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第33話:【閑話】晶の独白。百合という世界は、強さと経済力がなければ成り立たないのだよ。

※このエピソードは、本編より少し先の時系列、

あるいは「あり得たかもしれない未来」の晶の独白です。


 現在進行中の「内政・金儲け」の先に、彼女がどんな境地に達するのか――。


その断片を、少しだけ先行公開します。


「ロケット? ミスリル?」


そんな単語が出てきますが、それはこれからのお楽しみということで。


 深夜の執務室。


 私は、淹れたてのコーヒーもどき、この世界では希少な『黒豆茶』の濃縮液をすすりながら、ソファで折り重なって眠る「彼女たち」を見下ろしていた。


 ポチとタマ。そして、書類仕事に疲れて寝落ちしたフローラ。


 柔らかな肢体。安らかな寝息。


 月の光に照らされたその光景は、絵画のように美しい。


 いわゆる『百合(ゆり)』の園。あるいは、美少女たちの楽園だ。


 だが。


 私は冷めた目で、カップをソーサーに置く。


「……幻想だな」


 多くの物語で描かれる「女性だけの美しい共同体」は、現実には成立しない。


 これは感情論ではない。単純に性差の問題であり、経済学の問題だ。


 本来、女性性というものは「受け入れる」性質を持つ。


 美しさ、癒やし、生殖。それらは価値あるものだが、それ自体が外部からリソース、資源を狩ってくる矛にはなり得ない。


 厳しい自然界、あるいは弱肉強食の文明社会において、彼女たちがその美しさを維持し、生存するためには、外部からの「供給」が必要不可欠だ。

 

 若さ。労働力。健康。そして金。


 それらを持つ「男性」という資産を搾取し、消費することでしか、彼女たちの楽園は維持できない。


 ではもし、供給者がいなければどうなるか?


 待っているのは、緩やかな衰退と、醜い共食いだ。


 美しさを磨く余裕などなくなり、日々の糧を得るために泥にまみれ、やがて「詰む」。


 だからこそ、この光景は奇跡なのだ。


 私は自分の手を見る。


 白く、細く、華奢な手だ。


 だが、この中には――前世で培った「理系の知性」と、ハラスメントまみれの現実社会で生き抜いてきた「男性的な精神」が詰まっている。


 ラーメンチェーンによる莫大な資金調達。


 王侯貴族すら黙らせる政治力。


 そして、ミスリルをも飴細工のように捻じ曲げる、暴力的なまでの技術力。


 私が「中身とスペックが男」であるからこそ、彼女たちは「守られる女性」のままでいられる。


 私が外敵を排除し、金を稼ぎ、インフラを整えているからこそ、ポチは無邪気に笑い、フローラは乙女の夢を見ていられるのだ。


「……ふん」


 私はソファの上のタマに、ずり落ちかけた毛布を掛け直した。


 タマが寝言で「むにゃ……アキラ……」と呟き、私の指に頬をすり寄せてくる。


 心地よい依存だ。


 だが、勘違いしてはいけない。


 この楽園は、私の双肩にかかっている。私が足を止めた瞬間、この美しい世界は崩壊し、過酷な現実が彼女たちを押しつぶすだろう。


「……せいぜい良い夢を見ろ、お姫様たち」


 私はデスクに戻り、再びペンを執った。


 ロケットの燃料計算。月面着陸のシークエンス。


 やることは山積みだ。


 百合という儚い世界は、圧倒的な「強さ」と「経済力」という土台の上にしか咲かない。


 ならば、咲かせてみせようじゃないか。


 この結城 晶(ゆうき あきら)という、最強の庭師パトロンの手によって。


 私は彼女たちを守る決意を新たにし、コーヒーを一気に飲み干した。

 お読みいただきありがとうございます。


 急にSFチックな単語が出てきて驚かれたかもしれません。


 ですが、これは晶が目指す「到達点」のひとつです。


 現在は工場で石鹸やら化粧品を作っていますが、第2章では世界を跨いでラーメンを作り、第3章では彼女の野望と欲望が大気圏すら突破します。


「百合の園を守るための、最強のパトロン」


 そんな晶の活躍を、これからも見守っていただければ幸いです。


(※本編の時系列に戻ります)

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