様は何も悪いことしてないのに、家を追い出されるのだ!?」
ポチが自分のことのように憤慨し、マヨせんを握りしめる。
縄張りを追われる恐怖は、獣人にとって何より許しがたいものだ。
「ああ。理不尽だろう? 無能な上司のせいで、有能な部下が割を食う。……どこの世界でもよくある話だ」
そう言いながら筆を進める晶の瞳は、楽しげに、そして嗜虐的に輝いていた。
「だからこそ……徹底的に『わからせて』やるんだよ。自分たちが何を失ったのかをな」
サラサラと流れるインクが、愚かな王子への断罪を刻んでいく。
日頃、勝手に女神だの救世主だのと崇められ、溜まりに溜まった晶のストレスが、物語の中の悪役への制裁として昇華されていく瞬間だった。
「……よし、第1話は書き終わったな。これなら金曜日の出版(印刷)に間に合いそうだ」
「アキラ、悪い顔してるのだ……」
「失礼な。これは正義の執行だぞ。さあ、続きは明日にでも書こう。ポチ、もう寝るぞ」
「うん。寝るのだ! 夢の中でお姫様を助けてあげるのだ!」
執務室の明かりを消し、寝室に向かう一人と一匹。
理系作家の晶が、科学ではなく「感情」で書き殴ったファンタジー小説。
その原稿が、工場の印刷機にかかり、日の目を見る日は……近い。
【作中作の実装について】
本作の閑話で晶が執筆し始めた小説……
『ニセ聖女に誑たぶらかされた無能王子に婚約破棄されたあげく、魔境に追放された公爵令嬢は、魔王に見初められ魔王夫人として君臨します』
ですが、
実は、なろう内に「実在」します。
晶が、既に「第0話」を投稿済みです!
サイト内で『魔王夫人』もしくは『結城 晶』で検索していただくと、本当に出てきます。
晶が工場経営の合間にストレス発散で書いた「王道ざまぁ」、ぜひ本編と併せてお楽しみください。
▼更新スケジュール
第1話:今週金曜日 18:10 公開予定
今のうちにブックマークして、晶のファンタジー作家デビューを正座待機していただけると幸いです!




